ヤマハ発動機ジュビロ初心者観戦記☆第5節〜原点までの距離〜
1.見るべきか見ざるべきか
この1週間、ラグビーが嫌いになりそうだった。
ヤマハ対キヤノン ヤマハ唯一のホーム《ヤマハスタジアム》での試合。
そのあまりに残酷な結果に、心がついていかなかった。
【負けに不思議の負けなし】
故野村克也さんの言葉通り、この結果の主たる原因はヤマハにあった。
それを受けての神戸製鋼戦
苦戦は免れない。
ここで、ヤマハは試される。
強みを強みに戻せるか
この日、私は秩父宮にいた。
『事務機ダービー』リコー対キヤノン。
共にヤマハを破っている。前半の間延びした展開をみながら、
『ヤマハはなぜ負けたのか』
と思い、後半の緊迫した展開を見ながら
『ヤマハには何かが足りない、大事な何かが。』
とボンヤリ考えていた。
ヤマハの試合の結果は銀座線の中で知った。
その日録画を見る気には到底なれなかった。第5節終了時点で2勝3敗、ため息ばかりがでた。
翌日重い気持ちでビデオの電源を入れた。
人間とは不思議なものだ。
しばらく見ていたら、画面にTシャツ姿の
【憧れのタッキーさん】 こと堀川隆延ヤマハGM兼監督が現れた。
俄然力が湧いてくる。タッキーさんのチームの試合、見るに決まってるじゃないか!
2.前半
危惧していた通り、セットプレーはうまくいかず、そこから失点を重ねた。日野さんの不在は痛すぎる。
もちろん、レタリック選手など規格外身長の選手が揃う神戸製鋼なので、ラインアウトでボールの投げどころがない、と言えばないけれど。
スクラムは前半若手で凌いで、という慎さんの計画だったのか。想像以上にスクラムは瓦解してしまった。若手に神戸製鋼はキツい。
セットプレー、特にラインアウト失敗からの失点。
それ以上に、攻め込みながら得点できない決定力の欠如、これが問題だった。もちろん神戸製鋼の防御は鉄壁だが、どうにもリズムが単調で、フィジカルで無理やり突破、ということもない。
そうなのだ。
リズムがない、力強さがない。
前半は一方的に神戸製鋼が得点した。
27-3
テレビは『眉間にシワを寄せる慎さん』を何度も映していた。
相変わらず、何かが空回りしている。
3.後半
開始早々、トライのチャンスを逃す。スピードに乗り切れない攻撃が招いたものか。神戸製鋼の防御のスピードを褒めるべきか。
平川選手、あとほんの一瞬の差だった。
石塚選手のトライはTMOで認められたもののかなり危なかった。
ここでヤマハはようやくスピードアップした。
やっと覚醒か!と思ったがそうはいかなかった。
ゴールライン近くまで来てボールを奪い返した神戸製鋼は、恐ろしいスピードでボールを回し、あっという間にヤマハ陣内ゴールライン寸前まで到達、一度はクワッガ・スミス選手が捕まえたものの、最後はレタリック選手が余裕でゴールラインを超えた。
攻撃と防御、この《切り替えの遅さ》も今季のヤマハでよく見られたシーンだ。
この直後の神戸製鋼のトライも、クワッガ・スミス選手のパスを味方が取り損ねたことから始まった。浮いたボールをヘイデン・パーカー選手がキャッチ、そこから一気に形勢は逆転、美しく華麗な『the神鋼』のパス回しを見せつけられた。
41-10
しかも、この間中島イシレリ選手はシンビンで退場していた。
簡単に持ってきます!立て続けにこの時間トライを取ってきます!
実況アナウンサーが繰り返した。この直後もあっという間に神鋼はトライを決めてしまったのだ。村上晃一さんも、ベン・スミス選手の妙技にため息をつくほどだった。
48-10
いわゆるスクラムとかラインアウトからではなくて、アンストラクチャーという整っていない状態から個々の判断で取ってくるんですよね
村上さんの指摘は端的だった。
しかしこの直後、ヤマハはトライを返す。
つくづく思う。
加速しつつリズムを変えながら、かつコースも考えながらパスを繋げる難しさ
トライを決めたクワッガ・スミス選手に至るまでのパスの連携には、空気を切るような勢いがあった。こうでなければ!
