グローバルのコミュニティマネージャーがもつ課題感とその先 | グローバル最大規模のコミュニティカンファレンス「CMX Summit 2024」出展レポート
こんにちは、あらゆる組織とひとを融け合わせたいCommuneの橋本です。
2024年4月末に米国で開催されたグローバル最大規模のコミュニティカンファレンス「CMX Summit 2024」にCommuneとしてブースを出展し、CEOの高田と私で参加いたしました。
グローバルのコミュニティマネージャーとの対話およびプレゼンテーションからの学びを共有いたします!
CMX Summit とは?
2014年から毎年米国で開催している、コミュニティマネジメント分野に特化した、グローバルのイベント。世界最大規模でありほぼ唯一のカンファレンス
企業や組織がコミュニティを構築し、活性化させるための最新のトレンドやベストプラクティスを相互に学ぶためのプレゼンテーションやネットワーキング機会を提供
例年800名ほどが参加し、9割近くが何らかのコミュニティ関連業務従事者(以下公式の許可のもと掲載)
公式発表によると、今回の参加者は465名。例年10月の開催だが、今年から4月開催にした変化もあり、参加者が少ないとのこと。参加者の内訳は後述
なぜCommuneは参戦し、何をしたのか
背景
以下を目的にブースを初出展
グローバルの潜在顧客との対話機会を創出し、ニーズをより深く把握することで、サービス訴求、プロダクト開発の深化につなげる
グローバルの商談パイプラインの構築
コミュニティマネジメント、コミュニティマーケティングのグローバル動向を捉え、顧客、関係者、市場に還元する
短期の商談機会をにらみつつも、グローバルのコミュニティ従事者とオフラインで対話し、彼らの現在地や悩みを理解するとともに、中期につながるネットワーキング(要は、仲良くなる✨)を重要視。
実施したこと
会場に設置されるネットワーキングテント内の一画にCommuneのブースを出展
CEOの高田と私、私たちに投資くださっているDNX Ventures のUSオフィスの2人にも助力いただきブースを運営
テントスペースには10個もの「コミュニティプラットフォーム」ベンダーのブースが並ぶため(且つ、我々以外すべて数年以上北米市場で運営されており、それなりに知られている)、引っ掛かりがないと「そもそも興味がなく、立ち寄ってもらえない」あるいは、立ち寄ってもらっても「おみやげだけ渡すことになり、話す機会をつくれない」ことが容易に予想されたため、敢えて一目で違いを生む「文化的ユニークさ」をアピールした上で、そこに私たちが伝えたい価値を重ねるように設計
「あなたのFirst nameをJapanese Calligraphy (=漢字です)で書いてプレゼントするよ!」というのをキャッチにしつつ、話す機会を創出
「Human, after all.」というコンセプトのもと、コミュニティサクセスは、ツールをただ使えばよい話ではなく、そこにコミュニティマネジメントの「生きた知見を一緒に実践するパートナーが必要」であり、「私たちが並走するよ」というコアのメッセージを設定
贔屓目にみても、会場内で最も盛況なブースであり、結果として累計150名(関係者除くと全体が400名超なので、35%近くの参加者)とコミュニケーションをとることを達成
(開場前のまだ落ち着いている様子)
参加者とのコミュニケーションを通じての学び💡
前提として、ブースをメインにコミュニケーションをとれた方々の属性情報は下記(N≒150)
国
北米から(西海岸が7割)が全体の約80%
残りはヨーロッパ7%、南米5%、アジアで5%、アフリカ3%
(アジアはインドのみ)
所属企業の属性
B2B: 76%、B2C: 24%であり、B2Bの場合にはIT分野がほぼ。
B2Cの場合には、IT分野、消費財、教育、非営利の順に多いという構成
役職
Community関連が約50%(以下内訳)
Community Manager系が46%
Chapter Director/Community Leaders系が21%
地域ごとのコミュニティチャプターやグループの運営、ローカルイベントの企画・運営担当など
Specialized Community Rolesが17%
特定のコミュニティ関連業務(例えば、Community Events Program ManagerやCommunity analyst、Community Coordinatorなど)
Head/Director of Community系が16%
経営関連(FounderやCEO、CXOなど)が37%
前日にStartup Grindというスタートアップ向けのイベントが同じ会場であったこともあり、やや割合多め
