読書・鑑賞記録 3

年末年始、ゲームに精を出しつつも
積読、積映画をゆっくり消化しております。

原田マハ『たゆたえども沈まず』

仕事でジャポニズムについて執筆することがあり、
その時にゴッホのことも勉強しました。
恥ずかしながら私はそんなにゴッホについては
詳しくはありませんでしたし、史実を学んでも、
彼がどんなことを考えながら生きて死んでいったのかまでは
その時は想像できませんでした。
『星月夜』の美しい表紙にひかれて手に取った本でしたが、
穏やかな表紙の絵とは裏腹に、
不器用に情熱を燃やしながら駆け抜けたゴッホの生涯が刻まれていました。彼を支える人々の優しいまなざしも印象的だったな。
何かひとつのことを成し遂げるために
大切なものを捨てる選択を私ができないのは、
捨てたつもりでも心はその形にくぼんだまま残って、
それをずっと胸に抱きながら生きていく自信がないからなんだなきっと。
原田マハさんは、友人がとても好いている作家さんのひとり。
今回初めて読んでみて、グッとはまってしまいました。
ほかの本も読んでみたい!

ローレンス・レビー『PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』

情熱もテクニックもずば抜けているのに倒産寸前だったPIXARが、
長編アニメーション『トイ・ストーリー』で奇跡のV字回復をし、
世界一に上り詰めたことは多くの人が知っていることでしょう。
スティーブ・ジョブズのV字回復も、同様。
でも、だれがどんなことをし、どんな手段を選び、
どんな失敗を乗り越えたかを知っている人は少ない。
それが知れる本でした。
一番アツかったのは、当時ディズニーの強い制限下で制作していた彼らが
交渉する中で、妥協点をどこに設定するかを話すシーン。
ここが違っていたら、私が好きなあの映画もこの映画も、
また違ったものになっていたかもしれない。
常時きちんとした文章でつづられているのに、
時たま「ジョブズしんどいわぁ」みたいなのが挟まっているのも
人間らしさにクスッと笑えていい。
ジョブズ、おそらくパワハラ体質だもんねわかるよ。

佐久間宣行『ずるい仕事術』

ラジオが好きなので佐久間さんのオールナイトニッポン0も
しっかりリスナーなわけですが、
やっぱりこの人ワーカホリックだわ……過労死しないか心配です。
仕事への情熱やインプットに対する執着が普通ではない、
そういう職人っぽいところに惹かれて人が集まっていくのだろうな。
それでも、「自分も仕事に行けなくなったことがある」なんて
びっくりするような事実も書かれてあって、
こんなすごい人も当たり前に傷ついたりつぶれそうになったり
するんだよな、当たり前だけど。
本当に挫折や絶望って急に誰の前にも表れるし
向き合わない人間なんてほぼいない。
ビジネスマンやものづくりの人間にとってだけじゃなく
生きていくうえでつらくなった時にも役に立ちそうな
メンタルトレーニングエッセンスが書かれてあるので、
読んでよかったなぁ。

三浦しをん『愛なき世界』

上下巻ですが、読みやすい文章とストーリー展開でサクッと読了。
三浦先生はほんとに取材力がすごい、すごすぎるよ!
『風が強く吹いている』でも感じたけど、
作家が取材して書く領域を超えている。
農学部にいる人間の解像度が高すぎる。
取材中、変わった人に会うことも多かったんだな…笑
私は農学部に修士までいましたが、この本を読んで
研究室に入った瞬間の独特のにおいとか、
機械のかすかな作動音とか、
研究発表のときのどきどきとか、
完全に記憶の端っこで忘れ去られていたものが
ぶわっとよみがえりました。
農学部出身で本当に良かったと思っているし、
あの、変わっているけど心が広い友人たちに囲まれて
6年過ごせたことは私の宝物だったなって
すごく懐かしい気持ちになりました。
もちろん、そんな専門知識がなくても楽しく読めるのが
三浦先生の作品のすごいところですので、
文系出身の方も大学に進学していない方もぜひ。

まだまだ年末読んだ本はありますが、感想を書く時間がないので
タイトルだけ。

・ブレイディみかこ『両手にトカレフ』
・石崎洋司『オードリー・タンの誕生』
・伊坂幸太郎『ペッパーズ・ゴースト』
・辻堂ゆめ『二重らせんのスイッチ』
・ことわ荒太『月の裏に望む』
・柳広司『アンブレイカブル』
・くみた柑『記憶の森の魔女』
・貴志祐介『十三番目の人格』
・近藤史恵『ホテル・ピーペリー』
・丸山正樹『ウェルカム・ホーム!』
・小山晃弘『ぶっちゃけ会計のことがまったくわかりません…』

今年もいっぱい読みましょう!

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