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理想のおばあちゃん目指して
JR千葉駅の駅ビル【ペリエ】に入っているくまざわ書店で村田沙耶香さんのエッセイ『きれいなシワの作り方』(文春文庫)を見つけた。千葉県出身の村田さんの作品を多く取り揃えているこの書店はとくに好き。タイトルにくすぐられた。装丁もとってもかわいい。
年齢を重ねるにつれてあらわれてくる体と心の変化、気持ちのゆらぎ、それに伴う悩みや想いが綴られている。自信があまり持てない上に「そこまで考えちゃうの?!」っていうくらい自意識過剰が重なってしまうがゆえに、あんなことやこんなことも悩んでしまう。おかしくてかわいい。
一度ならずとも抱いた感情が書かれていてドキっとしたり、「わかりすぎるくらいわかるわ~」と深くうなずいたり、年に抗うことができない切なさにしんみりしたりして、年齢を重ねていく悲哀とおかしみをしみじみ味わえる。どのエピソードも、じゅうぶんすぎるほど当てはまっていて、なんだか村田さんと一緒に飲みながら尽きない話で盛り上がっている気分になった。カンパーイ!
きっと誰もが感じたことのあるモヤモヤやヒリヒリを表現してくれている。このままでもいいんだという気持ちを肯定してくれて、心がすーっと軽くなった。
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ステキなエッセイを読み終えて、これまでを振り返ってみたくなった。大学を卒業し、メーカーで営業に奮闘し、結婚し、転職し、子ども2人を授かり、フリーランスの翻訳者に転じ、今、40代のど真ん中。年々図太くなるけど、体はへたりやすくなり、涙もろくなった。年齢とともに環境が変化する。環境の変化によって自分も変化せざるをえない。ときどき変化の大きさにとまどうこともあるけれど、悪いことばかりではなかったかも。
たとえば。
いつのまにか連絡を取らなくなってしまった友人がいるけれど、新しくかけがえのない友だちにたくさん出会えた。昔の友人とも、いつかまた会って話ができるときがくるといいなと思えるようになった。
家族が増えたことで自分の時間が少なくなったけれど、その分、時間のやりくりが上手になった。
できるだけ人と比較することをやめようと意識するようになってから、軸をもつことができるようになった(か細い軸だし、揺れに揺れてブレまくることはしょっちゅうだけれど)。
これから先はどうなるのかな。やってみたいこと、行きたい場所、会いたい人、読みたい本、観たい映画/ドラマ、食べてみたい料理、飲んでみたいお酒。まだまだ経験していないことが山ほどあって、それらが待ち受けてくれていると思うと、それだけで村田さんのいう“淑女の思春期病”をたのしくのんびりと過ごしていけるような気がする。ふわふわ白髪のおしゃれなおばあちゃんになることを目指して、きれいなシワを刻んでいきたい。そして今日も保湿クリームたっぷりと塗り込んで……(笑)。