人間交差点4号【サブちゃん】
三郎くん「…何笑ってんだよ」
俺「いやwほらww三郎くんが北島三郎打ってるって何かなwwと思いましてw」
三郎「面白い台なんだから良いじゃねーかよw」
俺「そうっすよねwそうなんすよねwwwブヒww」
さて、早起きし過ぎたか4号機の話でもしようか。
いや、コラじゃないんだよ。マジであった台で平和から出されたそこそこヒットした芸能人タイアップの一台だ。
B400タイプのストック機なんだが三郎チャンスを起点とした出玉からの大量獲得が見込めた台で当時の打ち手がメイン機種として打てるくらいに爆発力も秘めていた。
そもそもサブロウチャンスに入った時点でボーナスが確定しているのでチャンスどころの騒ぎじゃない、祭なのだ。
演出面も細かく作られ、ゲーム数や液晶演出からの前兆、非前兆かを考えながら打てる面白い台だった。そもそもサブロウチャンスの突入画面だけで私はこの15年笑っている。
三郎くん「あ、そうだ。昼飯奢るから休憩した時に役所行きたいから付き合ってよ」
俺「いいっすよー。」
三郎くんは中学生の頃からの先輩で普通に優しい先輩だった。
刺青だらけで見た目は近寄りがたいが、先輩風を吹かせる事もなく上も下も関係無くフラットに話を聞く姿勢をもつ常識人。
私は三郎くんと遊んでると疲れないから好きだった、気を遣うこともなくヘラヘラと出来る時間ってのは当時ピリピリしていた環境にいたせいかとても助かった。
そんな三郎くんだから歳上からも下からも「三郎くん」と呼ばれ愛されていた。どこか理想の大人…いや、人間だった。
三郎くん「めちゃくちゃラッキー!空いてるじゃん!」
俺「平日昼間で役所にこんな人いないのも珍しいっすねー」
食事を終え、三郎くんと役所のソファーに座り呼ばれるのを待つ。なんて事はない普通の日常だ。
三郎くん「呼ばれたから行ってくるな」
住所変更だからすぐだしパチ屋の休憩短いからギリギリ間に合うかなーって考えてると三郎くんと役所の人の会話が耳にはいる
「じゃあ…世帯主様は…かずなりさん、本人でよろしいですね?それではかずなりさんの身分証明を…」
三郎くん「あ、はい免許証で」
ウソだろ。かずなりって誰だよ。
ソッと立ち上がり三郎くんの後ろに立ち免許証を見るとソコには三郎くんの写真が貼ってあるが聞いたこともない名前が書いてある。
俺(三郎くんは三郎くんだけど三郎くんじゃなくて三郎くん…?どういうことだ。わからん、わからんぞ。)
三郎くんは私が中学生の頃から三郎くんなのだ。
先輩達も同級生も三郎くんの彼女も何なら三郎くんの父親すら三郎くんを三郎くんと呼んでいる。かずなりとは誰なのだ…。
私はパニックになっていた、とんでもない事を知ってしまい事件に巻き込まれたんだと。
三郎くん「おまたせー!」
俺「……かずなり、かずなりって…誰っすか?」
三郎くん「俺だけど…」
俺「三郎くんは三郎くんじゃないんすか…?」
三郎くん「いや、あだ名だから三郎って。」
俺「いや、三郎くんの親父さんも三郎くんの事を三郎って…」
三郎くん「親父がつけたあだ名だからなwww」
狂ってやがる。
三郎くん「時任三郎に似てるからって親父に言われてソコから三郎よ。」
俺「本名忘れ去られたタイプの人間はじめて観ましたよ。言われてみればめちゃくちゃ時任三郎似てるし。」
三郎くんは三郎くんじゃなく、かずなりだったのだ。
言い始めた方も受け入れた方にも若干の狂気を感じた。
パチンコ屋に戻りサブちゃんのスロットをまた打ち始める。
一時間前のように笑えなくなっている私がいるのだ、三郎くんがサブちゃんを打っていたから面白かったのであって、かずなりがサブちゃん打っているのは当たり前なのだ。超普通。
三郎くん「でもな佐藤、サブちゃんの本名だって北島三郎じゃないんだぞ」
俺「へー」
三郎くん「大野みのるだ。知らなかったろ?」
どうでも良い情報が頭に入らないくらい三郎くん、いや、かずなりさんが得体の知れないモノに感じていた。
貴方の隣にいるその人、本当にその人ですか?
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