48-17
しばらく試合は膠着、残り10分を切った。
ここでヤマハ陣内で神戸製鋼ボールのスクラム。再びピンチだ!
TVは再び慎さんを映し出した。左側に見切れた形で、タッキーさんの横顔があった。厳しい目で形勢を見つめていた。
前半の中盤以降、このスクラムは劣勢に回っていますから
アナウンサーの言葉がヤマハの苦境をそのまま映していた。スクラムで押したものの巧みにボールを出した神戸製鋼は簡単にトライを決めた。
53-17
この後、ヤマハはマイボールスクラムでアドバンテージを得ながら神戸製鋼陣内に攻め込む。そして余裕を持って中井選手がトライ!
やはり、この形なのだろう。ヤマハのスクラム第一列は全員交代していた。
ヤマハはセンターラインで再びマイボールスクラム、押し勝ってアドバンテージをえながら速いパス回しを続けた。
『後半はこのスクラム改善されてきましたね。』『負けた試合でも、後半は追い込んでいくことが多いんですよね。』
村上さんはアナウンサーの言葉を受けて、ヤマハの今季をこう表現していた。
80分間のホーンが鳴り、トライ寸前まで行くも認められずそのままノーサイド
53-22 完敗だった。
ヤマハ今季全部そうなんですよね。負けてる試合も最後はいい流れを作っていくので、最後相手が疲れてきた時にできる、ってことはフィットネスが高いっていう事なんですけど、ただやっぱりそれを最初からできない、というのは、課題なんですよね。
村上晃一さんの言葉は、ヤマハファンのみならずラグビーファン全員の心の嘆き、いや叫びだった。
ヤマハよ、最初から『ヤマハ』であってくれ‼️
ヤマハ発動機ジュビロ公式HPが掲載したタッキーさんの試合後コメントは、なにか含みを持たせた言葉が続いた。
経験値の浅い選手たちが、チャンピオンチームと対峙してプレッシャーのかかる中、
多くのことを学ぶことができたと思いますので、このような経験を活かして、
これからの成長につなげてほしいと思います。
前節以上に自分たちのスタイルでラグビーをやることの重要性を認識できたと思います。
残り2戦、自分たちのスタイルをやり切ることにこだわって、
日々成長していきたいと思います。
次節は、ペレナラ、マピンピ選手の加入で生まれ変わったNTTドコモ戦。
【必勝】
強い気持ちが言外にあらわれていた。
〜あとがき〜
スクラム6/10、ラインアウト5/9
神戸製鋼はそれぞれ8/9、5/5
この結果を見ただけで、ヤマハの不調と神戸製鋼の強さが分かります。
どんな状況でもそれぞれの判断でチャンスを作っていける
神戸製鋼の【圧倒的な攻撃力】というアナウンサーの表現を受けて村上さんの返した言葉は、トップリーグが飛躍的にレベルアップしている現状を端的に表していると感じます。
これをサッカー元日本代表本田圭佑のいう【個の力】と解するとすれば、ヤマハは、FW陣という【個】を強みにしてきました。
スクラムジュビロを改めて読み返すと、今年はそれに【BK陣のプラスアルファ】があったはずでしたが、今節までうまく機能していません。
しかし、リーグ戦終了後にはトーナメント戦が控えています。今のままではいきなり強敵に当たる可能性がありますが、【その日】に何かが覚醒する、そう期待しています。
ヤマハ選手たちの一途で真剣な眼差し。大差をつけられた中プレーに打ち込む彼らを見つめていると、なにか日常にはない崇高なものを見ている気がします。
見てよかった。観戦記を書く度にそう思います。負けた試合であってもヤマハの選手は私に元気をくれる大切な存在あり、スポーツの魅力とは、単なる勝敗ではないことを実感しています。
タッキーさん、監督としてお辛い状況が続いていますが、お体くれぐれも大切に。応援しています。端正な横顔に1週間分の元気もいただきました。 Tシャツもよくお似合いです。
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