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野生の島のロズ 感想文
2月8日に見てきました。
当記事にはネタバレが含まれます。ご容赦ください。
きっかけ
予告を映画館で見た時点でうっすら涙腺が死んだので気になってたけども、どうしても見たい、というほどではない、程度の温度感だった作品。
出かけた日にあまりにも時間が余った際にちょうどよく枠があったので予定を挿入。
ちなみに原作は未読です。上記予告で作品の存在を知った、程度
ただ、予告を見たときも、作品を見始めた冒頭でも思った事として、どうしても『ロボ・ロボ』を思い出すな、というのがありました。というのも『輸送中のロボットが嵐で無人島に不時着し、想定外の起動をした』という導入が、ある意味で全く同じだったためです。…これは、それをパクリだの何だのといいたいわけでは、全く無いことはご承知おきくださいね。導入が似てて、思い出したな~というだけの話です。
閑話休題『ロボ・ロボ』について
とはいえ好き作品なので少し触れさせてください。
こちらは、西田シャトナーさん(舞台弱虫ペダルなど演出されてる方)が演出している、全編をロボットマイムで演じる、という舞台作品。
流れ着いたロボットは7体。調理専用・医療専用・力仕事専用・記録専用…など、それぞれが専門とする仕事にのみ適性があるロボット達。機械なりに状況分析した結果、遭難したことを判断し、その解決策として導き出した「発送元の会社へ戻る」ため、お互い指示を出し合い、故障部分を修復・補い合いながら対処していこうとするが…という話です
見に行ったキャスト構成の時のゲネプロ動画が残っていたのでリンクしたんですけど9年前かい、そりゃ記憶もおぼろげだよ。円盤持ってるんで今度見ますね。
あとこれは自慢ですが演出家さんのサイン入り戯曲も持っています。るんるん。
オールマイティに全てをこなせるロボットではない、バッテリーも5時間しか持たない、というある程度の制限が発生している中、機械ながらに必死なロボットたちのお話です。(という記憶)
気になってくれた方、円盤を買おう
映画の感想
概略
そんな上記のロボットたちとは違い、太陽光があればエネルギーを生成できて、こなせる仕事もオールマイティ。そして幸か不幸か漂流した先は無人島とはいえ動物達がおり、ハイスペックであることにより『動物たちの会話』を解読・翻訳、適応できたことで、その後不慮の事故によって巡り合った雛にインプリンティングとして親認定されたロボットが結果的に強いられた子育てを、与えられた仕事と解釈して試行錯誤していく話。
というのが導入。
見始めた冒頭5分の感想は上記の通り『ロボ・ロボ』でしたが、一方で中盤までの感想は『ベイマックス』でした。相手が人間ではなく動物ではあるものの、内容としては機械と生物が寄り添って家族になる感じね、はいはい。っていう。
ただ、ベイマックスはそこから後半、ヒーローものになっていくんですよね。ヒューマンドラマも根底としては描かれるものの主体はそっちじゃない、という認識。一方でロズは、どこまでも『家族と絆』の話であったな、という感じでした。いや、終盤で結構な戦闘はあるといえばあったのだけど。
まず結論でいうと、ずっと泣いてた。もともと自分は涙腺がぶっこわれてて基本的にゆるい、というのもあるので人によるとは思いますが…。こっちは予告動画だけの時点で泣いてんだぞ!!
とはいえ、児童書が原作であること、から、どうしても子供達に訴える『これから望むべき社会的啓蒙』を感じずにはいられない(というかめちゃくちゃ感じる)作品でもありまして…個人的この作品からに感じたこととしては
・親は試行錯誤しながら子育てをするものである(序盤)
・種族が違っても協力し合う事のできる社会は構築できる(後半)
・血はつながってなくても擬似家族という絆の形がある(全編)
あたりかなぁ。2点目なんてだいぶ無茶だよと内心ツッコミが止まらない部分はありましたが……まぁ、そのあたりは児童文学的ファンタジーだからね!という気持ち…。
ここから下は明確にネタバレを込みで語るので、ここでひとまずこれだけいいたいんですが
『デレマスのきらりにめちゃめちゃ見せたい映画だった!!!』が総括です。
すごく頑張ってる可愛いくて大きな女の子のきらりに、同じ名前の、けれど小さく生まれたキラリが、やっぱりとても頑張っている映画を、すごい見てほしいと思ってしまった。何言ってる?
