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週末の夢のかけら

 週末にAmazonPrimeVideoをごそごそしていて、ふと目にとまった映画を観た。
 1957年から1965年にかけて録音された、ジャズ・ミューシャンたちのジャムセッションを収めたテープ(合わせるととても長い)と膨大な写真(とても多い)をつかい、ドキュメンタリー映画に仕立て上げたものだった。
 録音と撮影をしたのはユージン・スミスという写真家で、映画のタイトルは『ジャズ・ロフト』。
 場所はマンハッタンの6番街に建つ、がたがたのロフトだった。

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 もと報道写真家をしていたこの人は、あるとき家族をニューヨーク郊外の家に残し、6番街のロフトに越して、ふたりの演奏家と住み始めた。
 ロフトにはだんだんジャズ・ミュージシャンが集まるようになり、ジャズ・ミュージシャンが集まれば演奏が始まり、それの繰り返しはユージン・スミスのオープンリールのテープに吸いこまれ、さまざまの情景と人物がネガに写しとられた。

 映画ではその時代を知る人たちのインタビューも流れ、写真やテープの録音から感じられる雰囲気は、なんといえばいいのか、とにかく好ましいものだった。
 その時代にしか存在しえない時間と空間だろうな、とおもいつつ妙に惹かれるあの感じ。

 このところ色々おもうことがあって、余計にああ、いいなあこういう場所、といった気もちが起こる。

 こういうのは立場によっては迷惑であったり、頭痛のたねであったり、なくなればいいとおもう人だっていただろうし、つまり裏側のことまではこの映画からではよくわからない。

 それでも、映画に観たような空気をもつ場所を自分の手でつくる、そんな人生もいいかもな、などとおもってしまう。それはたぶん、私がチビの頃から両親の店(喫茶店だった)に入り浸っていたせいだろう。
 他の場所(家庭とか、会社とか、学校とか)でどんなふうであっても、その場所ではいろんなことがゆるされるというか、受け入れてもらえるというか、そんな場所。私が子ども時代の多くを過ごしたあの店は、そういう部分をもった店だった。

 世の中にひとつくらい、そういう場所があってもいいじゃないか、そういうことを考えながら映画を観た。

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今日の「風」:やっと朝晩に秋の空気をかすかに感じとられるようになったな、とおもった10月の入り口です。日中はまだ暑いですね。

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片山 緑紗(かたやま つかさ)
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