マガジンのカバー画像

小説

8
創作
運営しているクリエイター

#短篇

水平線へ

 友人を乗せた小さなボートが沖に出て見えなくなってしばらくが経った。太陽が僕の背後から海を照らし、波をきらきらと輝かせている。
「どう、快調?」
 僕は堤防に坐って足をぶらぶらと海に投げ出しながら電話で友人と話している。
「快調快調、まったく問題なし、波も高くない」
 電話からはギコギコとボートがきしむ音が幽かに聴こえる。堤防に波が当たって、引く、当たって、引く。それがくり返されている。亀の手がめ

もっとみる