子育ては試行錯誤である
子を成す・親になる覚悟や準備があろうがなかろうが(己自信が生んだ子沢山のピンク尻尾と結果的に親となってしまったロズ)、あらゆる知識があろうがなかろうが(それらを搭載しているロボットでもなお対応しきれない)子育ては試行錯誤、臨機応変の連続だよ~という話。と認識しています。主にキラリが渡りに出るまでの部分。
子育てしたことは一切ないのですが、でもまぁ、準備をしていれば、覚悟をしていれば、知識があれば、こなせるものではなくて、子育てというのは試練の連続だよね、と思いながら見ていました。…まぁ…対人間用のロボットに対して、相手は雁だしなぁ…っていうのはありますが…
だからこそ、鳥に対して、人間のクロールを教え込むミスマッチな部分もありましたしね。ただ、その後飛んでいる鳥をカメラ撮影・解析して飛行のメカニズム分析・レクチャーが出来たんだったら泳ぎも同じことしたれよ、とめちゃめちゃ突っ込みたくなったが…あれは、なんでなん???
途方に暮れることもあるかもだけど、手伝ってくれる人も出てくるよ、というエール的なものも感じもしたかな…。飛び方を教えてくれたサンダーボルトさん。渡りでキラリを認めて自分の班に入れてくれたクビナガさんとか。
ピンクシッポ達が母も子も口にする内容が結構なブラックジョークで好きでした。
種族が違っても協力し合う社会は構築できる
これは主にキラリが渡りに旅立った後、冬ごもり~終盤にかけて。
いつも通りの冬ごもりでは過ごせそうにない極寒の中、草食・肉食・食物連鎖関係なくみんなでロズの家に集まり、身を寄せ合って冬を越そう、という展開。その際に一番恐れられていた熊が「ここにいる間は誰を食べることもしない」と言っていた、そこまでは見ていて許容できたんですよ…。凍死よりは一時停戦だよね、その後はまた食べるだろうけど。と思ったし。
その後島の大火事をなんとか抑えようと動物たちが全員で協力することも許容出来たんですよ…。住処がなくなるほうが一大事だからこの瞬間だけは食物連鎖関係なく全員協力せざるを得なくなるよなぁと思ったし。
ただ、ロズが島を去る際に、「ここで協力できたんだからこれからも協力できる」という展開は、児童書ファンタジーとは言えあまりにも引っかかってしまって飲み込めない部分でした。ごめん。いや、イイハナシダナーだとは思うんですよ。
でも木の実とか草で過ごせる草食動物は良いけど、それらを食べることで生きていける肉食動物はこの後どうするの?草食動物たちが肉食動物に自ら「生きていくためには我々から食料として一部提供すべきですよね」くらいの割り切りが出来ないと後に全滅しない?????最後、ロズが去ったら俺は話ができる友達がいない、としょぼくれた嫌われ者だった狐チャッカリに「俺がいるだろ!」と言ったビーバーも「あいつが去ったら、俺はまたお前を追い回すぞ。…嘘だ」と冗談を言った熊も。
子供達に訴えたい理想の社会像は理解できるけどあんまりにもご都合すぎるだろうが~~~~~!!!!!!と内心暴れていました。
綺麗事の固まりすぎる~~~~~~と暴れている自分が汚い大人過ぎて嫌になる~~~~~~~~。人種国籍関係なくわかりあって協力しあえる社会が構築できたらいいよねという理想論をそこに透かして見てしまて、ここだけずっと飲み込めないでいる。いや、そんな世界作れたら素晴らしいことではあると思うけどさ。
擬似家族という絆の形はある
全編にわたって結局はこれであり、この絆がお出しされるたびに情緒が終わって泣いていた。勿論、これを陳腐だと言うつもりは全く無くて。というかまぁ『絆の物語』なんて、みんな好きでしょ、俺も好き!!!という気持がとても強い。
最終的に〆付近で上記の「食物連鎖関係なしみんな仲良しご都合理想郷」みたいな展開をプラマイプラスで許せたので、結果的に『いい作品だったな』と思っている、という節がある。
事故とは言え親鳥とその卵を割ってしまったロズ
唯一残った卵から生まれ、インプリンティングでロズを親と認識したキラリ
