楽しく2人でラグビー観戦するために〜《秩父宮 言葉多くて 愛壊れ》
(この記事は、ラグビートップリーグ2021開幕前に書いた『ラグビーとジェンダー』シリーズの記事を加筆訂正したものです🙇♀️)
1.ここで愛は生まれ、愛は壊れ
東京ディズニーリゾート
ここは、男女の愛が生まれる場所であり、愛を育む場所であり、そして
愛が壊れる場所でもある。
なぜ、朝6時半に舞浜に着かなければならないのか
なぜ、開門と同時にファストパスを取るため広すぎる園内を『インディー』まで全力で走らなくてはいけないのか。
なぜ、たかがポップコーンや『浮き輪まん』のために長時間並ばなくてはならないのか。
ディズニーの織りなす夢の世界に取り立てて興味のない男にとって、ディズニーで課される彼氏のノルマは果てしなく重い。少しでも間違えると、
『次のファストパスまで1時間半もあるけど、どうする?スタンバイで並ぶ?でも『タワテラ』2時間待ちだし、『海底2万マイル』はつまんないし。』
などと彼女の不機嫌はMAXに。愛の予感が漂い始める夕暮れ時まで間が持たなくなる。
2.デートの鬼門 秩父宮ラグビー場
愛が壊れやすいデートスポットが東京にもある。
地下鉄銀座線外苑前駅から徒歩5分、秩父宮ラグビー場。
ここもまた、愛が生まれ、愛が壊れるほろ苦い空間だ。
あれはいつの試合だったか。私の後ろには1組のカップルが座っていた。
ラグビー大好きな彼氏とW杯2019日本大会までラグビーに縁のなかった彼女。
おそらく、W杯すらほとんど見ていなかった彼女は、あの《松島幸太朗様》のことさえよくわかっていなかった。
試合が始まった。
ラグビーは、超ざっくりいえば、敵陣のゴールポストが立っているあの白いラインから奥に、ボールを持って選手が飛び込み地面にボールを付けば得点が入る。
反則をすると、その程度に沿ったペナルティーがある。点が入る時もある。
ボールを前に投げちゃいけない。前に落としてもダメ。
とりあえず、とりあえずこれだけの事だ。これだけ気にする、あとは思い切って無視。
しかし、男はなぜか我慢できない。よせばいいのに、各ポジションの説明から長々と始め、15番まで終わる頃には彼女は欠伸をしている。
こういう彼女に、スクラムでの駆け引きとか、密集での攻防、ラインアウトのサインプレーなんて説明しちゃいけない。
『あの反則、ややこしいから。とにかく次サントリーボールね。』
『ボール抱きしめたままだと反則だから、まあ、とにかくヤマハボールになったから』
と、攻守の交代だけ教えればいい。
『ラグビーのルール、よくわかんない!』と彼女のほっぺがふくれたら、
『みんなわからないって。大丈夫。トライすればいいだけだから』とニコニコすればいい。
秩父宮は、笑顔が多く口数少ない男の方がカッコいい。
湧き上がる嫉妬心は胸に収めつつ
『ほら、あそこにいるのはヤマハ15番五郎丸だよ。あのサントリー9番の流くんは日本代表だよ。あそこのサントリー10番の田村は代表の田村優の弟だよ。兄弟でイケメンだろ。』と日本代表を中心にイケメン系の選手をピックアップして彼女に教えてあげれば、彼女はとりあえず試合に集中する。
エンタメの世界、顔面偏差値は正義だ。
『ひかるくんはどこ?』と彼女が田村選手を名前呼びして夢中になりだしても、ニコニコして『あそこにいるよ』と教えてあげる。大人の男にならねば。
そしてハーフタイム、女性にはかなり短い時間なので要注意。お手洗いは試合開始前に必ず済ませるように言わないと、絶対に後半に間に合わない。
『意外と面白いでしょ。ルールわからなくても』
試合の展開に関わらず、明るくラグビーの分かりやすさと面白さをアピールして、事前にスタバで買ったコーヒーと軽いおやつでも食べればよい。大行列の売店に並ぶのは彼女を怒らせるだけなのでやめた方がいい。並んでいるうちに後半が始まる。
座席なんて後方で良い。というか、後方の方がいい。晴れていれば抜けるような青空の下で、遠く緑の芝を眺めながら、2人は心地よく過ごすことができる。ここで間違っても前半のおさらいなんかしちゃいけない。
前後半40分はあっという間だ。ただサッカーと違い『0対0』という試合はないから、必ず得点シーンがあって盛り上がる。そこを一緒に盛り上がって、あとは彼女のペースで声援を控えめに送ればよい。
初心者の昔に帰り そして明るく 口数少なく
男性には最も難しいテクニックだが、これを心がけないと、夕暮れ時の外苑前駅で2人は無言になる。
あの2人、彼の口が饒舌になればなるほど、彼女は無口になっていった。その後どうなったのだろう。
男性の皆様、秩父宮は彼女に『ラグビーを教える』ところではありません。彼女とラグビーの醸し出す『雰囲気を楽しむ』場所です🙇♀️
楽しみながら回を重ね、いつのまにか彼女が『ねえ、今のブルーレヴズのスクラムは』などと言い出すまで、気長に待ちましょう。