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勉強の「つまらなさ」を吹っ飛ばせ!学び方を自分でつくる”オーダーメイド勉強法”ワークショップ

「生徒が授業を”受ける”だけではなく、自分の力で学びを”つくる”面白さを知ってほしい」

そんな想いから、2万7000人もの生徒が所属する、N高等学校・S高等学校にて「ジュギョつく!〜サイコーの授業をつくろう〜」プロジェクトが実施されました。

ワークショップデザインを学んだ高校生がチームとなり、中等部の生徒へ向けて、生徒が主体的に学びに向き合える授業の企画・実践を行います。授業のデザインを通して「学び方を学ぶ」こと目指しています。

株式会社MIMIGURIのワークショップ型授業づくりの専門性をもつゲスト講師として、私もプロジェクトに伴走させていただきました。

紹介してもらったスライド

この記事では、プロジェクトの中で約800名のN高生に行った”オーダーメイド勉強法ワークショップ”についてご紹介します!


”オーダーメイド勉強法”が生まれたきっかけ

”オーダーメイド勉強法”とは、言葉の通り自分に合った勉強法を、自分の力でつくり出す活動です。

この活動を考えたのは、教員採用の試験に向けて勉強していた時のふとした違和感がきっかけでした。

その違和感は、教員志望の学生たちが、「つまらない、やりたくない、めんどくさい」と言いながら、教員採用試験の勉強に取り組んでいたことでした。(自分も含めて)

「なぜ、学びの面白さを伝えていくはずの私たちが、”つまらないまま”勉強しているんだろう?」

と、疑問を感じたわけです。

まるでそこには、”勉強”はある程度我慢して”つまらないまま”向き合うものだという、勉強への”つまらな信仰”があるようにすらも感じました。

例えば、つまらないままでも割り切って勉強できる人が、勉強が得意になり、もし先生になったとして……。そんな我慢強い先生が、生徒に善かれと思って、ある程度の我慢を前提に勉強を強いてしまう。

その結果、勉強はつまらないけどやらなければならないという”つまらな信仰”サイクルが回り、時に親も子親供に善かれと思って加担しながら、社会全体で維持されてしまう……なんてこともあるのかもしれません。

自分が”つまらない”と思うことを”つまらないまま”我慢して向き合うのをやめて、生徒に合わせて授業をつくるように、自分が少しでも取り組みやすくなる”学び方”自体を工夫はできないだろうか?

「自分が”面白い”と思える教材(勉強法自体)を自分でつくってみよう!」

そうして生まれたのが”オーダーメイド勉強法”でした。


私のオーダーメイド勉強法紹介

そんなわけで早速、自分による、自分のためだけの、自分専用教材制作が始まりました。

大学生の当時、教育実習をしていた際は約40名の生徒誰にとっても学びやすい授業をつくる必要がありましたが、今回の対象者は自分ひとりでいいわけです。

自分のことは自分が一番知っているので、自分が一番楽しめる授業をつくるつもりで、いろんな勉強法が生まれていきました。

実際に私が教員採用試験対策につくった勉強法を一部紹介します。

画家モンスター勉強法「ガカモン」

教員採用試験の専門教養(美術)に向けて、画家や芸術の歴史を楽しく覚えるためにつくった勉強法「ガカモン」。
専用の図鑑フォーマットを作成して、絵画表現の特徴や画家の情報をもとにキャラクターをつくっていきます。
ガカモンキャラをつくって図鑑が溜まっていくのが嬉しくて、図書館で冒険するような気持ちで学びを深めることができました。

教科系アイドル育成プロジェクト

教員採用試験の教職教養の勉強対策としてつくった「教科系アイドル育成プロジェクト」
公教育は約10年に一度のサイクルで、学習指導要領と呼ばれる教育方針が更新されます。
その流れを理解するために、各教科をアイドルに見立てて、学習指導要領の改訂ごとに変動する授業時間数を人気投票に見立て教科をランキング化。
そのランキングの票の変動を元に、自分がアイドルプロデューサーとして社会的背景を分析する勉強法です。

今でも学習指導要領の改訂の年号と、それに伴う社会的背景はかなり頭に入っているので、自分によく合った勉強法だったんだな〜と思います。

他には、私は”笑い”や”ときめき”があると覚えやすかったので、教育学者・心理学者と出会う学園ラブコメものを考えてみたり……。

つまらないまま学ぶことを我慢して受け入れないで、自分にとっての学び方をどんどんつくっていくようにになりました。

(ちなみにそんなこんなで教員採用試験は無事通りました)

オーダーメイド勉強法をつくってみよう!

