USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?②
USJについてみなさんはどういったイメージをもっていますか?今では数えきれない程のキャラクターやストーリーを持ったテーマパークですが、元々は「ハリウッド映画」をコンセプトとして開業していたのです。それなのにもかかわらず「ハローキティ」や「スヌーピー」といったキャラクターも導入されていったため、「ハリウッド映画」におけるコアなファン達から冷めた目で見られ、実際に離れていってしまったゲストも少なくなかったそうです。
しかしこのUSJのコンセプトを大々的に変える前、当時のマーケティング担当である盛岡さんは「映画だけではUSJは大きくなれない」と確信していました。本来テーマパークとは「より多くの人」に「より多くの感動」を届けるものであって、映画にこだわり続けるのは限界があると主張します。当然運営側達からはじめ大批判を受けましたが、正当な根拠と熱い主張によりなんとか「映画の専門店」から「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」と再定義することができたのです。
「ハロウィーン・ホラー・ナイト」の誕生秘話
2011年。10周年記念を迎えるUSJは例年以上の売上が予測されていた上に、当時「ハリーポッターエリア」と「ユニバーサル・ワンダーランド」の開設に何百億とお金を使っていたことから、かなり窮地に追い込まれていました。
「お金を極力使わずに、例年以上にゲストを呼び込む」
これはかなりの責任と不安を抱える条件です。しかしそれだけでは済みませんでした。さらに大きな難関がUSJを襲います。
2011年3月11日。東日本大震災。
関西地方では東北地方に比べれば被害は抑えられたものの、東日本大震災によって国中で「自粛ムード」が生まれました。多くの悲しみが国民を覆う中、当分の間「テーマパークへ遊びに行く」という思考にはならなかったのです。
・10周年を迎える2011年で例年以上の売上ノルマがあること
・新エリアに莫大な投資をしているため限られたお金で集客しなければいけないこと
・東北大震災による「自粛ムード」を打破すること
この条件下であなたが当時のUSJマーケティング担当であった場合どうするでしょうか。私はもうお手上げ状態でパンクする気しかしません。
2011年後半期で例年より2倍以上の集客目標を立てなければUSJは赤字となり経営危機にまで陥ってしまいます。その中で盛岡さんが着目したのが「ハロウィーン」の季節イベントでした。当時のUSJのハロウィーンではそこまで盛り上がりを見せるイベントでなく、ハロウィーンイベントのためにUSJに来るというほどインパクトのあるものではなかったそうです。
ハロウィーンとは本来欧米人にとって非日常です。普段健康に良くないからと食べないジャンクフードを食べまくったり、子供から大人まで仮装して朝まで騒いだり、子供はよそのお家でお菓子を求めるなど、はっちゃけることができる貴重な日なのです。学生達は夜な夜なみんなで集まっていけないことをしちゃうなんてこともざらにあるくらい大抵のことが許されてしまう日なのです。
普段から外見や振る舞いを重視されやすい日本人にとってこの非日常なイベントは絶対ウケるはずだと盛岡さんは確信していました。特に人の目を気にしなければいけない風潮にある女性にとって、ジャンプして騒げることも発狂することも許される空間になってほしいという思いから、
「USJの全エリアにたくさんのゾンビを解き放とう」
と前代未聞のアイデアを生み出します。それもゾンビにはクオリティにこだわった化粧とコスチュームによって、海外にも通ずる盛大なハロウィーンナイトを実現させようと考えたのです。
人件費を使うくらいでそこまで多くのお金もかけず、インパクトも強いため多くのゲストを惹きつけるイベントとして斬新なアイデアとなりました。その年のハロウィーン期間で7万人のゲストを呼び込むことを目標としていましたが、結果的に14万人のゲストを迎えるという凄まじい記録を打ち出したのです。
今となってはUSJの大人気イベントとして知られる「ハロウィーン・ホラー・ナイト」ですが、こういった苦境をひっくり返すために生み出された画期的なイベントだったのです。まさに大逆転劇ですね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。次回も引き続き盛岡 毅(2014)『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』について投稿していきます。
追記))
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ここからの記事では、森岡 毅(2014)『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』 を参考に書いていきます。本の内容を通して一緒に考える時間を過ごしましょう。
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