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残像日記1

五月某日 晴

稲垣えみ子『家事か地獄か』を読む。毎日毎日ごはんとみそ汁の生活とはどんなものだろうと、さっそく始めてみた。なかなかいい。誰かの日記で読んだ、たまごの入ったみそ汁がおいしそうだった。近々作ってみたい。

五月某日 曇り

井坂洋子『はじめの穴 終わりの口』を読む。松井啓子「夜」という詩に惹かれた。夜ごはんのあとにまだなにか食べたいと、女のひとと男のひとが竹輪やグリーンアスパラガスを食べる詩。ぱらぱらめくっていると見覚えのある詩があった。斉藤倫『ポエトリー・ドッグス』でいぬのマスターが出していた詩。「◉サウス・ダコタのラピッド・シティで、母が氷をナプキンに包んでぼくにしゃぶらせた」

五月某日 曇り

「光る君へ」を見る。とうとう清少納言が書きはじめる。息をつめて見る。たったひとりのために書く、手紙と思う。

五月某日 曇り

「虎に翼」を見る。死に別れについて考える。
今まで見たいくつかの朝ドラのなかでは「カーネーション」がいちばん好きだったが、「虎に翼」もいい。どちらにも小林薫が出ている。松山ケンイチが出ると(おっ)となるのは、若いころ似ていると言われたからだろうか。

五月某日 晴

マテ貝を取りに行く。ちょっとした潮干狩りスポットらしく、しゃがんでいる人がたくさんいる。白昼夢のよう。アサリも取れるらしいが、今日はマテ貝ねらいだ。
楕円形の穴のまわりの砂を広めに浅く削る(夏子)→穴の中やまわりに塩や味の素をまく(冬子)→出てきたらつかんで抜く(百閒)
狩りのおもしろさはなんだろう。マテ貝を初めてつかんで抜くとき、濁音の太い声が出る。まだまだ知らない自分がいる。マテ貝は穴から少し出ては、トカゲのしっぽのような捨てパーツをポイっと放っていた。若い頃、つらい職場に置いてきた黒の合皮の靴を思いだす。

五月某日 大雨

夏子から電話。いつも長い列のできる甘味の店に誘われる。店に向かいながら何人待ちか予想。夏子は私たちがいちばん最初といい、私は五人という。ほぼ開店時間に到着。私たちが座るとちょうど満席になった。できたての白玉はピンポン玉くらいの大きさがあり、たいへんつやつやしていた。帰り道、ふたりともおなかが苦しくなり、ウミガメになった気分で帰った。




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