ラグビー大学選手権2021プチ観戦記☆4回戦・慶応義塾vs近畿〜『年越し』の夢を抱いて〜
1.秩父宮に冬が来た
地鳴りの様な音を立てて風が吹き荒れた翌日、東京は、この冬一番の冷え込みとなった。
あの風は何もかも吹き飛ばしたのか。
秩父宮ラグビー場は快晴だった。
早慶戦から3週間、あの銀杏並木も黄色い葉を落として冬支度を始めていた。まだ午前中だというのに、ビルの影がバックスタンド中央まで落ちている。
空の青は、薄い水色から天空に行くほどその色を強め、美しいグラデーションが頭上に広がっていた。
これが、秩父宮の冬なのか。
全国大学ラグビーフットボール選手権大会4回戦
慶應義塾大学vs近畿大学
早明帝京、筑波にも敗れたが、関東対抗戦グループを4位で通過した慶応義塾。
対する近大は、昨年度優勝校天理大学をも撃破、堂々の2位で関西リーグ戦を終えていた。
近畿大学は久々の選手権出場だ。
近大のユニフォームは、筑波よりやや青味がかった青、筑波がスカイブルーなら、こちらはマリンブルーといったところか。
選手が入場してきた。初めに慶応義塾大学
早慶戦では大健闘、ここ1番の勝負強さをみせられるか。
続いて近畿大学
バランスよくしっかり鍛えられた身体に鮮やかな青を纏った青年達は、颯爽と秩父宮に乗り込んできた。
どちらも夢は『年越し』=準決勝進出だという。
1月2日、その夢の舞台は国立競技場、
宿願成就なるか。
試合が始まった。
2.前半〜睨み合い〜
寒かったからか、あるいは風が影響したか。
この日はペナルティーの応酬となった。
開始5分、近大のペナルティが続き、慶応が最初にチャンスを掴む。
敵陣でのラインアウト、慶応はボールを支配できずノックオン
近大ボールのスクラム、平均体重は近大が2キロ重いという。再び慶応ペナルティー。
互いにミスが続き得点のチャンスをモノにできない。
近大はキビキビと気持ちよく動く。晴れ舞台での躍動感が伝わってくる🌟🌟
6分、慶応トライのチャンス🌟しかしエノサ選手のキックパスは味方に通らずトライに至らない😢
再び慶応にチャンスが到来、今度もまたエノサ選手のキックパスは通らない。近大のパワーに対抗するにはこの方法が有効なのだろうか?
ボールの奪い合いで時は過ぎていく。 近大のタックルが
ピシッ❗️❗️
と鋭い音を立てて慶応に何度もヒットした😳😳
はやくも10分が経過した。
慶応は、近大の敵陣へのキック処理にもたつき自らピンチを招く。
近大ボールのスクラム、ゴールラインは目前だ😳😳
立ち合い、ではないが、この日はスクラムの息が合わなかった。
慶応は何度も組んでは、ペナルティーを受けスクラムは繰り返された。
ついにレフリーは、式守伊之助の如くチーム主将を呼び出し注意を与えた。
再びスクラム、今度は近大のペナルティー、慶応は窮地を脱した。
この日は慶応SO中楠くんが終始冷静だった。
キックで陣地を挽回。
エノサ選手が持ち前のパワーで一気に中央まで走り慶應が攻勢に出る。
しかし近大はパワーを活かしてボールを奪い返した。
互いにピンチを抱えながらもなんとか堪えている、そんな時間帯だった。
20分が経過した。
慶応は敵陣に攻め入り、マイボールスクラムのチャンスを得る。
ここで近大のペナルティー😨
慶応はショットを選択した。
中楠くんは確実に決めた🌟🌟
22分 慶応PG成功 0ー3
その後慶応は再び攻勢に出た。慶応エノサくんの突破は強烈だ。4、5人引き連れたまま前進する😳😳
しかしボールを奪われ逆にピンチを招く😨、今度は近大が敵陣深くに入った。
しかしマイボールのラインアウトでボールを慶応に奪取される😨
近大11番宮宗くんが一気に抜け出しゴールラインに迫る。しかし慶応渾身のタックルで見事に止める。
その後慶応は、何度も攻め上がるが、その都度近大は冷静にディフェンス網で仕止めチャンスの芽を摘んだ。
あっという間に30分が経過した。