ここまで、かなり私独自の勉強法を紹介させてもらいました。
このオーダーメイド勉強法を、誰でも気軽に実践できるようにつくったのが今回のワークショップです。

ワークショップの目的は、
「本当は好きになりたい…!」と思う教科に、楽しく向き合いやすくなる勉強法をつくることです。

自分が「つまらない」と思うことを「つまらないまま」向き合わないで、自分が少しでも前向きに取り組める方法を探していきます。

多重知能理論を通して、自分の知能分析する

先ほど私が紹介した「ガカモン」や「教科系アイドル」の勉強法はあくまで一例で、私に特化した勉強法です。
私は幼い頃から、絵を描くことが好きで、苦にならなかったので、それを活かしながら勉強法をつくりました。

ただ机に座って学ぶだけでなく、音楽が好きなら歌うように勉強すればいいし、体を動かすことが好きなら、遠いゴミ箱に覚えた英単語書き出して、丸めてシュートしながら学んでもいいはずです。

学び方は誰に規定づけられることなく、もっと自由で謳歌してもいい。
学び方を味わい楽しめる、オーダーメイドの勉強法をつくるために、まず自分自身を知るワークを行いました。

自分のことを知る手段として、ワークショップでは、ハワード・ガードナー多重知能理論(Multiple Intelligence)をもとに、自分がいったいどの認知特性が優れているのかをアンケートを通して自己分析しました。

↑多重知能理論分析シート
※この多重知能分析シートは、私がオランダにイエナ・プラン教育を学びに行った際に、いただいた多重知能分析アンケートをもとに、高校生も答えやすいように少しアレンジして作成したものです。

学校で「頭が良い」と評価される人は、言語的スキルや数学的なスキルと紐付けられやすい傾向にあります。多重知能理論では、知能を多元的なものとして考え、運動が得意なことや、絵が描けること、コミュニケーションが得意なことなども同等に優れた知能として考えます。

私が多重知能理論で好きなところは、優れているのか・優れていないかで判断するのではなく、一人ひとりが優れている前提に立ち、どのように優れているのかを分析できる点です。

ワークショップに参加してくれた高校生に事前にアンケートに回答してもらい、参加者全員が自分がどのように優れているのかをデータを通して把握しました。

そして、各知能傾向のおすすめ勉強法を紹介しながら、自分の優れている点や、自分の好きなことや趣味を活かして勉強法をつくっていきます。
つくった勉強法はチーム内で紹介し合い、ブラッシュアップしていきました。

アイデアやヒントが欲しいときに、ランダムでキーワードと組み合わせられる遊びの”キーワードプール”も用意。意外なキーワードと結びつけながら、自分がやりたいと思える方法をつくっていきます。

みんなのオーダーメイド勉強法

実際に高校生のみんなはどのような勉強法を生み出したのでしょうか…??
一部ご紹介します。

イケメン生物勉強法

生物の自己紹介ラップをつくりながら、学ぶ勉強法です。
歌詞を書くように学べるのが魅力的です。
なかなか覚えられないことでも、歌うように覚えれば身につきやすいこと間違いなしですね!
仲のよい友達とラップバトルしても楽しそうです。

アウトプット重視勉強法

Chat-GPTを活用した勉強法です。
学んだことに対する「質問」を考えることによって学びを深めていきます。
何かわからないことがあってAIに尋ねるのではなく、自分の理解を深めていくためにAIに尋ねる使い方が素敵です。
気軽に”誰か”と一緒に学びを深めたいときに、Chat-GPTは非常に心強いパートナーになりますね。

