キヤノンイーグルス初心者観戦記☆プレーオフトーナメント2回戦〜《希望》への旅は続く〜
1.宣言下の東京で
その日はそろそろと家を出た。
4月23日、東京都に緊急事態宣言が発令されていた。期間はこの日4月25日から。政府は『スポーツの試合は原則無観客で行う』ことを関係各団体に要請していた。
ただ、急な発令であったこともあり、25日は有観客で試合を行えることになった。
これがシーズン最後の観戦になるかも。
家を出たラグビーファンほぼ全員がそう覚悟しているはずだ。
私と夫が向かう先、『行きたかった』のは
江戸川区陸上競技場
NTTコミュニケーションズシャイニングアークスvsキヤノンイーグルス
しかし、なんとJRFU抽選を2回外した上、今まで外したことのないイーグルスファンクラブの抽選まで外してしまった。
席数を5000に制限しているとはいえ、イーグルスの人気はうなぎのぼりだ。
序盤の3連敗から見事な3連勝。BK陣が走りぬく攻撃スタイル、その鮮やかな勝ちっぷりは試合ごとに磨き抜かれている。ファンの注目度は増すばかりだ。
私はこの日夫と秩父宮に向かっていた。後日トヨタvs日野のチケットを入手できたのだ。イーグルスの試合観戦、経過と結果は、日野の北川選手の晴れ姿に涙しながらも、SpoLiveで『応援ポチポチ』を連打しながら追った。試合の詳細は、後日テレビ録画で知ることになる。
2.前半〜ただでは終わらない〜
注目はSO対決だった。
イーグルスの田村さんは絶好調、当然日本代表候補に選出、対するシャイニングアークスの前田土芽選手はまだ24歳、しかし今回JAPAN候補にも選出された注目の期待株だ。
両チームとも『走る』のが看板のチームだが、何しろ今のイーグルスは『超走る』。この破壊的BK陣をシャイニングアークスがどれだけ止められるか、そこが見所だった。テレビにはシャイニングアークスのレイドロー選手が映っていた。貫禄の立ち姿。
試合が始まった。
先制はイーグルス。
スクラムから鮮やかな連携、一気に南橋選手が走る。連携は加速して最後はファンダイク選手が余裕でトライ。もちろん田村さんはキックを決める。
イーグルス、いつもの勝ちパターン。
この後、乱れ撃ちのようにトライを量産するのが最近のイーグルス。しかし、
プレーオフトーナメントはそう簡単にはいかなかった。
スクラムでのイーグルスの反則、すかさずレイドロー選手がPGを決める。
この日の江戸川陸上競技場は、風向きを変えながら強く風が吹いている。
スコットランドも風が強いですから、慣れていると思いますから
解説の砂村さんうまいことを言う。夏でも曇りがちなスコットランド。レイドロー選手、この日差しでもキツくないか。
お互い、レフリーを巻き込みながら駆け引きしますよね
SHの仕事は多い。
レイドロー選手は絶妙なフリーキックを見せる。視野が広いのだろう。空いたスペースが見えている。
といっても、すぐに田村さんもキックでお返ししたが。
要するに世界レベルとはこういうことか。
シャイニングアークスの前田選手、この若きSOは自らボールに絡む。SOとしては珍しいことらしい。そしてジャッカル成功!
そしてレイドロー選手はすかさずPGを決める。
7ー6
アタックのキヤノン、ディフェンスのNTTコム、砂村さんの先程仰った構図になってきましたね。
アナウンサーの言葉通り、イーグルスは貪欲に前に出る。懸命に守るシャイニングアークス、そして
ノット・リリース・ザ・ボール
狙い澄ましたように入りましたね
ここまでは、拮抗している。
ボールがよく動きますよね
早い。もう20分経っていた。
ここで、マフィ選手を起点にイーグルスはグイグイと加速、攻勢を強めるが、しかしノックオン。
ここでテレビはイーグルス沢木敬介監督を映した。
ライトネイビーのジャケット&パンツに白いTシャツ。
J Sportsの特番でも着用する沢木さんの『制服』だ。あえてチームスーツを着ない、というところにこだわりがあるのだろうか。
淡々とマイクに指示を出す。少し痩せただろうか。
この時、田村さんがグラウンド上で多少傷んでいたが、すぐに立ち上がった。
角度を変えたり、ワイドに振ったり、キヤノンのアタックはバリエーション持ってますよね。
その司令塔、怪我などしてはいられない。
この後、シャイニングアークスボールをマフィ選手が奪取!そしてこのまま左方向へパスは繋がり、最後はマレー選手が余裕で中央にトライ!
