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嫌われる人ほど人に関わりたがる話

1.プロローグ

 それは最近のこと。
 弟と休みが合ったので一緒に過ごすことにした。
 デパ地下で酒と総菜を買った後、家まで歩いていった。
 弟とは久しぶりに酒を飲むのでとても楽しみだ。

2.歩いている最中、弟から衝撃の話を聞く

 あともう少しで弟の家にたどり着くというところで、私は衝撃的な話を聞いた。
 それは祖父の話である。
 祖父はフェイスブックをしており、叔父さんがログインして投稿を覗いてみたそうだ。
 その投稿には亡き祖母の死に顔、棺に入れられたときの顔の写真があったそうな。

3.祖父の奇行

「えっ? そうなの。それって大丈夫だった? 炎上しなかった?」
と私は驚く。
 過去にSNSでは死者の顔の写真を投稿して炎上した話があるのだ。
 それは赤ちゃんを亡くした女性があかちゃんの遺体の写真をSNSに投稿して炎上したというものだ。
 神経がわからない話として私も実際にその投稿をタイムラインで見たものだが、なんとも言えない気持ちだった。

「炎上はしなかったよ。でも爺さん、おばあちゃんの威厳を借りて仲良くしたいのではと思うと嫌な気持ちになってね」
と弟の発言を聞いて思い出したことがある。
 そういえば、昔こういうことあったんだよと弟に話した。
 その出来事は弟も現場にいたのだが、あまり覚えてなかった話だ。

4.昔の話

 夏休み、私と弟は祖父母の家に泊まっており、その日の朝は祖父と近所の公園に散歩をしに行った。
 その際、子供でも遊べるゴルフ用のおもちゃを持参していた。
 祖父がご近所の人、おばさんに挨拶をしたのだがおばさんは顔をしかめて祖父に苦言した。
「公園で禁止されている遊びをお孫さんにやらせているのですか?」
と。

 家に帰った後、祖父は怒りながら祖母に愚痴る。
「あいさつしたのにいちゃもんつけてきた」
と。
「あなたが普段から奇行しているからだめなんでしょう」
と祖母はたしなめた。

 祖父母とは別居していたから普段の様子はわからない。
 でも、祖父は元々奇行を繰り返す人だったから何かしら問題を起こしていたに違いない。
 あの時のご近所のおばさんが祖父に苦言を呈したのも普段の行いが表に現れたからだろうと思う。
 人間関係が良好かどうかは普段の積み重ねの結果だと私は考えているから、そう感じた。

5.祖母が亡くなったときの話

 祖母の死に顔の話からそういえばと弟が思い出す。

「おばあちゃんが一旦病院から家に帰って、葬儀会場へと運ばれたときあったじゃん。その時ご近所の人たちが集まって見送ってくれたのよね」
「ああ、そういう話があったらしいな」
 祖母は愛想がよいというか、様々な人から慕われていた。
 明るくて太陽のような人であり、常にあらゆる人と仲良しだったらしい。

「もしかして母さんたちがご近所さんに知らせたのかな? 出棺というか葬儀場に行く時間」
「いろいろな人に連絡したんじゃない? おばあちゃんが亡くなったという知らせは」
 あらゆることがあって祖母の見送りに来てくれたのだろう。
 もし祖母が性格の悪い人ならこういうことはされなかったと思う。
 そう思うと、人柄の良さは亡くなってからも出てくるものなんだと感じた。

6.祖父は実は山奥で暮らす方がよかったのでは?

 祖母は常識的な方だった。
 それに対して祖父は非常識な人だった。
 人に嫌われることを常にしていて、悪いとは思ってないほどやばい人だったと思う。

  •  お正月、ホームレスからもらった酒をみんなで振る舞おうとした

  •  ベランダやあらゆるところに使用済みのおむつを放置した

  •  ネットワークビジネスにハマリ、知り合いにも勧誘して知り合いの家族から恨まれた

など、様々なことをしていた。
 本当、私たちとの感覚とはずれていることをしていて、祖父=頭おかしいという認識が広まったのだ。

「おじいちゃんって、本当に私たちとずれているよね。考え方とか価値観とか。正直、おじいちゃんは山奥でヒッピーして暮らしていった方が幸せだったのかなと思うよ」
「確かにね、俺もそう思う」
と結論。
 祖父が祖母の死に顔の写真をSNSに公開するのはなんとなく予想できた。
 昔からああいう人だ。
 もう、あの人はある意味サイコパスだったんだろう。

7.嫌われる人も寂しがり屋?

「そういえば、うちの定食屋に来るお隣の雀荘のおばあちゃんも普段から人に嫌われる行動ばかりしているけれど、積極的にあらゆる人と関わってくるんだよね」
「もしかして嫌われる人ほど人に構いたくなるってことなのかな?」
 みんなに好かれる人には理由がある。
 その反面、みんなに嫌われる人にも理由がある。

「正直、人に嫌われたくないならそれなりに常識とか倫理とか持てばいいのにね」
「確かにね。爺さんも良識があれば、みんな普通に関わるだろうに」
 祖母が亡くなってから数年後、祖父は老人ホームに入った。
 ちょうどコロナが流行していたこともあって、しばらくは面会できないし、外出も不可。

 あれから私は祖父に一度も会ってない。
 もしかしたら次会う時は祖父が骨になってからかもしれない。
 それでいいと思う。
 祖父には二度と会う気もないし、葬式にも参加したくないほど嫌いだ。
 それが祖父にとって当然の因果応報だと思うと、心がすっとした。

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