4月下旬の日常的風景-久賀島と福江島-
仕事の用で、久賀島に行ってきた。五島列島のいちばん大きな島である福江島の、北西に位置する島である。
昨年9月以来である。ちょっとした事情で急に行く必要が出てきて、連休に入ってしまう前にと急いで手配した。レンタカーが空いていてよかった、と胸をなでおろした。天気もわるくなさそうである。
今回は日帰りで、だけど福江と久賀をつなぐ定期船がドック中だったから、移動の時間にすき間ができた。業務上の用事を終えたあとに、久賀島内をのんびり車でまわり、福江島で帰りの高速船まで散歩して時間をつぶした。
久賀島は人口が少ない。2024年現在、300人をきっていると聞いた。島には信号機がひとつしかないし、小型の電気自動車であっても充分なほど道はどこもすいている。
五輪という地区をあとにして、どこへ行こうか少し迷った。馬蹄みたいな形をした島の、北西の端まで行ってみることにした。
ちなみに、この島にはカフェなどの飲食店はひとつもない。
五輪からだと40分ほどの距離にある、今回訪ねた地区は細石流といって、古い教会跡地がある。これまで久賀島には10回は足を運んでいるとおもうけれども、その場所は未訪問だった。
帰りの船までに往復してくるのに、時間がぎりぎりだったから、その教会跡地の詳しい場所は調べなかった。たしか、わりと困難で時間がかかると聞いた記憶があった。
地図に従って車を走らせ、「細石流」と書いた立て札がたつ、入り江に着いた。景色がきれいだとも聞いていたけれど、あいにくの曇り空である。大きな岩があった。
細石流に着くまでには、いくつも田んぼを見た。久賀島は水がきれいで、米づくりがおこなわれている。久賀島産のその米は、小粒でおいしい。
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久賀島に日帰りで行こうとすると、まず長崎から高速船で福江島に行き、定期船に乗り換えることになる。朝一便のその乗り継ぎ時間は、5分間しかない。長崎を出るのが早朝だし、久賀島には飲食店だけでなくスーパーマーケット的な店もないため、昼食などは準備しなくてはならない。
しかし、私はいつものクセでこれを怠った。昼を食べないくらい、なんでもない。
だけどまあ、喉は乾くし、朝から動き通しだったし、福江に着いたら座りたいなとおもっていた。福江港ターミナルには喫茶兼食堂みたいな店がひとつある。帰りの高速船までそこで足腰を休めるつもりでいた。
船がついて、ひと通り売店をのぞいて(かわり映えはしない)、その喫茶兼食堂のある2階にあがって私は腰を抜かしそうになった。空っぽだったのである。
「・・・・・。」という心もちでまた1階に降り、待合に並んだ椅子に一度は座ったものの、あまり落ち着かない。乗船までに1時間ちょっとあるし、散歩に出ることにした。荷物が多いからあまり遠くまでは行きたくない。
福江港ターミナルの周辺には、食堂やスーパーマーケットはいくらかあるものの、喫茶に適した店はあまりない。この日の私の気力で行ける範囲には、あるホテルの1階ラウンジのカフェか、島っぽい屋号のカフェがあった。ホテルのカフェは、可もなく不可もない感じのところで、この日は見合わせたい気ぶんだった。島っぽカフェは、五島のキャラクター(のぬいぐるみ)が椅子に座ってるのが外から見えて、やめにした。
そのすぐそばに、城がある。石田城(福江城)である。
広場の公園で少し写真を撮り、敷地内に入ってみた。いっしゅん、資料館に入ろうかな、ともおもったけれどやめにして、そのまま進むと神社があった。はじめてだったので、参拝した。
何度も来たことのある福江島で、この城跡の敷地内に入ったのははじめてだった。神社があるのもはじめて知った。
どうして今まで入らなかったのかというと、お濠がにおうからである。春でも夏でも秋でも冬でも、季節を問わず、におう。これまでにも何度か、入ってみようかな、とおもいつつ、このにおいにめげて回れ右をしてしまうのであった。今回は、少しがまんしたから神社を見つけた。
そろそろ乗船時間だな、とおもい、てくてく港にむかい、おみやげ(ちゃんここ)を購入して目をあげると、待合は人でいっぱいだった。
また来月、行くことになるとおもう。