マフィ選手は奪取の後必ず前進してくれるから、BK陣はさぞ助かるだろう。
砂村さんによると、マレー選手の前にボールを持っていたクリエル選手が、技ありのランでシャイニングアークス前田選手をかわし、これが効いてトライまで至ったようだ。
たしかに、フワッと前田選手を押し退けるように一瞬タイミングをずらしている。
連携の力であり、個の力であり、イーグルスはいつのまにか破壊的な攻撃力を身につけている。
ここでプレーは止まった。TMO判定の際、レフリーが流れを見ているうちに《別の問題点》が見つかり、それまで検討しなくてはならなくなったのだ。最近よくある事らしい。
結局そのままトライは認められた。TMOは、時にレフリーの負担を増やしてしまう。
14ー6
キャノンはまたもチャンスを掴む。
それにしても
今日は両チームとも、やけにエキサイトしている。
相当激しいディフェンス、コンタクトしてますので、その後の小競り合いがありますね。
両キャプテンはレフリーから注意を受けている。
敵陣でイーグルスラインアウト、しかし競ってシャイニングアークスがボールを取る。
相当研究していますね
シャイニングアークスは必死のディフェンスを続ける。ここからは暫くボールの奪取合戦になった。
この間マフィ選手は要所でボールに絡み、イーグルス攻撃の起点となった。
今日のラインアウト成功率は、ここまで(前半33分)
イーグルス5/8、シャイニングアークス4/5
という意外な結果が示された。
お互いよく研究しているのと、呼吸が合っていないのとありますが、、
クリーンキャッチしてからのサインプレーがないですね
砂村さんの指摘はいつも端的だ。
風が強くまっすぐ投げにくいようだ。 どうも今日の鍵は『風』らしい。
なんとなくこの時間帯は大味な試合になっている。
イーグルスはマイボールラインアウトからモールで押しこもうとするが、ここもシャイニングアークスが粘りを見せ、イーグルスのペナルティー。自陣ながら、シャイニングアークスボールのスクラムとなった。
ここでトライ一つ取りたいですね
砂村さんのコメントはよくわかる。点差は僅かに8点。
時計は37分。
しかし、ここでシャイニングアークス前田選手に続けてミスが出る。ボンド選手のキックの回転が読めずノックオン。イーグルスまたもチャンス!
敵陣でイーグルスボールのスクラム
前半終了のホーンが鳴った。
ここでクリエル選手がスルスルっと抜け出す。そしてトライ!
クリエルのマークをしているのが1番だったので勝負しましたね、完全なミスマッチを狙って
一瞬早くパスをした田村選手、砂村さんによるとここが好判断だった。そして、自分の前にいるのがFW(1番)とわかり瞬時に勝負に出たクリエル選手。
判断とスキルの高さ。このトライはスターの共演だった。
19ー6
キックは失敗、ここで前半終了。
少ないチャンスを生かしたのがキャノンですね
ここまで見て、この後イーグルスが逆転される姿は想像できない。
シャイニングアークスは良く守った。しかしそれだけでは点数は増えない。前半終了間際のトライは、とにかく痛かった。
レッドカンファレンス4位とホワイトカンファレンス5位の試合
ではあるが、すでに『役者の違い』を実感させる流れになっていた。
この後どうなるのか、と、その勝負そのものにワクワクできたファンはこの時いたのだろうか。
3、後半〜『本領』発揮〜
前半のペナルティー数はイーグルス6、シャイニングアークスは4。しかしほとんどシャイニングアークス陣内での攻防だったので、点数的にはこういう結果となったようだ。
キックオフのボールで、いきなりシャイニングアークスがノックオン、敵陣深くいきなりイーグルスがチャンスを迎える。
それにしても、田村さんのパスは変幻自在だ。巧みにスピードを、リズムを変えていく。攻撃は常に変化に富む。
イーグルスの攻撃バリエーションはこの人のレベルの高さで成り立っているのか。つい、田村さんに目が行く。
早速PG成功
22ー6
その後、シャイニングアークスのスクラムからの攻撃、敵陣でゴールラインは近い。間髪入れず密集に飛び込み打開を図るシャイニングアークス。
レフリーと見解は違いますが、世界的には、偶発的現象でも手が首にかかったらペナルティーですが、、
レフリーのジャッジを味方につけることもこういう一発勝負の世界では大事になる。
モールを起点に攻めるシャイニングアークス、前に出る。ここでイーグルスのペナルティー。シャイニングアークスボールのスクラム。ゴールラインは近い。そこから
前田選手、飛び込んでトライ❗️マフィ選手のディフェンスより一瞬早くボールは地面に届いていた。
この日初めて見た前田土芽選手。『マエダ ドガ』というお名前。ご両親は印象派絵画のファンなのか⁈
今年はオフサイドの判定が厳しい、との事。シャイニングアークスのオフサイドで、すかさずイーグルスは敵陣深く入っていく。ラインアウトからボールを受けたマフィ選手は敵を跳ね除けながら前進、そのパワーはいつも規格外だ。
