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あのこは貴族


読書感想。

山内マリコさんの「あのこは貴族」

山内マリコさんの作品は女の幸せと生き方を模索していて、言語化しにくい何かを言葉にしているのが好きです。

本は何回も読んだし、映画は公開されてすぐ見にいった。両方ちょっと前だけど、たまに読みたくなる。今回はそのタイミングだった。



地方出身者の美紀と、東京のある一部世界で生まれた華子、2人の主人公の話。富山から上京してきた美紀たちは、章タイトルで外部と表現される。私も美紀と同じ外部の人間なので、華子の狭い世界を恵まれていて羨ましく思ってしまう、これは妬みと劣等感。地方は車がないと生きていけないし、必要悪の病院しかなくて死が近くにある感じがするし、スタバもマックもない、みんなに監視されている、でもコンビニはたくさんあるし、海と山はすぐ眺められる。全然違う本で読んだけど、将来地方はAIに管理された穀倉地帯になるらしい、ほんとうかな、あ、話脱線した。


美紀のように地方で生まれ、裕福でもなく、みんなの憧れの東京で生きていく人と東京が地元の人では何もかも違う。地方で生まれ育って都会へでていく人は、どんどん何かに気付いていくよね、この感覚は負けに近い。逆に地方から出ない人は気づくことがない感覚。
東京の狭い世界で生きている華子が、外部に触れていく数々の場面はこちらの世界では「ふつう」なこともあるし、これがお互いの違和感の正体なんだろうな。
東京に住んでいるからといって東京の人ではないと華子が気づいた場面、

東京都内の限られたエリアしか、この世に存在していないもの同然なのだった。やっぱり相楽さんのような、こちら側の世界に住む人に、きちんとふるいをかけてもらった相手でないと、無理なのだ。

あのこは貴族p66

そちらの世界の人がそう思うように、たとえ同じ空間にいても、絶対に踏み入れさせてもらえない世界があるし、華子や逸子、幸一郎のような貴族に私は会ったことがない。そういう経験がないことからも外部の人間は、そこに触れることすら難しいとわかる。

美紀が最後の方に辺鄙な場所で生まれた私たちは「自由」という言葉がある。なによりもこの「自由」という言葉に救われる、慰めの言葉。型にはめられたことが得意な私としては自由を考えるのは難しいけど、自由は全人類が平和でいれる好きな言葉。華子や幸一郎のように狭い世界で戦うことも大変そう、みんな大好きな自由がないんだもんね。


そして、「あのこは貴族」のパワーワード

親の人生トレースしてる人ばっかりだよ

映画あのこは貴族

これ、映画と本では少しセリフも違うし、言っている場面も違うけど、両方しっくりくるタイミングと意味合いだったので驚いた。地方でも都会でも親の人生トレースしても幸せと感じている人もいる、幸せの価値観とはだね〜。美紀が同窓会で再会した同級生たちに感じていたような気持ちを私も地元のトレース組に抱いてしまうことあるなあ〜。そして友達ではなくなる。世界はたくさんありますね〜。

結局、幸せを求めた華子と美紀も自分で幸せを見つけて、もがくしかないって感じだったね。幸い私の周りの人たちは自分の幸せを自分で手に入れる人が多いので、いい手本にしたいといつも思ってる。全然真似できてないけど。真似できてるのは嫌なことを拒否する力だけ。


あとは、やっぱり衣服のこと!本の中でも細かく衣服のこと書かれているけど、映画とはちょっと違うんだよね。邂逅から現在に至るまで服装の変化も楽しめるし「こういう服の人ってこうだよね」と思える。

華子はバッグや小物にHERMES、CHANEL、ヴァンクリなどをつかって、質の良い服に合わせるのが印象的だった。流行りを求めず、選ばれたものを使っている感じ。離婚して自立してから服装が変わっていったね〜。
美紀はL.L.BEANのバッグで大学とバイトに通い、同窓会ではヴィヴィアンを持っていっていた。これ地方組なら結構よくみる子のパターンだと思う。本当によくいるよね〜、ヴィヴィアンか、coachか、MICHAEL KORSかの違い。その後はカルティエのヴィンテージを斜めがけに。後半に出てくる美紀の部屋の小物やバッグみるとジーンとした。
服装の変化は心の変化。

私は衣服好きだけど詳しい派ではないので、衣服のプロたちがいろんなところで解説しているのをぜひ検索してみてください。


映画も本も両方読むことをおすすめする。あんまり実写化って期待できないこと多いんだけど、あのこは貴族はとてもいい。あと山下リオさんの演技めちゃくちゃすてきなんだよ〜。

あ、心中天網島ももちろん調べた!

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