旅を経て、巡り合う場所
糸波舎が始まるきっかけになった日は、2018年の初夏だった。
あれから3年が経ち、緩やかに出店活動をさせてもらう中で、そして生活様式の移り変わりに伴い、これからのことを改めて思い描いてみている。
今日はその風景を、ちょっぴりここに記しておきたい。
その前に、これまで目指してきたかたちの振り返りを少し。
長野の伊那谷と愛知の知多半島で二拠点生活をしていた時期。
それぞれの場所でこぢんまりとした実店舗を持てたらいいなあ、と思っていた。
そして二拠点生活が終わり、新しく始まったのは、旅暮らし。
北海道や屋久島で、農家さんのお家やゲストハウスに住み込み、長期滞在をした。
そのときに描いていたのは、軽トラに小屋を乗っけて走る、旅暮らしの本屋さん。
それぞれの暮らし方でやってゆきたいと思っていた糸波舎のかたちは、100%では叶わなかった。
けれど、各地のイベントに呼んでいただき、お客さんと関わる中で、糸波舎はなにを大切にしたいのか、かたち以前のあり方を考え直すことができた。
そして今、二拠点生活と旅暮らしを終えたわたしは、今回の人生を共にしたいと思える人に巡り会い、新たな場所を思い描いている。
まず、糸波舎が、というよりもわたし自身が、これからつくりたいのは、森。
これは過去の記事で何度か書いているのだけど、わたしは森をつくりたい。
ここでいう森は、ざっくり言ってしまえば、まほろば。
伝えよう、という思いで文章を連ねてもなかなかうまくいかないので、ここからはわたしのイメージをそのまま言葉に。
ひかりが降り注ぎ、風が通り抜ける丘。
ぽつんとした小さなお家の前に、広いお庭がある。
そのお庭には、草花があって、果樹があって、野菜があって、ハーブがあって。
いろんないきものの気配がして、すべてのいのちが息しているのを感じられる。
そして、いくつかの小屋が建てられている。
好きな人がコーヒーを焙煎したり、パンを焼いたりする小屋。
優しくて柔らかい物語のある、糸波舎の本が置いてある小屋。
お客さんがいらしたときに、のんびり過ごしてもらう小屋。
それから、至るところに陶器でつくられたどうぶつが潜んでいる。
まるで絵本の世界に迷い込んでしまったみたい。
夢とうつつの間にいるようで、なんだか不思議。
これが、わたしの中にある森、まほろばのイメージ。
普段はわたしと好きな人が暮らしているお家とお庭。
そこをたまに開放して、コーヒーとパン、そして本が楽しめる、オープンガーデンのような日を作って、お客さんに来ていただく。
ゆっくりまったりと過ごすことで、日常の中で忘れていたことにふと気づいたり。
もっと言ってしまえば、その人がその人に還る、その人本来のひかりに触れられる。
そういう時間と空間を、ふたりでつくってゆけたら、と思い描いている。
今、わたしは好きな人が生まれ育った町で暮らしている。
ここは陶芸の町で、ずっとやってみたいと思っていた陶芸に触れている。
日々の暮らしで使う器や、森に棲んでもらうどうぶつたちを、これからもくもくつくってゆきたい。
好きな人は、おいしいコーヒーとパンづくりをより極めてゆく。
そして、どこに森をつくるのか、これからふたりで選んでゆく。
ご縁のある方へ、素敵な巡り合わせがありますように。
2021年、夏至の日
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