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フードスケープってなんだろう1

2021年に出版された『世界の食文化百科事典』には、「フードスケープ」[1]という項目が設けられています。あまり聞きなれない言葉ですが、この考え方が食文化や食、料理をみる視点としてとても興味深い内容だったので、整理してまとめていきたいと思います。

本の中でフードスケープはこのように定義されてます。

フードスケープとは「食をめぐる視覚と認識である。」

『世界の食文化百科事典』

次に、何をフードスケープというのかですが、2つの食を巡る動きが取り上げられています。食のこういうとこを見るってことでしょうか。

①「食をめぐるまなざしや認識が各々の社会・文化的条件に応じて形成されている見解。」
②「グローバルフード・システム[2] の影響により、特定の食が意味付けされていく力学。」

『世界の食文化百科事典』

考え方だけみていても、なかなか理解するのは難しいです。
フードスケープが食をめぐる視覚と認識であるなら、それによって何がわかるのでしょうか。具体的な例としてカレーをテーマにして、考えてみたいと思います。

最近、旅行サイトのTasteAtlasでカレー(Kare)が、日本の伝統料理として1位にランクインしたことをめぐり、カレー食文化は誰のものかという対立がインド料理屋のシェフと日本のカレー研究家の間で生まれているようです[3]。
私は、こうした問題がカレーをめぐる歴史的な背景や現在の状況を、誰がどのようにみたかによって生じたと考えています。
少なくともランキングサイトのレビュアー、インド料理屋のシェフ、カレー研究家といった複数の立場からみたカレーがあります。

カレーと聞いてイメージするのはどういったものでしょうか。

さっきカレー屋で注文した辛口のカレーあるいは家で食べた昨日のカレー、こうしたものもカレーですが、ふとカレーとは?と考えたとき浮かぶカレーが、インドであったり、タイであったり、はたまたスリランカであったりする、いや家族との食卓を囲う場で出されたライスカレーしか思い浮かばないって人もいるかもしれないですが。

カレーは物質ですが、そこには心象作用も含まれていて、人や集団によってさまざまな見方ができます。またそこから複数の意味が生じるともいえます。

私たちが何をもってカレーというのかということと、カレーといったとき頭に浮かぶイメージ、それをつくった想像力[4] が「カレー」がどんなものか決めているのかもしれないですね。

この投稿がフードスケープからカレーを考えられているか心配ですが、心象的な部分とエスニックなイメージ、複数の立場からみたカレーについて書いてみました。

自分の学びもかねて、もう少し掘り下げていきたいと思っています。


脚注
[1]河合洋尚2021「フードスケープ」野林厚志(編)『世界の食文化百科事典』丸善出版、pp.24-25.
[2]”フード‐システム【food system】”.食料品の生産から流通・消費までの一連の領域・産業の相互関係を一つの体系として捉える概念。 デジタル大辞泉. ジャパンナレッジ. (オンラインデータベース), 入手先 <https://japanknowledge-com/> (参照2023-2-23)。したがって、グローバルフードシステムを地球規模でみたフードシステムだと理解しました。そのままですが。
[3]”【バトル勃発】「ホントに頭にきている」…“日本の”カレーが“世界伝統料理”1位に!インド料理店店主激怒”.食料品の生産から流通・消費までの一連の領域・産業の相互関係を一つの体系として捉える概念。 FNNプライムオンライン. Yahoo! JAPANニュース, 入手先 <https://news.yahoo.co.jp/articles/2ec1d540124f31a0046592cbf5407da309d112a2> (参照2023-3-1)。
[4]アメリカの人類学者アルジュン・アパデュライはグローバリゼーションの新たなる重要な要素を、あらゆる形態の行為性にとって中心的な「社会的実践としての想像力」と指摘しました。私がここでいう想像力もイメージの力学という意味で著者のスケープ(景)論を意識しています。

参考文献
『世界の食文化百科事典』野林厚志(編)丸善出版

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