相手を思った言葉かけが、人間関係を壊してしまう理由と対策
今日は声がけ、あるいは言葉がけのときに注意すべきことということでお話をしていきます。実はこの内容は90分にわたってお話をして、評判がよかったものなんですね。僕は「サブリミナル酒場」という名前のYouTubeライブを月に1回やっています。
基本的には毎月の最終週の火曜日、21時からやっています。塚田さんという方をナビゲーターにおむかえして。「サブリミナル酒場」という名前がついていますからね。お酒を飲みながら無意識介入型の会話とか、あるいは無意識の中でおこっていることみたいなことを中心に、毎月いろんな角度から、いろんな軸で無意識に関わることをお話してる。そんなチャンネルです。
その先日のテーマが「声がけ」ということでした。今、声がけに関する本が爆発的に売れているということもあって、相手のためを思って、「それはやめた方がいいと思うよ」とか、「がんばって!」と声がけをしていく。
相手のことを思っているのに、なんかそれがずれていって人間関係がおかしくなっていくことがあるんでしょうね。今日は、放送でとても反響がよかったところをお伝えしたいと思います。
テーマは2つでした。1つめは「声がけをする前の自分の心のセッティング」。このお話は長くなっていまうので、今日は2つめの「相手の心にちゃんと届く言葉がけの方法」をお伝えします。正確にいうと「気をつけたい言葉がけ」がありまして、これに気をつけた方がいいですよというものです。
そのうちの1番目が「がんばってね」というやつです。いかがですか? この言葉がけをされて「『がんばってね』って具体的に何をどうがんばればいいの?」とか「いや『がんばってね!』って、がんばっているよ。今もう僕・私、がんばっているよ。これ以上がんばれっていうの?」とか「『がんばってね』ってなにその他人行儀な感じ。なにその放りなげられた感じ」とか。そういうような感想をチャットでいただきました。
僕も経験があります。どうですか? あなた経験ないですか? 何か自分が「やってくるよ!」みたいなときに「がんばってね!」。「えぇ……」みたいな。「おまえ、それか〜?」、みたいな。
でも言っている方の人間としては、本当に心からがんばってほしいと思っているわけじゃないですか。その相手に対してネガティブなつもりがあって言っているわけじゃないですよね。あるいは、その人に対して悪い印象を植えつけようとか、悪い印象をもたれようとして言っているわけじゃないですよね。このギャップ返りが結構激しいのが「がんばってね」、あるいは「がんばってください」という言葉だと思うんですね。
では、この「がんばってね」「がんばってください」のかわりになんて言えばいいでしょうか。あなただったらなんて言うかをちょっと考えてみてください。
そのあいだにもう1つのNGワードをお話をしていこうと思います。それは「前に言ったよね」というこれですね。よく上司が部下に言ったりとかしがちなやつですよね。あるいは仲のいいパートナーシップとかね。あるいは、お母さんが子供にとかっていうので「前に言ったじゃん!」「前に言ったよね」とつい言ってしまう。つい言ってしまうって、僕がつい言ってしまうっていうのでお話をしてしまったんですが。
ないですか? みなさんにも。「前にも言ったよね」と言ってしまった経験。あるいは言われた経験。そのときにすごく嫌な感じがしたんじゃないですかね? 言われた方は。でもいう方は「つい言ってしまった」みたいなことがあると思うんですよ。これもNGワードですね。言っちゃダメですね、言葉がけのときに。
さて「がんばってね」と言うかわりに、なんて言うか。「前にも言ったよね?」と言うかわりに、なんと言うか。考えていただいたと思います。
僕だったらこう言う、というお話をしていこうと思うんですが、それは「アイメッセージ」というものです。「アイメッセージ」「ユーメッセージ」という言い方があるんですね。これはアメリカの心理学者のトーマス・ゴードン博士という方が提唱されたメソッドです。
「親業」という本をゴードン博士が書かれているんですね。「親業」の「おや」は「parents」の「親」です。その中に「アイメッセージ」「ユーメッセージ」という言い方が出てきます。
どういうことかというと、「あなた」を主語にして言うのが「ユーメッセージ」、「わたし」を主語にして言うのが「アイメッセージ」ということです。ユーメッセージで言われると人は「非難されている」とか「命令されている」と感じます。
「がんばってね」は「あなたががんばれ」ということですよね。ちょっと突き放された感じ。ちょっと命令されている感じがどうしてもしてしまうというのは、ユーメッセージになっているからです。
「前にも言ったよね?」は、一見「わたしは前にも言ったよね」になっているんですが、この意味としては「あなたはそれを覚えていないのか」という意味ですよね。「わたしは前にも言ったよね」ではなくて、その意味としては「あなたは忘れてしまっているのか」という意味じゃないですか。
なので、これもちょっと角度が少し変化球的になっているのですが、言っていることとしてはユーメッセージなんですね。
さきほども言いましたけれども、ユーメッセージというのは冷たく聞こえたり、あるいは非難されているように聞こえたり、あるいは線があるように聞こえたりするんです。
これをアイメッセージに変えていくと、あたりがやわらかくなる。相手に対して言葉が入りやすくなるんですね。「がんばってください」「あなたががんばれ」ではなくて、「わたしは」にすると「わたしは応援をしています」ということになりますよね。だから「がんばってください」と言うかわりに、「応援しています」と言った方がいいわけですよ。
「ちょっと大変な試験があるので、ここ1週間ぐらい寝ずにやらなきゃいけない」、「がんばってください」ではなくて「寝ずにやらなきゃいけない? すごいですね、応援しています! 何もできないけれど、応援だけはしています!」の方が気持ちは伝わるっていうことです。
じゃあ「前にも言ったよね」はどうかというと、「わたしが確認したいんですが」と言っていくわけですよね。「前にも言ったよね、これ。なんで同じことをくり返すの?」というかわりに「まず最初に確認させて。これって前に言ったことなかったっけ?」と言っていくわけです。そうすると、確認したいのは「わたし」になってくるので、同じ内容でも聞き方、あたり方が全然変わってくると思うんですよ。
そのようなところで、声がけというものをしていくうえにおいて「わたしは」と、アイメッセージで伝えていくっていうのが、相手にとってとても耳触りのいいものになってくる。
つい言っちゃいますよね。でもユーメッセージで「ゴミ捨ててきて」。これ「あなたがゴミを捨てる」ということじゃないですか。そうじゃないんですよね。アイメッセージにするとどうですか? そうです。「ゴミ、捨ててきてくれると嬉しいんだけれど」みたいな感じになりますよね。これはぜひぜひ使ってみてください。
使い方としては「僕は」とか「私は」と最初に言っちゃうっていうのがコツですね。何か「やってほしいな」と思ったことがあるときに「おまえがやれ」ではなくて、お願いの形をとっていたとしても「私は」「僕は」にする。
「僕はなんとかしてくれるとうれしい」「僕はなんとかしてくれると安心する」みたいに言っていただけるといいのではないかと思います。