その他(MarketerやPdM、Designerなど)が13%
明示的にコミュニティ関連の役職をつけていないくても、何らかの形でコミュニティに携わっており、自社のコミュニティに限らず、個人やNPOを含めた複数のコミュニティに所属、運営する方がほとんど
会話をした~30%ほどは、現状オフラインイベントのみ、あるいは汎用的なコミュニケーションプラットフォーム(SlackやFacebook group、Discordなど)を利用しており、コミュニティマネジメントに特化したコミュニティプラットフォームの利用を検討している層が一定数いる状態(弊社にとってはポジティブ)
汎用的な製品への不満としてあげている点は下記(要点は日本と変わらないが、ユーザー数が拡大が早く、課題が早期に顕在化しやすい)
スタートはしやすいが、人数の拡大にともない、ユーザー属性やアクティビティデータに基づいた最適なセグメンテーションおよびそれに伴うコンテンツ、ユーザーマッチングができない
フィード上のフローのコミュニケーションはできるが、様々な用途を実行するには無理がある(ストック型コンテンツやイベント運営、Q&A、LMSなど)
データアクセスが限定的且つ自社データとの接合の実現性も不十分なため、コミュニティのデータの外部活用がすすまない
ユーザーが日常的に触れているプロダクトではあるが、その分そのプロダクトの中でユーザーが複数のWorkplaceやGroupに所属しており、埋没しがち(Slackの所属Workplaceアイコンが縦にずら〜っと並ぶのは珍しい光景ではない)
(特にSlackでは)人数増加/コミュニティ活性化に伴い、有料化にしないと機能制限でコミュニティ価値が著しく落ちるが、有料化するとコストが非常に大きくなってしまう
既にコミュニティマネジメントに特化したコミュニティプラットフォームを使っている場合には、同じ会場で出展されていた Khoros Communitiesや Gainsight Customer Communities、あるいは未出展ですが Salesforce Experience Cloud の名前があがることが多い
(リップサービスは多少あるにしても)ほぼ100%で「決して既存の製品の価値に満足しているわけではなくて、よりよいソリューションがあれば検討の可能性は大いにある」状態
共通して言及された、強化を求めている点は以下の3つ
1. 分析やレポーティング、データ連携の強化
コミュニティ内のデータを「鳥の目、虫の目、魚の目」で把握でき、次に何を行うかの打ち手のヒント(あるいは提案そのもの)を得られること
これは、コミュニティの価値が高まるとともに(あるいは、価値を高めるためにも)組織の中でのコミュニティ従事者が多様化しており、コミュティマネージャーの視点だけではなく、マーケターや製品開発、サポートなどの職務にとっても価値あるデータソースになっている(していく必要がある)(横の広がり)
合わせて、経営層や事業責任者レイヤーに対して、効果証明やROIの明示、So what? を伝え、人員確保を含む全社としてのさらなる投資を獲得してくうえで、(必要に応じて、外部のデータと組み合わせて)適切にコミュニティ価値をレポートする重要性がより高まっている(縦の広がり)
さらに、コミュニティ内で得たデータを、コミュニティ内のユーザー体験の最適化のみならず、外部の打ち手(例えば、マーケティングやサポート)のコンテンツ配信の最適化に対して利用可能にするための連携もまだまだ伸びしろがある状態
各社、全く分析として活用できていない、提供されるデータの中でなんとなくやっている、外部ツールをフル活用し、データ人員もアサインして独自に徹底して分析している、とステータスが分かれるが、既存のソリューションの中でスムーズには解決はできていない点は共通
2. AIを含めた自動化による効率性の強化
「コミュニティマネージャーの業務が多岐に渡り、やることが多すぎる問題」は通底する悩み
繰り返し業務やフォーマット化できる業務はどんどん自動化したい(が、満足にできていない)という声を非常に多く聞いた。特にソフトウェア関連の会社では、昨今のマクロ状態も相まって、コミュニティ従事者のヘッドカウントもシビアに見られており、効率化は重要なトピック
AIの組み込み度合いは相対的に他のマーケティング関連ツールや業務改善ソフトウェアからは遅れており、コンテンツ作成/閲覧のサポート、分析の補助、などベーシックとなるユースケースにおいても物足りない。特にコンテンツ監視などのコミュニティ保全の筋は、まだまだマニュアルワークが多く、特に大規模コミュニティに従事する方の管理リソースの一定割合が投下され続けている
