苦しい出来事のなかに隠れている、わたしたちのお役目。
先日、自己啓発系の本を読んでいたときのこと。
その本はとても読みやすく、内容も「うん、うん」と納得いくものでした。しかし、本の中である話題になったとたん、わたしの中に違和感が芽生えました。
なんだか上から目線で言われているような、少々傲慢なような···。
他の部分からはそんな感じはしないのに、なぜかその話題に関しては、ちょっと嫌な気分になってしまったんです。わたしとは意見が違ったということではありません。むしろ、「わたしも同感だ」と思えるのに、文章から受ける印象が良くないのです。
しかし、せっかく読み始めた本だからと読み進めていくと、違和感の原因がわかりました。この書き手の方は、この分野について悩んだことがなかったのです。
人は、経験したことしか本当の意味では理解できない。
そういうことです。
具体的にどんな話だったかというと。
話題は「自分の想いに正直になろう」です。やりたくない仕事はしなくてもいいとのこと。この点においてはわたしも賛成です。
さらに、書き手の方の実体験なんかも交えながら、話は展開していきます。このあたりから、なんだか表現に違和感を感じます。
モヤモヤしながらも読み続けていくと、書き手の方は子供の頃から、学校に行きたくない気分の日は学校を休み、その日食べたいものを食べるという、自分の気持ちに正直な生活をしてきたそうです。親も、それを許していたとのこと。
「あぁ、だからか・・・」
この方は、自分の想いよりも人を優先してしまうこと。違和感を感じながらも、社会のルールに従ってきたこと。こういった人たちの苦しさがわからないのです。
その道を通ってきていないから。
大人になって、苦しくなって、やっと
「あぁ、もう、これからは好きに生きよう。自分の想いを大切にしよう。」
と決心した人とは、ゴールが一緒でも通ってきた道が違うのです。
この本の、この話題にだけ違和感を感じるというのは、そういう理由です。この書き手の方についてどーのこーの言いたいのではありません。
ただ「この苦しさも、貴重な経験なんだな」と実感したのです。
頭ではわかっている。
もう好きなことしていいって。
でも、どうすればいいのかわからない。
そんな中でも少しずつ、小さなことからチャレンジしてみて、「自分の想いを優先できた!」って喜んで。
「自分を優先しても、まわりの人は嫌な顔をしなかった」って、罪悪感という重荷を手放して···。
そういった過程を経験してるってことは、大きな財産です。同じ想いをもっている人に共感し、癒しを与えられるのです。
癒しを与えられた人は「自分もできるかも」と勇気づけられます。
そうやって、自分の苦しい経験、想いが他の人への癒しとなって広がっていくのです。
健康な人は、病気の人の気持ちはわかりません。
幸せな家庭しか経験したことがない人は、家庭内でのトラブルで苦しむ人の気持ちはわかりません。
お金で苦労した経験がない人は、お金で苦労している人の気持ちはわかりません。
いじめられた経験がない人は、いじめにあった苦しさはわかりません。
災害にあったことがない人は、ある日突然家を失った人の気持ちはわかりません。
これは、自分が未体験のことについて、首を突っ込んではいけませんと言っているのではありません。本当の苦しみはわからないくても、相手の気持ちを理解しようと努力したり、自分のできる範囲で手を差し伸べることは素晴らしい行動です。
この記事で伝えたいのは、もし、自分が苦しみの経験者側になってしまったとしても、その出来事の分野で癒しの人になれるということです。
同じ境遇の人を励ますというお役目を賜ったのです。
その出来事について経験がない人、想像や人の話だけで理解した人とは、くらべものにならない、リアルなものです。カウンセラーの資格なんか持っていいなくても、心理学の勉強なんかしたことがなくても、その経験だけで人を癒やせるのです。
例としてあげた苦しみの例のなかで、わたしが経験したことがあるのは2つです。この分野のことでしたら、きっと、だれかのお役にたつことができるでしょう。
わたしはときどき、「やさしいよね」と言っていただくことがあります。でも、それは恵まれた環境で育ち、素直にすくすくと成長したからというわけではありません。
できないことや、他の人が当たり前のようにもっているものをもっていなかったこと。
そういったものがたくさんあったからです。
たくさんのコンプレックスを抱えているから。
だから、うまくいっていない人に対して、「わたしもそうだからね」という気持ちで接することができるのです。
「あなたのここがダメだから、そんなトラブルに巻き込まれるんだよ」なんて口が裂けても言えません。
そう思うと、そういった経験も財産なんだなって。
もちろん、苦しい経験なんて、経験せずに済むのならその方がいいです。でも、自分の希望通りにいかないことだってあります。意に反して、トラブルを経験することだって。
はからずもそういう状況に陥ってしまったとき、こころの片隅で「この出来事の中にわたしのお役目が隠れているかも」と思えたなら、物事に対する考え方が少し変わってくるかもしれません。
ステキな一日を★