あの日の記憶、回想、そして追憶。きれいな翼は羽ばたいた。
いくら人間の価値は顔やスタイルでないと言っても、少し嘘くさく聞こえてしまうのは何故だろう。
テレビを付ければ、チャンネルを直ぐにNHKに合わせてしまうようになったのはいつからだろう。先週の土曜日も夕食を食べながら、ニュース7を見ていた。
テロップの文字に三浦春馬さん死亡と文字が出ても、最近の芸能に極端に疎い身には、しばらくは誰なのか分からなかった。
彼の顔が映し出されて始めて「嗚呼」と声を洩らした。
なぜなら、つい先日もNHKで、彼とシンガーのJuJuさんがメインでされている番組を見たばかりだったからだ。
この番組は、多分2、3年は続いている番組で、世界は欲しいものに溢れているみたいなタイトルで、その名の通り、世界のあらゆる魅力的で輝くものや場所を紹介し、解説する番組だ。
正直言って僕は、ややブルジョワ的な、綺麗で美しい、見惚れるものに焦点を当てる番組は少し苦手で、たまにぼんやりと見る程度であった。
しかし、やや苦手な内容にも関わらず、時折、気が付けば見てしまう理由はただ一つだった。
三浦春馬さんの笑顔があまりにも甘く素敵だからだ。
もちろんルックスもスタイルも清潔感も超一流で、画面越しから垣間見える性格も間違いなく優しく魅力あるものだろう。
つい先日も、彼の顔を見ながら、癒されながら、もしも彼の甘く優しげなルックスやスタイルが手に入ったら、間違いなく人生はバラ色になるだろうなと、半ば嫉妬し思ったほどだった。
亡くなったのが、彼だと分かった瞬間、会ったことも、もちろん彼が生きていたとしても、この先、接点などあるはずもない、にも関わらず、訃報を知って、なんとも言いようのない、整理の付かない気分になった。
日本では、一年間に約3万人もの自殺者がある。
一日に換算すれば、約100人前後の命が自ら絶たれているのである。
そう考えれば、彼が命を終わらせた日にも、同じように自ら命を終わらせた人はたくさんいたことになる。
自殺には、推測だが、3種類の異なる理由があるように思えてならない。
端的に言うと、経済的な理由と健康上の理由、もう一つは当たり前だが、当事者にしか分からない、あるいは、その人にすら分からない理由だろう。
彼は、数え切れないほどのファンや沢山の親友にも恵まれていたようだし、仕事も順調で才能もあって、老若男女、皆に愛されていたようだ。
もちろん一般人には分からない、有名である身にしか分からない心の苦悩や陰の叫びがあったのは確かだろう。
けれども、これだけの愛に囲まれながら、それを上回るほどの苦しみがあったのか。
俳優としてこれだけの知名度があったのだから、経済的な理由では絶対にないだろうし、健康上の理由でも多分ないだろう。
ネット上の推測も何だかしっくりこない。
本当にこれが身を絶つ真実、要因なのだろうか。
ものすごく恵まれた才能と天性の美貌に気が付かなかったのだろうか。
もしかしたら、全てを消化して一周してしまったのだろうか。
全てに絶望してしまったのだろうか。
しかし、もったいない。
先ほども書いたが、彼の全てを手に入れることができたなら、おそらく、いや必ず、ほとんどの人が人生を謳歌することができるように思う。
やはり、理屈ではなく、恵まれた才能や外見は、人生にとって、もの凄くポジティブ、プラスに働くことは誰もが内心に秘めているものだ。
私を含め、彼などに比べたら、何もかもが足元にも及ばない、生きにくさを存分に抱えながらも生きている人間が無数いるのだ。
彼の抱いてきた苦しみは真実なのだろう。
だけど・・・
比べることは出来ないし、偉そうなことは言えない。
けれど、彼が世界中のプロレタリアを、もっと見渡すことが出来ていれば、もしかしたら、違った選択になったかもしれない。
やっぱり惜しすぎる。
彼は、世界にただ一つの美しすぎるガラス細工だった。この上なく繊細で、また、この上なく綺麗な心の持ち主であったのだろう。間違いない。不可能だけど、彼と話をしたかった。