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Podcast配信日記 |#28 選べることを思い出して



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冬にPodcastを始めてから、週に1度、部屋の中で1人で話している。世界にたった1人しかいないみたいに、夜の片隅で内緒話をする。そんな夜を続けてもうすぐ半年になる。

これは、何の変哲もない1日に、Podcast番組【Corner of the night】を収録するちいさな日記です。

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2024 ⒏27

炊飯器の音で目が覚めた。スーパーにお米があまりにも売っていなくて、玄米生活を始めた。玄米を炊飯器で炊くとかなり音がすることは忘れていた。ぱちぱち、ぶくぶく、じゅわじゅわ、いろんな音が部屋に満ちて、まだ早いのに目が冴えてしまう。

電車の中で人に貸してもらった三島由紀夫の『命売ります』を読む。そういえばこの間香川で、夜ご飯を食べたお店の方も、三島由紀夫をお勧めしてくれた。短い間に同じ名前を二度聞くような偶然がたまに起こる。私に必要なものなのだと思う。好きなものを詳しく語ることは上手じゃないけど、好きな気持ちを伝えようとすることはできる。本を大事に扱うとか、耳を澄ませるとか。好きなもので誰かと繋がることは本当に嬉しいことだ。

職場の最寄りの駅に着くと、晴れているのに雨が降っていて、「どうぶつの森」を思い出した。働いていても窓の外は雨が降ったり止んだりして、思わず見てしまう。「ドラマで使われる降らせてる雨みたいだね」と先輩が言う。

帰り道、歩きながら少し前に聴いていたアルバムを聴いて、あれっと思う。聴いた感じが違っている。音がもっと溢れている印象だったのに、整理された感覚がある。こんなに静けさがあったっけ?あのとき、私が聴いていたとき、私の頭の中の方が騒がしかったのかもしれない。

電車でまた本を開く。よく見るとページのところどころが折られている。私もよくやってしまうけど、人が折った本に出会うのは初めてだった。人の心に入り込んだページが近づくと大事なものを覗いてしまうようで、ほんの少しだけ緊張した。でもこうして人が心が動いた瞬間の手触りが残るものを目の前にして、空っぽの場所に石を投げ続けていた私の季節が終わったことを知った。私の周りに安全網が少しずつ、編まれていく。その途上を信じることができそうだった。


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夜の片隅でお喋りするPodcast
  🕯Corner of the night 🕯

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            毎週木曜日配信中🪐

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