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hensinnoumi
2016年9月27日 19:47
その日から、本当に春臣くんは来なくなった。僕はまだ大学には行けず、退屈な毎日を送っていた。母さんはご飯の時以外声をかけなくなった。僕以外誰もいないこの部屋で、僕はひとりぼっちだった。 退屈な毎日の中で、僕はいろいろ考えていた。大学のこと、母さんのこと、そして、春臣くんのこと。最後に見たあの赤い髪が、脳裏から離れない。信号の赤に目が眩んだように、あの赤い髪も眩しかった。どうしようもなく、眩しか
2016年9月27日 19:44
幼馴染の春臣くんは、僕にとって憧れの存在だった。 勉強は僕の方ができた。だから僕は国立の大学に行って、春臣くんは私立の少し偏差値の低い大学に行った。 スポーツに関しては僕はからきし駄目で、春臣くんはサッカー部のキャプテンだった。いつも窓から見ているだけの僕と、すいすいボールを操ってゴールに運ぶ春臣くん。春臣くんのまわりにはたくさんの友達がいた。 僕に友達がいなかったわけじゃない。
2016年9月27日 19:40
僕の家から学校に行くまでには、ひとつの信号がある。そこを渡ってしまえばあとは一本道。家も学校も田舎にあるから、信号は押しボタン式だった。ボタンを押してしばらくすれば信号は青に変わり、学校に行くことができる。 でも、僕は今日もこのボタンが押せないんだ。 「海里、起きたの?」 ピピピピ、という目覚まし時計のアラーム音とほぼ同時に1階から母さんの声が聞こえた。パチンと時計を上から叩くと