読書感想文 『テロルの原点 安田善次郎暗殺』
この本は、最近暗い時代になったとか、何か日本は悪い方向に向かっているのではないか、と不安に思う人にとって多くの示唆を与えてくれる。
なぜならこの本に描かれる人物「朝日平吾」こそ日本の行く先を憂い行動を起こした人物だからである。大正、昭和期の一定の人々にとって彼は英雄であった。他方で現代においては彼こそが戦前、戦中日本の暗黒期を招いた元凶だとする人もいる。少なくとも戦前において「朝日平吾」とは一つの課題であったし、多くの知識人がそれに取り組んだ。この本の著者中島岳志は半ばロマン