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青崎有吾『体育館の殺人』

引用は青崎有吾『体育館の殺人』東京創元社 2017年7月に拠る。

〈あらすじ〉

風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後、放送部の少年が刺殺された。密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長の犯行だと警察は決めてかかる。卓球部員・柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれている裏染天馬に真相の解明を頼んだ。アニメオタクの駄目人間に―。"平成のエラリー・クイーン”が、大幅改稿で読者に贈る、第22回鮎川哲也賞受賞作。//

文庫本 裏表紙

異文化交流

推理小説ってこんなに読みづらいものだったか。
いや褒め言葉なんだけれど。
会話文が多くていやでも目に飛び込んでしまい、細かい文章を読み飛ばしてしまう。

……と、noteの下書きには残されていたが、読み進めていけば割とすんなり文体には馴染んだように思う。
長らくこのような軽いニュアンスの文章を読んでいなかったので、読み方を忘れていたらしい。
あれだあれ、使わないと数学の公式忘れちゃうみたいなもん。……多分。

普段読まないジャンルの本を読んだのは、数理小説好きな同期が貸してくれたから。
まさに異文化交流って感じだったが、悪くなかった。

(ちなみに自分は小川洋子の『猫を抱いて象と泳ぐ』を貸した。
『汝、星のごとく』の感想を言い合った時も思ったが、彼は登場人物の立ち振る舞いとか、論理的な展開に面白みを感じるタイプらしい。
純文学と彼の相性はどうかな、なんて、そこも勝手に楽しみにしている。)

話を戻すと、異文化交流が悪くなかった理由は、ロジカルな文章の良さを再確認出来たからだ。
学校が舞台なだけに、設定やトリック、登場人物たちにハッと驚かされるものは無かったが(すみません)、言葉を1つも読み逃してはいけない感じが新鮮で、久々に頭を使って読書をしたな、と思った。

あと普段、どんなに好きな小説、漫画でも、登場人物の名前を覚えようとしない悪癖があるため、説教された気分にもなった。すみません。覚えます。

悪事は桜色

推理小説なので、ネタについてはあまり明示しない方が良いかと思い、印象に残ったシーンを1つ。

アニメオタクの探偵役・裏染天馬が、生徒会長である正木を容疑者として挙げた場面。

会長が容疑者に仕立てられたことで、生徒会室にはどことなく気まずい雰囲気が流れた。
「けどまあ、安心しろ。いくつかの理由があって、お前が犯人である可能性はだいぶ薄い。真っ白とまではいかないが、まあ、ほんのり桜色くらいだ」
「酔っ払いみたいなたとえだなあ。普通は灰色を使うんじゃない?」
その雰囲気を吹き飛ばすように、ははははは、とテスト結果学年第一位と第二位の生徒は仲良く笑い合った。

p.205

高校生にしては大層老けた会話だが、学年一位と二位の秀才という設定の上では自然なやりとりかな。
ここで裏染天馬が「ほんのり桜色」と表現したのが粋で気に入っている。

また、その直後に副会長の千鶴も疑われるが、そこでは彼女自ら、自分のことを「ショッキングピンク」と揶揄する。

「……私も怪しい?」
「怪しいな。正木の二倍くらい怪しい」//
「二倍。それじゃ、私の容疑はショッキングピンクくらいね」

p.206


後半になり、この大人びた子達がまさかあんな役割を付与されるとは……と驚かされることになるのだが、それは内緒のお話。

まとめ

全体的な感想としては「うーん、コナンっぽい」でした笑(他のnoteにも同じことが書いてあってびっくり。)

別にコナンが悪いとかではなくて(むしろ漫画は結構集めていた)、主人公の設定が突飛といえば突飛なので、なんかもっと生々しさちょーだい!って感じ。
純文学好きの、欲張りです。欲しがりです。

どんどん左手で支える紙の厚みが減っていくことに焦りながら、事件解決もあっさりされちゃって、どない……?ってなっちゃったんだよね。

が、同期によればロジックがこの本の面白みらしい。
裏表紙に書いてあるエラリー・クイーンさんもそんな感じの小説を書いているそうですね。

前述した通り、ロジカルな文章の良さには気づかされたんです。でも内容は……?
いやいややめます、まだまだでした自分。

推理小説は、1回だけ読むのではなく、読み終えてからもう一度読み返して、「この時点でここまで分かっていたの!?」と驚くのもおもしろいと聞いたので、次回やってみたいと思います。

今回は同期のおかげで新鮮な体験ができました。

別の知人に薦めてもらった推理小説の積読本がまだまだあるので読まなければ。

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