これは私たちが持つ課題感と目指す方向性に合致しており、リードしえる部分だと強く感じた(コミュニティ×AIによって実現する未来)
3. プロフェッショナルによる支援強化
自社のコミュニティ運営について、ひいては、カスタマーサクセス/マーケティング領域においてのコミュニティ施策全体に対して、相対的な視点に基づく最適な戦略とアクションプランニング(およびその実行支援)に対してのニーズは強い
つまり、複数のコミュニティ従事経験がある方が相対的に多いといっても経験の厚みには限界はあり、客観的なベンチマークの把握や戦略的なフレームワーク、事例のひきだし、打ち手の幅など、各企業の従事者のみではカバーしきれていないのが現実。ゆえに、CMX Summitのような知見共有/ネットワーキングの機会があるのだが、カンファレンス/イベントでは正直各社の具体レベルのサクセス共有、あるいは他分野(マーケティングや経営など)の抽象論の部分的反映の提案にとどまっており、一歩踏み込んだ「プロフェッショナルによる併走」を本音では望んでいる
その意味で、既存のコミュニティプラットフォームベンダーの"製品サポート"枠を超えた、プロフェッショナルサポート、さらにいえばその実現をハンズオンで実現するリソースの外部化も求められている
一方で、当然既存コミュニティの蓄積(ユーザー、コンテンツとともに)の力は大きく、コミュニティの土台を移行するうえでは、データのマイグレーションと移行プロジェクトマネジメントの双方が必須になる
(特に米国でのコミュニティを取り巻くユーザー行動の変化の中で) 自社コミュニティの位置づけ、価値の置き方に考えを巡らせる話をイベント後に数人と議論
前提、ひとつの場所にあらゆる情報、人、ネットワーキング機会が集い活用できる状態は理にかなっている一方で、ユーザーを取り巻く情報は多様化、多層化しており、且つ各分野の進化が著しく進む中では、「いかに"コミュニティ"をユーザーの生活の everywhere に存在させ、自然にアクセスできる状態を維持しつつ、それぞれの固まりが有機的につながるようにデザインし、どう一つの"緩やかなおおきなコミュニティ"を構築するか」が重要という話に
例えば、Slack内で同僚と製品活用について議論すると同時に、LinkedinとRedditで外部の有識者に質問をしつつ、ChatGPTとも並行して議論を深めている。さらに対象製品の組み込みのAI Chatbotで情報を収集した上で、その内容をXとLinkedinで連続投稿をした上で、自らPodcastとYouTubeで発信しつつ、フォーラムにも各種URLとともにサマリを書く、みたいな横断的なことが起きている
要は、ユーザーとして、様々な媒体やツールを横断的に使うなかでの蓄積やつながりが連動し、通貫してコミュニティへの貢献とコミュニティの活用ができている状態をどう描くかということだ
この観点には、情報の集約場を設けた上で、その任意の断片を多様な場所で文脈に沿う形でユーザービリティ高く融けこますこととともに(逆も然り。断片を自動で収集した上で、適切なフォーマットに成形し集積場に格納する)、一貫性をもったアイデンティティのもとにデータを連携し保全する、という非常に大きなチャレンジではあるが、私たちが中期で未来に描くストーリーとアラインしていると実感
プレゼンテーションからの学び📝
前提、幸いなことにブースが盛況だったためプレゼンテーション会場で座して話を聞く時間はほとんど取れず
公式サイトにて、セッションの動画のアーカイブとプレゼンテーション資料が公開されたため、そこから全体を俯瞰した上でのポイントをピックアップ
(語り尽くされた内容ではあるが)オンラインとオフライン融合がより重要に: COVID-19の影響で両者のコミュニティの境界が曖昧になり、ハイブリッド形式のイベントや活動が標準となっている。広範な参加者にリーチできるオンラインを軸にしつつも、いかにオフラインを積極的に絡め深い関係を築くかが重要。(これは、今回の参加者の中でも特定の地域担当やローカル企画・運営担当が一定おり、オフラインでのつながりを強化しているのとも重なりがあり)
エンゲージメントのパーソナライズ: 広範な参加者がハードル低く参加するようになったことで、よりパーソナライズされたエンゲージメントが必然的に求められており、コミュニティメンバーの個々のニーズや関心に応じた対応が極めて重要となっている。AIを活用した個別化された体験の提供が鍵。必ずしもコミュニティの中のコンテンツ配信の話だけではなく、コミュニティ内のデータもユーザー情報の一部として活用し、会社がコミュニケーションする内容の最適化に役立てていくべき