面白半分でからかいに来ただけだったチャッカリ
三者三様、皆血もつながっていなければ種族存在のすべてが違うけれど、それでも離れても消せない絆は構築される。という話ではあった。文字にするとどこまでも陳腐なのが悔しい。こんな陳腐なものではなくてもっとじんわりとしてぐっとくる話だったのに。
島の動物たちからハミダシモノとして孤立していたチャッカリにも「子供に寝物語をする」という認識があった以上、かつては孤独ではなく寝物語をしてくれた存在がいた時期があったのだろうなぁ、と思ってしまうし。まぁ孤独な野宿中に他の動物たち家族のそういう様を垣間見ていたという可能性もあるが…。
面白半分、うまく行けば成長した大きな食事が手に入る、くらいで首を突っ込んだであろうチャッカリが『生き物としての家族の形』を機械以上に知っていたからこそ結果手助けになっていったのは、皮肉だけども大事な鎹だったな。と思ってしまう。その実績があったから、ロズが動物たちを匿った冬、大雪で日照時間も足りずズリープしたロズの代わりに声を上げるチャッカリの言葉に動物たちが耳を傾けたというのもあるんだろうな。
大きくなって流石にロボットは鳥の『親』ではないと認識し始め、その後出生を知ったキラリがロズに「騙してた!」と憤るのも最もだし、言い出せなかったロズのことだって理解できるから見ている側としてはどちらを責めることも出来ない。(まぁ親殺しな部分は事故であっても責める部分ではある)と、みながらなにか締め付けられるものがある中で、キラリがここまで育ててくれた存在に感謝していないわけがない、という感情もきちんと抱いている描写が、見ていてストレスにならなくてとてもスマートだったと思っている。
データ=記憶を消されてもなお、呼びかけられればプログラムではない部分で反応できる、というロゼはまぁ、それはちょっとお綺麗すぎるだろうとは思いますが…物語だものそういうフィクションがあってなんぼではあるんだよな。
活かし方次第で全ては有益になる
これはどうしても一番作中で見てて「アツ!」となった部分だったので触れたいんですが、島一番の大木を倒してやろうと一心不乱に木の幹を削っている変わり者ビーバーがいるんですけれども。ここでずっと削られ続けていた樹が最後活かされるとはかけらも思わなくて「む、無駄がねぇ~~!!!!!」って大喜びしたんですよね。
無意味なことをしていると笑われていたけれど役に立つことはあるわけです。笑っといて手のひらドリルで助けてくれはないだろとは思うけどもまぁ、大事件が発生してるんでそこは目を瞑りましょう。
ただ、この『無駄・欠点・弱点、と思われたものは有益にもできる』っていうのはもっと中盤でもあって、それが小さく生まれてしまった、まともに飛べることもなさそうだと嗤われていたキラリが、(その努力もあるけれど)その小ささを活かして小回りの効く飛び方ができたことで仲間を窮地から救った、というシーンもあるわけで。
まぁ、一方で、クビナガさんが『あぁなった』のはキラリのせいではあるはずなので、渡りから帰ってきた雁たちがキラリを受け入れているのはちょっと違和感だったけれど。事のきっかけを誰も把握理解していないのは不幸中の幸いなんでしょうね。あの部分。
親も兄弟も無事であり、あるべき野生環境のままだったら他の雛達からも成長が離れ、まともに育つことも出来ず弱肉強食に負けていたであろうけれど、ロズの保護があったからこそ成鳥になれた、というのもまた、皮肉ではあるものの「考え方の転換」ではあるよなぁ、と思ってしまう。
長所と短所は言い方を変えただけで同一の特徴であり、すべては考え方次第であるというのは自分の思想の根底にかなり根強くあるもののひとつなので、この要素のこと、とても好きだったな。
ロボットはえっち
ロボットモノとして一番大事じゃない?終盤て回収されぐったりしている瞬間のロズがあんまりにも色気があって「えっち!!!!!!!!!!!!!!!!!」って心のなかで叫んだ。
あと回収に来るクラゲ型ロボットが最高に性癖でした。よろしくお願いします。