ジョン・ガリアーノの映画を観た話
映画 HIGH & LOW JOHN GALLIANO
ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー
観てきました。
しかしすごい邦題!笑
モード界の異端児、天才ジョン・ガリアーノの栄光と転落、そして再生を追ったドキュメンタリー。まず内気そうな可愛らしい少年の顔がどんどん変わっていくのがめっちゃこわいし(苦笑)、見ててつらい。
幼少期~学生時代のエピソードから、彼のドラマチックな作風と人間性の原点を知ってなんとも言えない気持ちに。
年間32本ものコレクションを手掛けながらその他諸々の業務をこなす。こんな働き方をしなきゃいけない業界の異常さに震えた。
本人も「飢えたモンスターに餌を与え続けているような気分だった」と当時を振り返る。
アルコール、処方薬、そして仕事への依存。
天使になった魂の片割れスティーブン…
人は多忙過ぎると壊れる。
内気なジョンとイカれたジョンの間でバランスを崩していくのを見ているのがもう、、つらい。
私は、ガリアーノといえばDIORのやりたい放題期のイメージがやっぱり強い。当時衝撃を受けたもん、あんなイカれたものを作れる人はいない。
高級感と低俗感の絶妙なバランス、寄せ集めたバラバラのあれやこれをバシッとまとめる能力がピカイチ!
皮肉だけど、狂乱の中にいたからこそあんなパワーのあるものが作り出せたのかもしれないね。
今の時代も素敵なものはちゃんとあるんだけど、当時のような破壊力のあるものが無いっていうのはそういった時代的な背景もあるのかも。
なんでファッションって芸術的価値と商業的価値っていう相反するものが一体になっているんだろうって思う。不思議。
特にデザイナーとメゾンのトップの関係はさらに独特。
なんかもう、使い捨てじゃんか~。
ずっとギリギリを綱渡りで歩いていく、アップダウンの激しい人生。
そんなギリギリの中で起きてしまった事件。
全てを失ってしまったけど、ここで一回休むことができて良かったんじゃないかとちょっとホッとしてしまった自分もいた。
忘れないし許せないことだけどね。
それが無かったら多分、この素晴らしい才能を永遠に失うことになっていたのでは。
人は自覚の無い差別意識を持っている。
私だってある。自覚しているものも無いものも、ある。
刷り込みってこわい!
正しい知識を得ることの大切さを痛感する。
彼は良くも悪くも、見たままのものの表面からインスピレーションを得るから、その奥にある背景を深く考えないんだろう。
子どものころの体験や経験も、物を作る人だから表面に出て見えやすいんだと思う。そして彼は純粋で素直すぎる。
その純粋さが多分、仇になってしまったんだろう。
何度も炎上してしまうのは、悪気が無いから。本人も覚えてないとか言ってるし笑。
見てるほうは「もー!またやってるよ、なんでだよぉ〜!!」って感じなんだけどね。
リハビリ施設を経ての復帰作がケイト・モスのウエディングドレスっていうのがまた、感動的!
毎回ショーではジョンに役柄を与えられていたケイトが、「結婚式ではどんな役を演じればいい?」って震えて聞いたってエピソード、泣ける。
てかデビュー当時のケイトが、かんわいいぃ〜!
そんなジェットコースター人生を今も生きているジョン・ガリアーノ。
現在の活躍も知ってるからわかってたけど、いろんな人の手助けで再生できて、本当によかった。
それに比べてアレキサンダー・マックイーンの映画は救いようがなさすぎて、観たあとかなり引きずったもんね、今も軽くトラウマ。汗
きらびやかなファッションの歴史を辿りつつ、人種差別から業界の働き方までいろんなことを考えさせてくれる映画でした。