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映画魂🎦65点:ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

Prime Videoにてまだ生存していたので、良い機会と思い、視聴した。
今後、この『批評魂』では点数を付けてみようと思う。反論もされそうだが、それを正面から受け切る覚悟だ。別にそんな小難しいことは言えない。ただ思った衝動を綴っていく。それでは。


⭐️俳優さんと吹き替え声優さん、共に名演技

ウィンストン・チャーチルを演じた俳優さんは名優と名高いゲイリー・オールドマン。メイキング情報によると彼が今作のウィンストン・チャーチル役は辻一弘氏のメイクがなければやらないと言ったらしい。

実際にゲイリー氏とチャーチル氏の顔を見比べてみるとまことに違う。ゲイリー氏は知性の中に少し野性味も感じるハンサムだが、チャーチル氏は獰猛さがほとばしっているような凄まじい形相をしている。こう言っては失礼だが、たまに見るサイコパス殺人鬼のような雰囲気を感じた。

ゲイリー氏の演技は吹き替えでもその凄さが伝わってくる。表情の演技で生々しい感情をとても色濃く表現する。言葉も声色とテンポと勢いで感情を伝えるが、顔面から飛び出して来るような表情の隆起はまた違った熱量を伝えてくる。

自分は海外の映画やドラマは基本的に吹き替えしか観ない。視聴している最中は画面で物語が流れていくことに集中したい。字幕を見ながらだと物語の味がわからなくなるのだ。あと、吹き替えは声優さんがどんな吹き替えをするのか聴きたいというのもある。今作のチャーチル氏を担当した声優さんの仕事は素晴らしかった。老人特有の口ごもりや癖、酒飲みがやってそうな癇癪、本当にありそうな演技であった。

実際のチャーチルも劇中で表現されているような人物だったのだろうか。毎日飲んでいる酒の量も本当なのか。自分からするとあの酒の量は完全にアルコール中毒にかかった人間のそれなのだが、そんな人間が政治家、閣僚、首相になれるものなのか。イギリスの文化なのかとも思ったが、流石に当時だから通じたのやもしれない。

⭐️チャーチルにしか焦点がない

当たり前だがこの映画ウィンストン・チャーチルの映画であり、彼の半生を、というよりは彼が一番活躍したであろう部分を紹介する映画だ。なのでそれ以外のところは見事なまでに省かれている。実際の戦場での戦闘シーンなどはなく、取り残された敗残兵が苦しんでいるシーンぐらいしかなかった。戦車や戦闘機が次々と出撃して砲弾や焼夷弾をばら撒く戦闘描写もない。戦争映画の醍醐味と言えるような迫力ある見どころは皆無だろう。

チャーチルという政治家に焦点を絞っているので、舞台は政治の場、つまりは国会になる。あとはせいぜい自宅での生活ぐらいか。政治家同士の駆け引き、戦況の読み合いがおそらくは見せ場だろう。そこでチャーチルという傑物を活躍させる。映画の手法としては間違ってはいない。一番盛り上げるのは最後の大演説だろう。国会をチャーチル一色にした瞬間だ。その最高潮の盛り上がりによって幕引きとなっている。その後の戦況は数行の文章のみで紹介される。

⭐️人物紹介映画と思うべきだろう

前述したように迫力ある戦争シーンなどがないのはしょうがないことだ。そういうものを見せたい映画ではない。だが戦争の現場がほとんどわからず、政治家や軍人の掛け合いだけなので、どうしても見応えは下がる。そういうシーンをもう少し入れていればまだ見応えがあったと思うのだが。

政治家同士の駆け引きだけでも面白くはできると思う。ただ2時間あまりの映画で権謀術数が張り巡らされている複雑なストーリーを描くのはかなり難しい。時間が足りない。全12話のドラマならばまだ可能だろうが。

人物紹介映画と表現したが、チャーチルの描き方もいささかヒロイズムに傾倒しすぎていると思う。創作にはご都合な展開は付きもの。そのご都合加減をいかに減らすか、上手く違和感なく見せるかが勝負どころ。ご都合があまりにも濃すぎると観客は白けてしまう。チャーチルが少し落ち込んで最後に立ち直って挽回するシーンは、どうしてもご都合感が強すぎた。チャーチルを一緒に引きずり降ろそうとしていた政敵のひとりが彼の支持に回るのだが、そのシーンがいきなり心変わりしているようにしか見えない。自分の解釈が追いついていないだけかもしれないが。

⭐️まとめ

ひとつの作品として批判するつもりはないが、自分としては題名のところにあるように65点という数字になった。映画業界やマスコミ業界では評価が高い作品となっているが、娯楽として観た場合、そこまでの高得点作品ではないと判断した。前述したようにもっと戦場の描写を増やして敗戦しそうな国の情勢、戦場の鬼気迫る兵士達の様子などを描写していたら、かなり臨場感がある戦争映画になったと思う。そう、戦争は国会で起こっているんじゃないんです。戦場で起こっているんです。

この言い方はあまり良くないのだが、いわゆる意識高い系の映画はどうしても高尚なものが多い故に娯楽性に欠ける。高尚さと娯楽を兼ね備えた映画ならいいのだろうが、そんなものは簡単にできるものではない。

戦争映画は創った当時の社会情勢や流布している思想などが色濃く反映されると聞いたことがある。一昔前なら米軍のプロパガンダが目的の映画が多かった。しかし少し前から変わり始めた。そう思ったのは『ダンケルク』という映画を知った時だ。この映画の主人公が今までの戦争映画とはだいぶ様相を変えてきた。まだ観ていない。ちょっと気になるので、そのうち観てみようと思う。

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