勿忘日記-2022/2/17(木)-
保健室
いつもより早い電車に乗り込んだ
保健室に入るところを知り合いに見られるのが嫌だから駅のトイレで人が出ていくのを待つ。時間をずらす
学校に着いてそっと保健室の扉を開ける
先生方もまだ来たばかりのようで養護教諭のうちの1人であるS先生はコート姿で私に「あら、おはよう」言ってくれた
H先生に「腕とか」と言うと奥の部屋に連れて行ってくれた
いつも通り処置してくれる
黙っていたってバレないのはわかっていた
でも約束もしたし何よりそうやって独りになるのは辞めようと決めたのだ。とても身勝手だけれども
何かあったの?と聞かれる
声は出ない。保健室だって別に話せる場所にはならない
沈黙。目を合わせられない私
それでも
腕は関係ないけど昨日先生方と進路の話をしたこと
その際一切話せなかったこと
を途切れ途切れではあるものの伝えた
1cm先に落ちるような声を絞り出して
H先生「そっかぁ、せっかくK先生とも良い感じの関係築けてたのになぁ…」「場所はどこやったん?」
私「廊下」
H先生「他の場所ならどうかなぁ?試したことある?例えば教室とか」「ここのぶたちゃん持ってってもいいよ?なんか落ち着く所とか物とか」
私 頷きつつ「あとは職員室とか」
H先生「その時はどうやった?」
私 首を振る
H先生「じゃあ2年生ずっとかぁ」「1年それじゃしんどかったなあ」
私「中一からずっと」
H先生「えぇそうなん?なんでなんやろなぁ」
私「なんか喉がギュッて」手で喉を絞めるジェスチャーをしながら
H先生「それは面談の度に気重いなぁ」「来年なったら増えるやろうし」
私 頷く
面談なんて年に2、3回。だからこそ重く考えなくていいと言う人もいると思う。でも私にとってそれはずっとずっと酷いコンプレックスだったのだ。それを受け入れてもらえてほっとした
H先生「前保健室でもしたことあるけど紙で伝えてもいいと思うよ」「それも難しいかな?」
私 首を傾げつつやや頷く
昨日は動けなかったのだ。手を動かすのは(それも見られながら)困難だと思った
そして文章化するのはやっぱり難しい。話のように進んでいかないことで伝わらない
「話せなくてもいいよ」「大丈夫だよ」と優しい言葉をいくらもらっても話せなくては私が私を許せないのだ。私が私にそれでもいいと言えない以上、とても申し訳ないけれどその優しさが私には受け止められなかった
私「大学生までに話せるようになりたい」
H先生「んーじゃあお話できるように練習してみる?」
私 頷く
H先生「こうやって保健室来てくれたらお話できるし。放課後とか授業中でもいいし。こんなことあってんーとか言ってくれたら、ね?」「そうやってお話して傷も減らせたらいいなって先生は思ってるよ」
私 頷く
H先生「それかもっと本格的なのなら相談室予約してみる?」
私 頷く
スクールカウンセリングと思われる。ちょっと怖い
H先生「じゃあ今予約取っちゃおうか!」
約3週間後に予約を入れてた
今からとても怖い
正直、話せないなんて嘘だと言われたらどうしようと何度も考えた。友達と話してるところは見られているしその時の私が明るくて元気なのもきっと知られている。そんな私の弱さは信じてもらえないことの方が多いから。
その気になればできるよとか言われたらと思うと怖かった。面談の度に腹痛を起こしたり呼吸が荒くなるぐらい今回こそ話さなきゃ話すんだという強い気持ちで挑んでいるのに、これが“その気”に当たらないのなら、お前はもう話せるようになどならないと言われてるのと同義だ
でも先生は言わなかった。それはしんどいねと言ってくれた。初めての軽視しない人だった。嬉しかった
放課後
もう1つ、この日は私なりに頑張ったことがある
それは進路のこと
私は今日ルーズリーフに自分の進路や模試結果等をまとめてきたのだ
渡さなきゃと思うとお腹が痛くて蹲りながらもういっかと諦めたくなった。特に何かが決められたわけじゃないのに渡してもな…。怒られたらどうしよう
それでもルーズリーフをK先生に渡した
先生はその場でそれに目を通してくれた
そして私を教室の端に呼び、細かい話をした
「ここ面白そうだね」「どうしてこれがしたいの?」「こんな学問があるんや」
みんなと同じ感じの対応が嬉しい
そして最後に「ありがとうございます。これちゃんと他のと一緒に挟んどくな。またなんかあったらこんな形で言ってくれたらいいから」と言ってくださったのだ
言葉で自分の気持ちを伝えない私は間違っていると思う
高校生にもなって甘やかされていると思う
それなのにみんなと変わらない対応、それでもこれでいいと言ってくださる考慮が嬉しかった
この甘えた形をひとつの進路相談として扱ってもらえてほっとした
今までも話したいとは思っていた
話せるようにならなきゃとも思っていた
その思いが大きくなったのは勿論年齢もあると思う
進学や就職という未来が迫ってきているからこそ放置してはいけないと危機感を抱いたり焦燥感に駆られて今回行動できた部分はあると思う
でもそれだけじゃない
そんなこと今までだってずっとずっと強く思ってきた
今までと違うのは、話したいと思える先生に出会ったこと
今までこの人と話せなくても何とかなるしいいかと心のどこかで思ってた
でも今の私はK先生とちゃんと自分の口で進路等の話ができるようになりたい、みんなと同じように談笑だってしたい
K先生だけでなく3人の養護教諭や教科担当の先生方とも話せるようになりたい。優しい友人に頼ってばかりではなくわからないことを自分の口で聞けるようになりたい。自分だって強くならなくちゃいけない
私の知らない優しさをくれた人と私はお話してみたい