桜の咲く頃、中目黒・代官山へ
目黒川の桜を眺めに、ひとり中目黒・代官山を散策しました。
中目黒には桜が咲くこの時期に毎年のように訪れているけれど、周辺の施設にはほぼ立ち寄ったことがなかったので、この日を愉しみにしていた。
・ONIBUS COFFEE
まずは珈琲を飲みにONIBUS COFFEEへ。
お花見シーズンということもあり、早朝だというのにすでに行列ができていた。
“ONIBUS”とはポルトガル語で「公共バス」、語源としては「万人の為に」という意味を持つ言葉だそう。性別や国籍、さまざまな人々に淹れたての珈琲が手渡されて行く様は、まさに万人の為といえる。
ホットラテを注文し、二階に上がるとひと息つける小さなイートインスペースが広がっていた。
元々古民家だったというこの場所では、古材のぬくもりやあたたかみが感じられる。
大きな窓の向こうはまぶしいくらいに春の陽射しが降り注いでいて、屋外とのコントラストにうっとりと魅せられる。
すぐ側を線路が通っていて、目的地へ向かう多くのひとを乗せた列車が勢いよく駆け抜けていく。
せわしない朝は煩わしく感じられるはずの列車の轟音も、ここでは不思議と心地よく耳に響く。
・la vie a la campagne
商店街を抜け、朝食にla vie a la campagneへ。
“ヨーロッパの田舎暮らし”がコンセプトのライフスタイルショップである店の入口は、鮮やかな緑に彩られている。
二階に上がると、都会の喧騒を忘れてしまうくらい、静かでゆったりと落ち着いた時間が流れていて驚いた。通勤や通学の際に使用していた、絶えずせわしないイメージの中目黒駅周辺に、こんな長閑な場所があったとは…。
モーニングメニューであるポトフとパンの盛り合わせを注文した。
ごろごろと具材の大きなポトフに、プレーン、チョコレート、シナモンと三種類のパンが入ったバスケットが添えられている。
やわらかな風が流れ込む窓際の席で朝食を摂っていると、どこかずっと遠くに来てしまったのでは?と錯覚してしまうほど居心地がいい。
・目黒川沿いへ
朝食の後は桜並木の咲き誇る、目黒川沿いへ向かった。
今年は遅咲きのようで、四月に入ったこの時期にもまだ蕾が多く残っていたけれど、場所によってはもう十分なほど花開いていた。
賑わいのある通りには、例年通り屋台がいくつも並んでいて、念願だった苺のシャンパンを購入した。
背の高いプラスチックグラスにぎゅっと詰まった苺と、しゅわしゅわと弾ける透明なシャンパンが注がれていて綺麗。ほろ酔い気分で、心ゆくまで桜の儚い美しさを堪能した。
・Lurf MUSEUM
帰りは代官山まで少し歩き、Lurf MUSEUMへ。
期間によって異なるアート作品が展示されるこのカフェでは、芸術に触れながら休息をとることがてきる。
店内のインテリアは、1930年代のデンマーク ヴィンテージ家具で揃えられているそう。落ち着いたブラウンで統一された上品な空間に、談笑や珈琲の豆を挽く音が密やかに響く。
テーブルにチェス盤のような白黒のモザイクが描かれた席を選び、季節限定の苺のパウンドケーキとアイスカフェラテを注文した。
しっとりとした甘い生地の中に甘酸っぱい苺クリームが入っていて絶品。
私が選んだこの席も勿論ヴィンテージ家具のひとつで、カフェのチェス盤が描かれたテーブルはKay Simmelhag(カイ・シムヘイ)というデンマークの芸術家による作品。タイトルは見た目の通り「チェスボード」だった。
曲線の美しいチェアはデンマークを代表するデザイナー、Kaare Klint(コーア・クリント)による”ファーボーチェア”という名作だそう。
美術館内でゆっくりと絵画を鑑賞できるようにとデザインされたそうで、アート作品が展示されているこのカフェにぴったり。
名だたる芸術家が生み出した作品の数々に囲まれた空間と知ると特別感を感じられ、気分が高揚する。
活気があり、多くのひとが行き交う場所というイメージが強かった中目黒、ひとつ通りを外れると閑静な住宅街が佇み、ゆったりと心を落ち着けられる空間に辿り着くことを知れた。
とっておきの場所を見つけるこの時間が私の趣味になりつつある。次は何処へ行こうか。