見出し画像

#12 岡山県津山市における「食」と「ものづくり」による産業振興と産学官連携

はじめに

『J NOTE』第12回は、岡山県津山市を取り上げます。

津山市は岡山県の北部に位置する、人口約9.7万人の市です。昔から美作地域の中心都市として栄えた街で、津山城址周辺には旧出雲街道沿いを中心に明治以前の街並みが数多く残されています。

津山市は、これまで多くの有名人を輩出している街でもあります。歌手の稲葉浩志さんや俳優のオダギリジョーさん、お笑いコンビウエストランドの二人や、次長課長の河本準一さん、全日空の初代社長である美土路昌一さんなどが津山市出身です。

とくに、2017年7月22日に津山文化センターで開催されたB’zの津山凱旋ライブは街を挙げた一大イベントとなり、全国から多くのファンが津山市に詰めかけるなど大きな注目を集めました。

また津山市は、中国地方の内陸部の中でも比較的アクセスが良い街です。津山駅から岡山駅まで毎時1本以上運行されており、市内には中国自動車道のインターチェンジが2つ設置されています。

また、津山駅からは岡山方面へのバスが日中2本、大阪方面への高速バスが日中15本以上運行されており、東京・大阪方面への深夜バスも毎日運行されています。

そんな津山市では、様々な事業を通じて街の活性化に取り組んでいます。今回の『J NOTE』では、津山市が取り組んでいる産業振興について取り上げたいと思います。

①津山ホルモンうどんと牛肉文化

津山市では、津山ホルモンうどんなど牛肉を用いた地域振興に取り組んでいます。

津山ホルモンうどんは、牛ホルモンと野菜を辛めのタレで炒めた焼きうどんです。津山市内では、半世紀以上前からソウルフードとしてホルモンうどんが食べられています。

津山ホルモンうどんは、B級グルメの祭典である「B-1グランプリ」でも上位入賞を果たしており、隣の真庭市で提供されている「ひるぜん焼きそば」とともに、美作地域の名物として全国に売り出しています。

津山市内では、道の駅や多くの飲食店で津山ホルモンうどんが提供されており、また市外では中国道の勝央サービスエリア(勝央町)や岡山駅周辺でも食べることができます。そして、その味が家庭でも楽しめるように、ホルモンうどんのタレやうどんセットが売店やインターネットで販売されています。

また、津山市は昔から牛肉文化が根付いている地域です。市内には和牛を生産している畜産農家も多く、2014年には当地発祥のブランド牛として「つやま和牛」が新たに誕生しました。

そこで、津山市内の企業では牛肉文化をPRしようと、牛肉に合う日本酒やスパイスの開発などを行っています。この開発プロジェクトには、津山市の行政団体や市内に所在する美作大学も携わっており、産学官連携という形で牛肉文化による地域振興に取り組んでいるといえます。

②津山ステンレス・メタルクラスター

津山市では中国自動車道が開通して以降、ステンレス産業が市の主力産業となりました。

しかし2000年代に入ると、物流の中心が中国自動車道から山陽自動車道に移行するようになり、市内の産業にも影響が出るようになりました。また、今後の人口減少による担い手不足が危惧されたことから、2007年に津山のステンレス産業の発展と人材育成を目的とした「津山ステンレス・メタルクラスター」が組織されました。

津山ステンレス・メタルクラスターでは、岡山県や津山工業高等専門学校、岡山県工業技術センターなどと連携して活動を行っており、交流会や展示会への出展などを行っています。また、つやま産業支援センターが窓口となって相談対応も受け付けており、産学官が一体となって津山のステンレス産業の振興に取り組んでいます。

③津山工業高等専門学校による地域振興活動

津山工業高等専門学校は、美作地域で唯一の工業系の高等教育機関です。そのため、津山高専では美作地域の地域振興や産学官連携に特に力を入れており、つやま産業支援センター内に「津山高専技術交流プラザ」を開設して、津山市をはじめとした県内の多数の企業と結びつきを強めています。

交流プラザでの活動内容としては、津山高専所属の教員による出前講座の開催や、高専生と地元企業とのマッチング、産業交流会の開催などを行っています。

また、津山高専内には「地域共同テクノセンター」を設置し、津山市内の団体との交流会や研究機器の貸出、小中学校への出前講座を開催しています。

このように、津山高専では学生への教育だけではなく地域振興や産学官連携にも積極的に取り組んでおり、津山市や美作地域の発展に大きく寄与しているものといえます。

おわりに

ここまで、岡山県津山市が取り組んでいる産業振興についてみてきました。

津山市では産学官が一体となって、主に「津山ホルモンうどん」や「つやま和牛」などの食文化と、「ステンレス産業」などの地場産業を用いた地域振興に取り組んでいることがわかりました。

今後も加速度的に人口が減少し地域経済が縮小する社会において、こういった産学官連携の重要性はより増すのではないかと、私は今回津山市を調べて強く思いました。

関連文献


いいなと思ったら応援しよう!