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翻訳家・戸田奈津子(1936-)氏の主張と「コーエン兄弟&山松ゆうきち」の作風
◆『ビッグ・リボウスキ』(1998/米+英/The Big Lebowski) 極私的◎傑作
Behind The Subtitles 戸田奈津子 字幕翻訳者
_ネガティブな言い方で恐縮だが、翻訳というものは、どんなに頑張っても100%正確に置き替えるということは、ほとんど不可能である。_逆を考えれば、容易に理解していただけるだろう。たとえば「お前さん」という呼び方。英語に訳せばYOUだが、これは「あなた」で、「お前さん」という、言うに言われぬニュアンスを表現しているとは思えない。_そこで「デュード」である。我がごひいき、ジェフ・ブリッジス扮するぐうたら男は、ジェフ・リボウスキという立派な名前がありながら、呼び名は「デュード」(Dude)。このDudeに翻訳者は泣く。字幕では、冒頭でとりあえず「カッコいい男」というルビをふったが、これでもDudeという呼び方が持つ言うに言われぬニュアンスは、とても表現しきれない。「カッコいい男」cool guyとdudeは全然違うのである。_dudeはちょいと品が悪い。ヤバい。お上品なサークルの連中はまず口にしない言葉だが、でもカッコいいイメージがある。だから、このぐうたら男は「デュード」と呼ばれることに誇りを持ち、「ミスター・リボウスキ」などと呼ばれると「おれはデュードだ」と口をとがらせて、こだわる。_誘拐事件が思わぬ方向に転がり始め、デュードがあたふたすると、相棒のウォルター(ジョン・グッドマン)はひと言、こう諫める。“Calm down. You’re very un-Dude.”「落ち着け。デュードらしからんぞ」 翻訳不可能! この映画には、こういうお手あげ表現がゴマンとあるのだ。
VHSビデオのジャケット写真
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https://www.buyuru.com/item_758083_3.html
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「ウォルター」は映画監督のジョン・ミリアス(1944-)がモデルのようだ。
検索してたら出て来た中国語版?の『ビッグ・リボウスキ』。何か面白い。
なんだか「漫画家・山松ゆうきち(1948-)の世界」に見えてくるジャケ写。
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意外と、日本で『ビッグ・リボウスキ』に近い、「湿り気の無い喜劇のような悲劇/悲劇のような喜劇」を表現してるのは山松ゆうきちかもしれない。
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「コーエン兄弟」も「山松ゆうきち」も、基本的には「いちびり」ちゃう?
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