人間交差点4号【功夫列伝】前編
「いくらある?」
「三千円…と、ちょっと。」
「そっか…俺もそんくらい、佐藤は?」
私「…同じくらい。あ、四千円あるな。」
昼まで暇だし4号機の話でもしようか。
山佐から出た4号機の大量獲得機で誰でも簡単に711枚が獲得出来て同時期にリリースされたストック機と比べたら破壊力に満ち溢れた台だった。
「だった。」
何とも多いモードにボーナス終了後の300ゲームまでチャンスというダラダラした性能なせいか、ハイエナには向いていたが1日向き合う台ではなかった。
この時期は母親が亡くなって数ヶ月くらいで、ボンヤリと暮らしなんとなーく生きていた。
友人達とナゾの草を紙に巻いては溜まり場で音楽聴きながらフリーズし、気が向いたら農業をし、名前も知らない人と殴り合うのが暇潰しで名前も知らない女性と遊ぶのを愛だの呼んでた浅い浅い日々。
ずっとこのまま生活出来ると錯覚していた。
正直、何したら良いかわからなかったし何しても注意も叱られもしないからこんなもんだろうという錯覚。
本当にちんちん、思い出すだけで恥ずかしくなる。けど、仕方ないこんな記憶しかない。
浅い日々だし本質なんてのは欠片もない毎日なんだけど、楽しい楽しくないかで言えば楽しかった。
今でも会話する友人達とはその時からだし、何よりあの時に1人じゃあなかったのは本当に助かった。
今は友情やらなんちゃらって言葉には唾を吐きかけたくなるが、その時はまぁ、まぁまぁ、うん。
色々な人間が集まっていた、歳も国籍も性別もバラバラで何をするワケでもなく毎日ダラダラ。何かトラブルあったらちょっとワクワクみたいな。
痛いこともあるけど平和だった。トラブルなんてのも子供同士のケンカだから仲良くなってしまったりもあってさ。
その中の一人に「ヤマケン」って奴がいた。
2つ上の人で、いっつも顔がアザだらけで
「どうしたのそれ?いっつも顔面腫れてるな?」って聞くと「ケンカよケンカw俺つえーからさww」と返事をするチビ。本当にガリガリチビ。
単車の構造とかすんごい詳しくてさ、ちょっと故障かな?と思って相談したら笑いながら見てやるよ!って言ってくれたり。
別に目立つ存在じゃないけど、気さくだし可愛い彼女もいたし、憎めなかった。憎む理由もなかったし。
ヤマケンは日が増すごとにアザが増えて歯が減った。それでも笑ってたし、弱いからケンカに負け続けてるんだろうなーって思ってた。
ある夜携帯が鳴ってヤマケンの彼女が泣きながら電話してきた。
電話の向こう側で本当に声に成らない声で泣きながら死んだと伝えられた。
まーたヤマケンのつまらないジョークだと思ったが、ふと携帯の画面に100件近くの未読メールがあるのに気付き本当なんだと悟った。
電話を切ってメールを確認して確信に変わり、胸が痛くて部屋で叫んだ。
自殺だった。
【続】
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