イーグルスはボールを持って前進を繰り返す。マフィ選手がボールを持つとそこにディフェンス意識が集中する。物理的にも人が集まるのだろうか。マフィ選手がボールを離した後、程なくカーク選手がトライ。
27ー13
再び14点差。そして田村選手がゴールを決める。
そして、SH荒井選手に代えてフミさんがでてきた。《ここ》で、《フミさん》だ。勝ちゲームを作る上で、フミさんの存在はあまりに大きい。戦術的にも、精神的にも。
ガラッと雰囲気を変えられる選手なので、どういった動きをするか楽しみですね。
沢木さんになってからボールを非常に動かすようになって、最近は動かすのが流行りですよね。それだけチームができてきたな、という感じがしますが、試合ごとにだんだん良くなってますね。
砂村さんは、時流に沿ったスタイルの沢木イーグルスが、試合ごとにその精度を増していることを評価されていた。
あと20分、16点差。
ここで、シャイニングアークスはメンバーを4人代えてきた。疲労はピーク、ここが勝負時。
イーグルスは再び攻撃を仕掛ける。田村さんがボールを持つと、何をしてくるかわからない面白さがある。
そしてマフィ選手は倒れない。
この時、ワンテンポ外したフミさんのパスを田村さんは取りきれなかった。ノックオン。
膠着した状態ですと、こうしたワンテンポずらすのは大事で、それができるのは素晴らしいですね
残りは10分。
ここでレイドロー選手が下がった。
シャイニングアークスはここで久々にチャンスが訪れる。しかしノックオン。そしてイーグルスは逆襲。突破力があるイーグルスにシャイニングアークスはディフェンスが間に合わない。マレー選手は余裕のトライ。
個人技に長けてるバックスがいるのが強いですね。
砂村さんはこう言葉を続ける。まさにおっしゃる通り。
1人でなんとかしちゃいますからね。
もちろん、田村さんのキックも成功。
テレビが映した沢木監督は両手で膝を抱えて戦況をみている。
36ー13
時間はあと3分、しかしイーグルスにはチャンスが続く。イーグルスボールのスクラム、そして
呆気ないほどスムーズにボールは味方の手と手を経由して、最後はホセア・サウマキ選手がトライ。田村さんのキックも成功。
43ー13
そして同時にノーサイド。
敗れたシャイニングアークス前田選手はしばらく立てなかった。泣いていた。SO対決、今日は田村さんの勝ちだった。
金正奎主将も泣いていた。
客席で揺れるイーグルスのタオルマフラー🧣。赤く染まったスタンドに、イーグルスの選手達は晴れやかな顔で手を振っていた。
マフィ選手がかつての仲間達と抱き合っていた。
金正奎主将とは、互いに泣きながら抱き合っていた。そのまましばらく、2人は動かなかった。
* * *
イーグルスは勝った。
誰も驚かなかった。当然であり、必然であると思うばかりで。
開幕はわずか2ヶ月前のことだった。今目の前のイーグルスは、
自信と誇らしさに満ちていた。
後日、キヤノンイーグルス公式ホームページに掲載された沢木監督のコメントは、今日の確かな手応えと、今日までのチーム作りへの苦心がうかがえた。
前半はなかなか自分たちのペースになりませんでしたが、選手たちが対応してゲームをコントロールできたことがいい結果につながりました。「毎週毎週、試合を重ねるたびに成長できている」という感覚を全員が持って1週間を過ごすことができています。(NTTコムから移籍してきた)No.8アマナキ・レレイ・マフィについては、見てのとおりのパフォーマンスで、チームに勢いを与えてくれました。一方で、試合に出られないメンバーもチームの力になろうという思いが根付いてきています。チーム一体で、次の試合に向けていい準備をしたいと思います。
準々決勝の相手は
パナソニックワイルドナイツ
この最強にして最強のチーム。完封された第3節とは全く違う姿でイーグルスは挑む。
この試合、絶対に面白い。
〜あとがき〜
初心者観戦記を書き始めてはや八回目。あまりにも速くチームが変貌する姿を目の当たりにして、ただただ驚くばかりです。
チームをここまでコントロールできた沢木監督の手腕は言うまでもありません。
それと同時に
沢木さんの描く地図を信じて、全力で《勝負》という《荒海》をここまで乗り越えてきた選手スタッフの皆さんに、賞賛の拍手を贈らずにはいられません。
この《航海》はまだ続きます。
【パナソニックワイルドナイツ】という荒れ狂う嵐の中へ。
5月8日、熊谷ラグビー場で、この嵐に打ち勝てるか。
勝てば《希望》という名の海が、目の前に輝いているはず。
《希望の海》へ
ファンは全力でその帆に《赤い風》を送ります。
【イーグルス生観戦の観戦記はこちら💁♀️】
vsリコーブラックラムズ戦
vsNTTドコモレッドハリケーンズ戦
開幕前沢木監督へのエールです💁♀️