部門横断のコラボレーション:コミュニティの規模が拡大するとともにコミュニティのもつ価値はより大きく、多様化する。部門を横断して、コミュニティ内での知見やデータを活用して、ユーザー体験の向上に連携できるように尽くすべし。例えばPelotonでは、コミュニティがビジネスの中核に位置付けられており、コミュニティチームが他の部門(マーケティング、製品開発、カスタマーサポート)の目標やKPIを理解した上で、それぞれに貢献できるかを明確にしたうえで、コミュニティの共通の目標を設定し、達成のための戦略づくりと実行のリードを行っている。その土台として、コミュニティの価値を社内で広めるためには、定期的な全体への報告と成功事例の共有という継続的な種まきが重要。Pelotonは、四半期ごとにコミュニティの成果や進捗を報告し、情報の透明性を担保している
AIの活用の具体例について
(AIを積極的に活用してコミュニティ関連の文書やアンケート作成、イベントアジェンダ作成や画像作成に役立てて効率化しょうね!という概論はありつつ)
PelotonはAIを用いてユーザーのフィードバックを分析し、製品開発に役立てている。ユーザーが、ソーシャルメディア、コミュニティフォーラム、顧客サポートチャットなどで提供するレビュー、コメント、フォーラム投稿など、様々な形態のフィードバックを自動的に収集。収集されたフィードバックをテキスト解析し、肯定的・否定的な感情、主要なテーマ、トレンドを特定する。例えば、特定の機能に関する不満や改善点を自動的に分類。ユーザーがどのような機能を望んでいるか、どの部分に改善が必要かといった具体的なインサイトを抽出をAIを使って抽出。議論の土台をつくるために活用している。
高齢者向けのオンラインコミュニティでの事例。AIを活用して、チャットやフォーラムでの対話をリアルタイムでモニタリングし、不適切な内容や攻撃的な言葉を自動的に検出して削除。あるいは、参加者の興味や関心に基づいて、ディスカッションのテーマやトピックを提案して対話を促す。さらに、対話の中で表現される感情を分析し、ネガティブな感情が高まった場合には、孤独感を感じている参加者に対して、励ましのメッセージを送るなどの適切な介入を運営から行う
総論
コミュニティ運営にかかわる主要な課題感は、日本も含めグローバルで共通(「グローバルだから、スイスイ上手く行っている、二歩先を行っている、ということでは決してない」)
よりよいユーザー体験の最適化のため、あるいは、よりよい意思決定と全社でのアクション実行のための、データ収集(連携)、分析、活用。それらのデータに基づくAIを活用を含めた業務効率化。そして戦略構築、実践サポートリソースへのアクセス確保は、共通した重要なアジェンダ
マクロのユーザー行動の変化に対応した、コミュニティのユーザービリティの柔軟性とデータの一貫性の担保は今後存在感大きくなるトピックであり、グローバルでより考慮される点
グローバルにおいては、コミュニティのユーザー規模が桁違いであり、良くも悪くも施策のインパクトが大きく、早く出るので、速やかにPDCAが回りやすく、事例も表出しやすい
Communeは、グローバルの最前線を捉え、グローバル市場で闘うなかでサービスを磨き上げるとともに、日本とグローバル双方の事例や知見をそれぞれに発信、共有することで日本を含めたグローバルでの市場全体の成長と発展に貢献する
5月24日に参加報告イベントをします!
KEENのトーマスさん(イベントレポート)とともに、イベントの内容を中心にグローバルでのコミュニティの現在地について語るイベントを開催します!
本noteでは語りきれなかった事項や具体事例ついて、Q&Aも含めつつご共有いたします。
コミュニティ実践者の皆さまはもちろん、コミュニティ施策にご興味をもつマーケターの皆さんも奮ってご参加ください!
末筆で誠に恐縮ですが、今回Commune初のCMX Summit出展、(ひいては米国イベントの初出展)にともない、ヒアリングおよびご相談にのってくださった、小島さん (小島さんは、過去のCMX Summitにご参加されており、2023年のレポートやCMX Summit 2023 Xポストまとめ を公開されています! CMX Summitの現地での肌感や訴求のあり方をご教示いただきました!)、Shirofuneの菊池さん、網本さん(ShirofuneさんもUS展開されており、出展のいろはを教えていただきました!) 、
この場にて改めて感謝を申し上げます。ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします!
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