本よみ日記2
8.10火
体温を越える暑さになるというので、今日は1歩も外に出ないと決め、ひたすら阿久津隆『読書の日記』を読んでいた。午後に呼び鈴が鳴り、開けてみると汗だくの郵便屋さんが立っている。
料金不足なんだけど、どうします?という話だった。どこから来たかもよくわからないまま84円を払い受け取ると、図書カードが入っている。某冊子に投稿した文章を掲載するので薄謝ですが、という話だった。
すっかり忘れていたので送った文章を確認し、しばらくすると嬉しさというか新しい本が買える、何の本買おうかなと考え始め、ありがたさがじわじわと来た。と同時に、料金不足の件、切手を貼らずにポストに入れる状況というものを想像した。たぶん慌ててたり急いでたんだろうな、息子が夏休み中とはいえ、私の生活はずいぶん呑気すぎないかと自問した。違う生活や暮らしを想像した。
そういえば前にもこんなことがあったと記憶を慎重に開けていくと、生まれたての文芸冊子に声をかけてもらって文章を書き、薄謝をもらっていたのだった。
その中で三編えらんだ詩のうちの一編。
秋日
一日の終りに暗い夜が来る
私達は部屋に燈をともして
夜食をたべる
煙草に火をつける
私達は昼ほど快活ではなくなつてゐる
煙草に火をつけて暗い庭先を見てゐるのである
『現代詩文庫 尾形亀之助詩集』より
夕食はいつも通り、木がだんだんと夜に包まれ、輪郭を失い、窓の外が真っ暗な黒一色になってゆくのを見ながらたべた。