近大も反撃するが、この日は両校ともパスの乱れが目立った。
近大は、ハイパントのボールを見事キャッチ、
大外左へボールは飛んでいった。しかし、
トライ寸前で慶応はボールを押しとどめた。思わずガッツポーズが出た。
ここで前半終了。
一戦必勝の選手権、両者の鋭い鍔迫り合い、秩父宮はどこか張り詰めた空気に覆われていた。
3.後半〜虎の夢は続く〜
後半早々慶応にチャンスが巡ってきた。
敵陣内に攻め上がり、鋭いパスは後ろから走り込んできた山田くんへ❗️
グラウンドをぶち抜くように、山田くんは一気に走り抜いた🌟🌟🌟
慶応初めてのトライ❗️
中楠くんのCGも成功❗️
0-10
その後しばらく互いに決め手なく時間は経過した。
後半15分になろうとしていた時だった。
近大は攻勢にでる。慶応は自陣ゴールライン手前でペナルティー😨その直後、
電光石火💥💥💥
突然メインスタンド方向右斜め前方へボールが飛んだ。
メインスタンド前方観客席には『死角』がある。転落防止柵があるからだ。
その影から『マリンブルーの戦士』が飛び出してきた😳😳😳😳
キックパスだった❗️飛び出した彼はゴールライン内で見事キャッチ❗️慶応はすかさず反応するも僅かに届かなかった。(下記写真はその直前のもの。突然の出現に驚きすぎて撮影出来ず🥲🥲🥲)
近畿大学この日初めてのトライ🌟🌟🌟🌟
しかしCGは、カーン!という響きをたててポールに当たり跳ね返った。CG失敗。
5-10
その後慶応は反撃、スクラムでペナルティを得て敵陣へ。
試合開始から60分が経過しようとしていた。
慶応はトライを目指すがゴールラインが遠い。
しかし、この時近大にペナルティー😨
慶応はショットを選択した。グラウンド中央やや左か。
中楠くんは冷静にこのチャンスを決めた。
慶応PG成功 5-13
時は過ぎていく。近大は反撃に出た。 7番宮本くん一気に敵陣へ❗️
ゴールラインは近い❗️そして大外左で両校は対峙した。
突き進む近大、押しとどめる慶応、ほぼライン上で激しい攻防が繰り広げられた。
近大がついに均衡を破った。
トライ🌟🌟🌟🌟
10-13 僅か3点差❗️❗️
しかし、角度のある場所からのCGは失敗。
すでに67分、3点差。
ここからは激しいボールの奪い合いとなった。
疲れもあるのか。ボールが手につかずパスミスが目立つ。
あと10分❗️
近大陣内でのスクラム。
この日は、最後までスクラムのタイミングはあわなかった。レフリーは再び注意を与えた。
ここで慶応のペナルティー。近大自陣脱出。
近大は攻めた。
ハイパントを上げて慶応をゆさぶる。
しかし逆に慶應は近大のボールに絡み近大のペナルティー。
慶応の選手達が雄叫びをあげた。
あと5分❗️
近大は攻め続けた。ここで慶応にペナルティー。
あと3分もない。近大どうするのか⁉️
彼らはショットを選択した。決まれば同点、トライ数で上回る近大が勝つのだ。
『52メーター』
ゲスト解説の小林深緑郎さんが低く呟いた。
風は緩やかに吹いていた。
ボールは右にそれた。ゴールポストまで届かなかった。PG失敗。
残りは1分❗️
近大は攻め続けた。ついに敵陣へ。慶応はペナルティーもできない。
80分のホーンが鳴った。
しかし、トライを目指す近大の放った大外左へのパスは、前に飛んで行った。
スローフォワード 近大ペナルティー。
慶応はボールを外に蹴り出した。
ノーサイド
慶応の選手達は次々と大きな雄叫びをあげた。
10-13 3点差。
近大は9大会ぶりの日本選手権出場、久々の秩父宮だった。
『年越し』の夢は破れた。
その場に座り込む選手、悔し涙を流す選手、遠くを見つめる選手、、そのまっすぐな眼差しから流れる涙は切なく、美しかった。
『年越し』へ、夢を繋いだ慶應。
選手達は、一様に柔らかな安堵の笑顔を浮かべていた。
準々決勝、熊谷でリーグ戦グループの王者東海大学に挑む。
相変わらず寒風が頬を刺す午後1時過ぎ、秩父宮の空は、どこまでも青く澄み切っていた。