雨が降っている。 ザァザァと音を立てて落ちる水の音を、私は静かに聞いている。 降り始めてからどのくらいたったのだろう。 雨はまだまだ止みそうにない。 昨日の夜、私は失恋をした。 私たちはとても良い関係性だったし、正直なところ相手にとって特別な存在であると自覚し、そして自惚れていた。 いつかは恋人と呼べるような関係になれるのだろうと。 特別な存在と言うものには種類があり、実際の所、どうやら彼にとって私はそういう種類の特別ではなかったようだ。 彼にはっきりとそれを
私は最近、朝とても早く起きる。 本当は6時30分くらいに起きれば学校へは間に合うのだけど、日の出に合わせて5時前には目を覚ます。 電気をつけていない暗い部屋で、カーテンを開けて東の空を眺める。 じんわりと空が明るくなってきて、遠くの山の端が薄いオレンジ色に染まる。 けれどもまだ、太陽は見えない。 この毎日訪れる短い時間の事を、「東雲」と言うらしい。 「東雲」という言葉を教えてくれた隣の席の佐伯くんとは、今年初めて同じクラスになった。 勉強があまり得意ではない私と
仕事からの帰り道、空を見上げた。 5月終わりのこの時間帯は、西の空は夕暮れが近づいてきており、東の空は青とも赤とも言えない、複雑な色をしている。 あの色に名前はあるのだろうか? 残念ながら国語にも芸術にも明るくない僕には、この色を正しく表現する言葉は浮かばない。 ただ、僕がこの複雑な空の色を特別に好きだという事は言い切れる。 これから始まるであろう梅雨の時期は、湿度が高くて不快なので好きではないけれど。 空の色にあてられて、なんとなくフワフワとした気持ちで彼女の家