11/22 夢見がち、才能ナシ

私は、かつて、ある夢を抱いていた。それは、本を出すこと。みんなが「大きくなったら何になりたい?」って聞かれると、「ケーキ屋さん」とか「仮面ライダー」とか言ってる中で、私だけは心の中で「本を出す」と思っていたわけよ。でもまあ、当時の私は「本」なんて何だかよく分かってなかったけど、言ってみたかったんだろうね、きっと。だって、聞こえがいいじゃん。

だが、私の思いは次第に冷めていった。いや、冷めたっていうより、諦めたという方が正しい。だってさ、考えてみ?才能って何よ。すごい人はすぐに才能があって、すぐに結果が出て、ぱっと華やかに成功するんだよね。私?いや、無理無理。才能?ゼロ。むしろマイナス。ペンを持とうとすると、なんか落ち着かないし、紙がしわしわになるだけだし。それで、結局無駄だなって思ってた。

でも、でもね。時折いや、むしろしょっちゅう思うわけよ。私って、本当にダメなのかな、って。あれ?待って、もしかして、私、もしかして、無能じゃないかもしれないんじゃないか?って。これ、ちょっとした光の加減かもしれないけど、心の中で「うん、いいかも」って思う瞬間があるわけよ。まあ、たいていはその光が霧で消えるんだけど。

で、ついに私は気づいた。実は、最初から手のひらの上に「才能」っていうのがあったんじゃないか、って。でもその才能って、要は「すぐに分かるもの」じゃないんだよね。なんか、だまし討ちみたいな感じで、「あれ?気づいたらあった」みたいな。でもまあ、それを言うと、みんなに「無駄にポジティブでしょ」とか言われそうだから、黙ってるけど。

現実ってやつは、常に冷たくて厳しい。私はもう、エッセイなんか書いても誰も読まないと思ってた。だって、私の名前ってどこにでもあるし。たぶん、「ああ、またその名前か」って思われるだけでしょ?なんで私が書くものに誰かが耳を傾けると思うのか、全く分からない。エッセイとか言っても、それって名のある人が書くもんじゃん、絶対。

でも、ある時ふと気づいた。あ、これか!って。なんとなく手のひらに感じたんだよね。あれ、これってもしかしてって。言葉が、勝手に入ってくる感じ。ああ、これ、たぶんただの気まぐれだよな、と思いつつも、心のどこかで「お、いけるかも」って思ってる自分がいるんだよね。

そして、私は決心した。もう一回、ペンを持とうかなって。だって、何も始まらないでしょ?でも、そのペンを持った瞬間に、あれ?なんか手が震えてるの、なんでだろう。これって、もしかして期待してるのか?いや、怖いわ、こわいけど、面白いわ。とりあえず、何が起きるか分からないけど、やってみる価値はありそうだよね。

私の言葉、何かを生み出すのかな。誰かに届くのかな。それ、ほんと分からないけど、とりあえずやってみなきゃ意味ないじゃん。どんな結果になるか分からないけど、この変な感覚が無駄じゃないと信じるしかないのかなって、今はそう思ってる。

そして、私はひそかに待ってるんだよね。私の書いたものが、どこかで、誰かの心に触れるその瞬間を。

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