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聞いた話とまち歩き

 ひとつ前の記事の中でくんちのことをちょろっと書いたんだけど、くんちは諏訪神社の例大祭である。最近、あるところで諏訪神社が話題にのぼったのでぐうぜんの繋がりということにして書いてみる。

 先日父のところを訪ねたら、父の同級生のワタベさん(仮名)が先客で出迎えてくれた。けっこう久しぶりだったから、元気そうな姿をみて気もちがゆるんだ。
 父はマガジン用の記事を書いたと言って、記事にしたレコードやジャズの話をし始めていた。それに合の手を入れる感じで、ワタベさんが昔あったジャズ喫茶(バーかも)の名前を出すなどして、ちょっと話が盛り上がり、その流れで当時のそのあたりの古い町並みについて、ちょこちょこっと教えてくれた。ワタベさんはそういうことに詳しい。
 現在寺町という町名をもつ、寺がたくさん並んでいる地区があって、ずっと前は、諏訪神社がこのひとつ東側の通りにあったというところから始まった。そこが諏訪町という町名なのはその名残なのらしい。
 この町には磨屋とぎや小学校というのがあったけれど、1997年に3校の統廃合で諏訪小学校となり、校舎は磨屋小学校の跡地に2000年に新築された。他の2校は勝山小学校と新興善小学校で、つまり3校とも名称は消えている(もめないようにかな)。

 こんな話の他に、シシトキ川という細く流れる川の「シシトキ」というのは、猪を捌いて洗っていたことに由来するのだとか、その川は暗渠になっているところもあるから知らない人が多いけれど思案橋方面まで流れている川なんだとか、そういう話が出てきた。もっといろいろ聞きたかったけれど、仕事に戻らなくてはならなかったのが残念だった。事務所に戻りながら、Kさんがくれた長崎の古地図復元図(江戸時代)の本を開こうと考えていた。
 その本の地図によると、現在の諏訪町の一部が磨屋町で、磨屋は旧町名となってしまい、町名としてはもう残っていない。
 だいたいいつもぼんやり歩いている町並みを、古い視点と重ねて歩いてみるのも気分が変わっていい。
 諏訪町でおつまみ屋(自家焙煎のピーナッツがおいしい)をやっているMNさんも、父の店で会うごとに昔の話なんかをよく聞かせてくれたのを思いだす。ああいう場所がなくなって、そんなこともずいぶん減ってしまったんだ。ちなみにMNさんの店は現在改装中で、だから買い物にも会いにも行けない(しくしく)。

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長崎観音に見降ろされてみる

 先週、中町や筑後町といったあたりを巡回する仕事があった。古地図で見られる19世紀ごろには存在してあった福済寺という寺には、とても大きな観音像がある。西坂の丘なんかからもよく見えるから、遠目に見たことはあったけれど近くまで行くのは初めてだった。観音様が亀の上に立っているのを間近に見た。
 寺の裏手にある墓地への階段をあがって港の方向に目をやったけれど、視線はほとんどビルなどの建造物に遮られてしまっていたのにはがっかりした。西坂から見渡してみたときもそうだった。
 この日の午前中には本原という、先日ちょっと書いたかつての浦上村あたりなんかも歩き回った。曇っていて、じめじめしていて、歩き回るのに最適とはいいがたい日だった。
 記事に書いた、十字架山という丘にのぼって(汗びしゃ)、そこから金比羅山を向いて撮ったのが下の画像。山の裾にあたるところに寺が見えるのだけど、この寺は以前は筑後町にあったらしい。古地図を見るとちゃんと記載があって、ほんとだ! とわくわくした。

十字架山から金比羅山方面

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 そういえば父の店の最後の場所(2度の移動があった)の賑町にぎわいまちの景色も、ずいぶん変わってしまった。くんちの踊町のひとつだし、ひとつ向こうの通りは築町つきまちという鮮魚市場があって昔の賑わいはすごかったらしいが、現在は人通りが多いとは言えず、お茶ひいてる店が多い(ように見える)。
 賑町の崖下には古い建物も多かったけれど、その一部にあたる土地というのが、戦後の混乱に乗じて取ったもん勝ちみたいな所有になっていたとかで、ある時期(2016年ごろ)にそのあたりの建物が一掃されてしまった。知人のお母さんがやっていた、昔風情の美容院なんかもあったんだったなあ。
 あと築町は鮮魚の他に蒲鉾屋がたくさんある町だったけど、私が知っている期間でもふたつの屋号が商売をやめてしまっている。そのうちひとつは揚げたばかりのを指さしでも買える、気軽なおいしい店だったんだけど。

 父の店で過ごしたような常連さんたちとの他愛のない時間も、あの場所の周辺にあった景色も、時の流れとともに変化してしまった。

 ひとりでもくもくと古地図や文献をあたるだけじゃなくて、昔を知る人にいろいろと教わったり、知識をもった人と話すなどすると、ちょっとしたことだけれども楽しいなとおもった。

 トップ画像は賑町「大漁万祝恵美須船」の手ぬぐい。

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片山 緑紗(かたやま つかさ)
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