【読書記録】2022年9月

9月もサクサク積読を減らしましょう。

1冊目:新川帆立『元彼の遺言状』

あらすじ(文庫版裏表紙より引用)

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」。元彼の森川栄治が残した奇妙な遺言状に導かれ、弁護士の剣持麗子は「犯人選考会」に代理人として参加することになった。数百億円ともいわれる遺産の分け前を勝ち取るべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。ところが、件の遺言状が保管されていた金庫が盗まれ、さらには栄治の顧問弁護士が何者かによって殺害され……。

ドラマ版をとても楽しく観ていたので、原作小説も読んでみました。結果、原作小説の方が好みでした。

ドラマ版の剣持麗子はお金が大好きで、食いしん坊で、使える人間は振り回し、あまり悩んでいる風は見せないキャラクターでした。

原作の剣持麗子もお金は大好きだし、使えるコネ・人間は使いまくる、だけど自分と周りの人間との感覚の違いに思い悩む面も持ち合わせていました。原作の剣持麗子の方が人間味を感じられて好みでした。

後半の展開は「本当にこの人弁護士なのかしら?」と思ってしまうくらい常識から外れていて、いっそ清々しく、面白かったです。

剣持麗子が主人公の他の作品も読みたくなりました。


2冊目:今村夏子『むらさきのスカートの女』

あらすじ(文庫版裏表紙より引用)

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方ない<わたし>は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し……。第161回芥川賞受賞作。文庫化にあたり受賞記念エッセイをすべて収録。

今村夏子さんの作品は『星の子』以来、2冊目。終わり方がスッキリしないのはどちらの作品も同じだけど、この『むらさき~』の方が読みやすく個人的には好みでした。

こちらの作品はずっと不穏な雰囲気が流れています。語り手の正体がわかった時にゾッ……としました。

どうして語り手は「むらさきのスカートの女」にこだわり続けたのだろう。自分と同じタイプで、良き理解者にお互いがなれると思ったのでしょうか。でも、「むらさきのスカートの女」は蓋を開ければ普通の女性だった。語り手にもそれはわかったはずなのに最後まで関わろうとしたんだもんなあ。ただただ行動理由が謎過ぎて怖い。

でも、面白かった。


3冊目:佐藤青南『噓つきは殺人鬼の始まり SNS採用調査員の事件ファイル』

あらすじ(文庫版裏表紙より引用)

就活生のSNSアカウントを探して特定し、個人情報を企業に密告する――インターネット上専門の探偵・潮崎真人は、彼の調査のせいで就職試験に落ちたといって押しかけてきた大学生・茉百合をアルバイトとして雇うことになる。しかしある日、茉百合が見つけたとあるアカウントをフォローしてからというもの、真人がネット上で知り合った人々が、次々と殺人犯の標的にされはじめ……。

面白くて夢中になって読了したのだけど、後味の悪いラストで……。因果応報といえばそれまでだけど、でもツライ。

ほぼ茉百合の一人勝ちと言っても過言ではないのかもしれない。潮崎は茉百合の掌の上で良いように転がされていただけなんだろうなあ。

潮崎の元妻にパパ活情報を教えたのも茉百合な気がするし、ミサトの父親に潮崎の情報を与えたのもまた茉百合なのではないかと思ったりした。前者は潮崎への感謝の気持ちの表れで、後者は自分の過去の情報を知る潮崎を消し去りたかったのかもしれない。

公文とのやり取りが見たいから、すんでのところで助かったと信じたいなあ。


4冊目:呉明益『雨の島』

あらすじ(単行本帯より引用)

元神話学教授のチーズ職人の家に養子として迎えられた、難病のミミズ研究者の物語「闇夜、黒い大地と黒い山」。鳥の声を聴き取る自閉症の鳥類行動学者が、母の死をきっかけに聴力を失い、新たな言語を構築していく「人はいかにして言語を学ぶか」。植物状態にある恋人のツリークライマーに負い目を感じる主人公が、臨死体験を利用した治療法に身を委ねる「アイスシールドの森」。無差別殺人事件で妻を失った弁護士が、未完成の妻の小説に登場する絶滅種を追い求める「雲は高度二千メートルに」。海に惹きつけられた四人の男女が、絶滅したクロマグロを探す旅に出る「とこしえに受胎する女性」。中華商場で子どもたちを魅了した一羽の鷹と、その持ち主である叔父さんをめぐる追憶の物語「サシバ、ベンガル虎および七人の少年少女」。緩やかに連関しつつ紡がれる自然と人間の大いなる物語。

私には難しい本でした。

難しいながらも、この本からは抗うことができない自然の力と人間のエゴを感じることができました。

この本の最後の章、「サシバ、ベンガル虎および七人の少年少女」が一番俗っぽくて読みやすいのです。ゴミゴミとした商場での一幕はとても綺麗とは言えないのに、この本全体に流れる清潔感のおかげでそんなに汚らわしく感じなくて不思議な感覚でした。

友人との読書会で友人が選書したこの本。私個人では読むことがないジャンルだったので勉強になりました。


5冊目:町田そのこ『うつくしが丘の不幸の家』

あらすじ(文庫版裏表紙より引用)

海を見下ろす住宅地に建つ、築21年の三階建て一軒家を購入した美保理と譲。一階を美容室に改装したその家で、夫婦の新しい日々が始まるはずだった。だが開店二日前、近隣住民から、ここが「不幸の家」と呼ばれていると聞いてしまう。――それでもわたしたち、この家で暮らしてよかった。「不幸の家」に居場所を求めた、五つの家族の物語。本屋大賞受賞作家が贈る、心温まる傑作小説。