歴史創作キャラソン集

歴史上の人物を現世に転生させたり、歴史上の人物を自分なりに創作を踏まえて考えて学びを深めていく勉強法です。
イメージソングをつくるのも方法に含まれているのが面白いです。
自分なりの創作を通して学びを深められる勉強法です。

英単語で身体を表現しろ!コア記憶法

ジェスチャーを通して体を動かしながら、英単語を覚えていく勉強法です。
頭だけでなく、身体も使うことで、より身体的に学びを深めることができそうです。
身体を動かすことが好きな人には非常に相性のよい勉強法でしょう。

これらの多様な勉強法を、本来好きな教科ではなく、苦手で向き合いづらい教科で考えられたことが大切だと思います。

巷にはたくさんの”勉強法”があふれていますが、そのほとんどは、効率よくすぐにできるようになることを目的にした方法が多いように感じます。

「勉強で使うペンの色は3色までがいい」とか
「一冊の問題集をひたすらやり込め」とか
「25分勉強したら5分休んで30分サイクルを回す」とか…。

これらは提示された領域をいかに早く身につけていくかには特化していますが、勉強に向き合う人の想いや感情はどこか抑圧され、置き去りになっているようにも感じます。

”オーダーメイド勉強法”は脳の知能特性をいかしながら、心を置いてけぼりにしない学び方を自分で生み出します。
勉強はあくまで人生を豊かにするためにあるものです。そんな勉強が心を抑圧し殺すことになってしまったら元も子もありません。

「勉強がきらい!つらい!でもやらなければいけない!嫌だけどやるんだ!将来のために」と自分を抑圧し、追い詰めてしまう方が、少しでも自身の感情や想いを肯定して自分で守っていくことに繋がれば嬉しいです。

”つまらない”とどう向き合う?

”オーダーメイド勉強法”ワークショップは、生徒がチームで授業を実施するためのはじめの一歩として、まず自分自身に向けた”学び”をつくれるよう設計しました。

学びの「おもしろさ」や「つまらなさ」を教員に依存せず、自分で開拓できる点がこのワークショップの良さだと考えます。

日本中の教員のすべての授業が、すべての生徒にとって魅力溢れるものになるのは理想的ですが、非現実的です。
あなたが自分にとっての学び方を”つくる力”を身につけられれば、「良い教員との出会い」という不確実性を超えて、あなたが自分自身の人生を切り開く良きパートナーになっていけるかと思います。


また、「つまらない」と感じることに、「つまらないまま」無理して向き合うことは多くのエネルギーを使います。
一番もったいないと感じるのは、本当にやりたいことに使いたいエネルギーすらも消化してしまうことです。

これは、学校教育に限らず、企業コンサルを通じて感じる課題でもあります。

本来やりたくない仕事だけど、お金のために無理をして、つまらないままやっていくうちに、自分が本来やりたいことをやるエネルギーさえも奪われていってしまう。そんな社会人も少なくありません。

自分に合わないものを、合わない状態で、そのまま頑張って取り組もうするのではなく、自分に何が合うのかを知り、自分が無理しないで向きあえる”やり方”をつくる方法を学ぶ。

「変えてもいいんだ。自分は自由なのだ」と気づく。

そうすることで、これから先の人生どうしても
「やらなければならないこと」「苦手だと感じさせられてしまったこと」
に出会ったときに、無力感に苛まれず、すこしでもポジティブな気持ちで向き合えることにつながりますし、やりたいことにも全力で力を注げることができます。


”オーダーメイド勉強法”は自分の力で自分の人生を楽しく変えていく、そのささやかな一歩にもつながってほしいと願っています。



おまけ
今後ワークショップに参加してなくても、記事を読むだけで、オーダーメイド勉強法を気軽に体験できるnoteマガジンをつくっていきたいと企画しています。
もしご興味のある方いましたら読んでもらえると嬉しいです!お楽しみに!

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夏川真里奈
最後まで読んでいただきありがとうございます。 いただいたチップは、夏川の活動エンジンとして大切に使わせてもらいます!がんばるぞ!