同じ日常を過ごしたくない、だけど同じ速度で呼吸はしたい
指の先端がじんじんとするまで、
息を吸って、吐く。
吸って、吐く。吸って吸って、吐く、吐く。
ベッドに入ってからの数十分、
考え事をしすぎて眠れなくなる日々が続いた。
「今日残した仕事、明日中には終わるかな」
「さっき観た映画のラストってあの解釈でよかったのかな」
「あーやっぱり人に期待しすぎるのは良くないよな」
眠気と思考が交差し頭が重くなる。
3月に入ってから気持ちと体が乖離し、
なんとなくで過ごす時間が増えていた。
現実をできるだけ避けたくて、
SNSもなるべく見ないようにしていた。
このままじゃ良くないことを理解していても、
心が、頭が、体が、思うように奮い立ってくれない、
そんな日が3週間ほど続く。
原因はもちろんたくさんあるんだけれど、
結局は自分の意思の弱さと、
どこからともなくやってくる不安や虚しさ。
「あ、深呼吸しよう」
仰向けのままふと思い立ち深呼吸をはじめる。
まずは浅い呼吸から。
ん、あれ、鼻から息をこんなに吸ったのいつ振りだろう。
以前毎晩やっていたマインドフルネスを思い出す。
体内で巡っている血液が、
ほとんど全部同じ速度になるように意識する。
どちらか一方の行動が長くならないよう。
息を吐く瞬間、胸とお腹に力が入ると同時に、脳がカーッと熱くなることだけに集中。
呼吸だけに意識をすると、
たしかに余計なことを考えなくて済む。
触れるのに怯える明日のことを、考えなくても朝がくる。
10回ほど呼吸をし少し冷静になる。
同じ日常は送りたくないけれど、
同じ速度で"吸う"と"吐く"を繰り返す心地良さが可笑しくなってきた。
指先が温かくなると、いつの間にか眠りについていた。
この感じ、
ただ自分と向き合うという、
当たり前のことを丁寧になぞる感じ。
泣きたくなるくらい悲しいことも、
期待したってなんの見返りもない未来も、
実は勝手な妄想で振り回されてるだけなんだよね。
目の前で起こっている事実を受け入れて、
手の平の幸せをすくい上げていこう。
大丈夫。
しっかり、深呼吸しながら、
ゆっくりでいいから。
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