大好きな『コンビニ兄弟』シリーズの著者、町田そのこさんの作品。とても面白かったです。三階建ての一軒家を巡る物語で築21年から始まり、章が進む毎にどんどん過去に遡っていきます。

その家に住む家族のことを知らない第三者が外から見ている分には、その一軒家に住んだ家族は次々に一家離散していくように見えたのかもしれません。だけど、この家を退去していった人々は前向きに一歩を踏み出していったことがわかり、心が温まります。

町田そのこさんの作品を3作品読んでみて、町田さんの作風がとても好みなんだな、と思いました。


6冊目:原田ひ香『彼女の家計簿』

あらすじ(文庫版裏表紙より引用)

シングルマザーの里里りりの元へ、疎遠にしている母親からぶ厚い封筒が届く。五十鈴加寿いすずかずという女性が戦前からつけていたという家計簿だ。備考欄に書かれた日記のような独白に引き込まれ読み進めるうち、加寿とは、男と駆け落ち自殺したと聞く自分の祖母ではないかと考え始める。妻、母、娘。転機を迎えた三世代の女たちが家計簿に導かれて、新しい一歩を踏み出す。

原田ひ香さんの作品は初めて読みました。本当は『三千円の使いかた』が読みたかったはずなのに、書店であらすじを読んだらこちらが気になり購入に至りました。

なかなか面白かったです。この作品に出てくる女性陣はひたむきに日々の生活を頑張っている印象でしたが、男性陣は大体クズだなあ、と。

一番のクズは晴美の元彼。婚約者がいるのに晴美と付き合い、婚約者とも晴美とも関係を絶ったあとは別会社に転職してデキ婚。数年振りに連絡してきたと思ったら自分の苦労話とねずみ講の勧誘……絵に描いたようなクズで苦笑してしまいました。

今度は『三千円の使いかた』が読みたいなあ。あと、解説で触れられていた『虫たちの家』も気になりました。


7冊目:森絵都『カザアナ』

あらすじ(文庫版裏表紙より引用)

監視社会化が進む少し先の日本。中学生・里宇とその家族は、どこか不思議な庭師❝カザアナ❞と出会い、引きこもる弟、不運な市役所職員など周りの人を笑顔にする小さな奇跡を起こしていく。読めば心のびやか、興奮と驚きに満ちたハッピー・エンターテインメント!

森絵都さんの作品は久しぶりに読みました。『カラフル』をはじめとする私が中学生卒業くらいまでに発表された作品はほぼ読んでいる気がします。私が日常に潜むファンタジー系を好きになったのは森さんの作品が影響しているのかもしれません。

この作品での日本は外国人向けの観光産業がメインになっていて、よりジャポい(日本らしい)ことが求められるようになっています。そして「国からの監視」とその上で「国民を評価するポイント制」などがあり、凄く息が詰まりそうな国です。この設定だけでもとても面白そうですよね。そこに交わる❝カザアナ❞の存在でファンタジー要素も加わり、わくわくもひとしおでした。

久しぶりの森絵都作品、とても面白かったです。


8冊目:石井睦美『ひぐまのキッチン』

あらすじ(文庫裏表紙より引用)

「ひぐま」こと樋口まりあは、人見知りの性格が災いし、就活をことごとく失敗した二十三歳。ある日、祖母の紹介で「コメヘン」という食品商社の面接を受ける。大学で学んだ応用化学を生かせる、と意気込むまりあだったが、採用はよもやの社長秘書。そして、初出勤の日に目にしたのはなぜか、山盛りのキャベツだった。

この作品に出てくる料理が美味しそうです。さつまいもを使った「鬼まんじゅう」は私も作ってみたくなりました。

全体的に優しい雰囲気を纏った作品ですが、読者の中にはまりあが就職したこの会社はある意味ブラック企業だと感じる人がいるのではないかと思いました。私は「絶対就職したくないな」と思いました。

場合によっては社長と取引相手に手作りの昼食を準備するとかしんどすぎます……会社の歓迎会や送別会があった時には会社の調理室(兼休憩室)でお好み焼きパーティー(焼くのは秘書の仕事)というのもきつ過ぎる。

創作だとわかっていても何か環境がしんどすぎて、あんまり話が入ってこなかったです。


9冊目:早見和真『店長がバカすぎて』

あらすじ(文庫版より引用)

谷原京子、二十八歳。吉祥寺の書店の契約社員。超多忙なのに薄給。お客様からのクレームは日常茶飯事。店長は山本猛という名ばかり勇ましい「非」敏腕。人を苛立たせる天才だ。ああ、店長がバカすぎる!毎日「マジで辞めてやる!」と思いながら、しかし仕事を、本を、小説を愛する京子は――。全国の読者、書店員から、感動、共感、応援を沢山いただいた、二〇二〇年本屋大賞ノミネート作にして大ヒット作。

書店で初めて見かけたときからずっと気になっていた作品でした。とても面白かったです。

どの話もクスリと笑えて良かったのですが、特に第五話の「神様がバカすぎて」は書店員のみならず、接客業をやったことがある人なら誰もがウンウンと頷いてしまうのではないかと思いました。どんな接客業にも面倒な神様はつきものですよね……。

続編でもおバカな店長が健在なのか、続編も早めに読みたいですね。


おわりに

9月は9冊も読めてしまったのでこのnoteも4000字を超えてしまいました。長くて申し訳ないです。

積読は7冊ほど解消されました。……が、軽率に増やしてしまうので積読棚の分量はあんまり変わっていません。

今年もあと3ヵ月を切ったので、少しでも積読を減らせるように頑張ります。そして、できればしばらくは増やさないでいたいです(希望)




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