【3-7】はちみつの価値と値段のつけ方について悩むよね(~768日目)
花が咲くタイミング
3年目の春。
経験が少ない事はどうしようもない事で、そこに対していくら足掻いたとしても仕方ないし、変えられないことに目を向けるよりも、自分にできることをしていこう。
なんて頭ではわかっているけれど、いつも安定して過ごせるわけもなく、ましてや周りから見えないように水面の下で優雅に足掻けるわけもなく、なかなかに取り乱して過ごしている。
他の地域の養蜂家さんたちのSNSは、いつもチェックしているけれど、気候が違うと作業の進め方が全く違っていたりするので比較しすぎると焦りに繋がるのが少しだけ玉に瑕だが致し方なし。
周りの芝は青々として見えるお年頃なのだ。
全く何もわからなかった時は焦ることもないけれど、自分も3年目になってくると、同じくらいの経験を積んだ人が上手に養蜂しているのを見るだけで、頭のてっぺんの細胞が壊れてしまいそうな焦りを感じる。
ジタバタする。
さておき。
今年は花の咲くタイミングが遅い。
少ない経験ながらも、過去2年の記録をベースにいつどんな作業をしたのかや、気候はどうだったのかを振り返りながら、先輩養蜂家さんたちに作業の進行状況を尋ねたりしつつ、今やる事を模索する。
去年の今頃、もう藤の花が咲き誇っていたのね。
今年はまだ花芽がでてきた程度。
山桜も散り切ってはいない。
カエデ(もみじ)の木の花は、小さくて見えにくいけれど、ミツバチ達にとても人気があって、木の下に立つとブンブンと音がしてくる。
梨の花も満開になった。
はちみつを採る方法として、1段目の箱の上に働きバチは通れるけれど女王蜂は通れない「隔王板」というものを挟んで、2段目の継箱を乗せる。
そうすると、女王は1段目で産卵を続け2段目に上がってくることはなく、働きバチは2段目にはちみつを貯め始める。
この辺の養蜂のやり方は、かなり人それぞれなので、私の方法が「正しい」というわけではないと思うけれど、私はあくまでも本物の花の蜜だけを集めるためにこの方法を採用している。
更に、一度も育児をしたことがない巣枠からはちみつを搾る。
ミツバチを育てるためのはちみつと、人間が頂くはちみつを完全に分けることにしている。
一度育児をした巣の方が、ミツバチがはちみつを貯めやすかったりするし、蜜ろうでできているハニカムも丈夫になるらしく、分離機にかけたときに壊れにくいという話も聞く。
私の方法だと、採蜜量は減ってしまうけれど、そこの部分はこだわっていきたいと思っている。
はちみつの味
はちみつの味は、採れた地域によって全然違う。
はちみつと言っても色々な種類があって、中には「本物ではないもの」が混ざっている。
はちみつに限ったことではないけれど、香料などで香りをつけた「はちみつ味」も市場にはたくさんある。
どこまでを「本物」とするかは難しい所だと思っていて、本物を求める人に嘘をついたり騙したりするようなことがあってはいけないと思うけど、味については私は食べる人が満足すればそれでいいと思っている。
ただ、私が作るものは「説明できるもの」でありたい。
どうやって作っているのかを自信を持って説明できるもの。
ミツバチには気に入った花があると、極力その花の蜜を集めるという習性があるらしく、「アカシア」「レンゲ」「りんご」など、所謂「単花蜜」といわれるものも、そのような蜜源が周囲にある場所で採取すれば、ほぼその花の蜜だけになる、という考え方。
私の場合は、花を追いかけて移動するのではなく、巣箱を同じ場所に置く「定置養蜂」なので、周囲の山に咲く様々な花から、蜜を集めてくる。
なので、その年によって、咲く花の種類やタイミングで違う味わいを楽しむことができる。
どうしても「アカシア」の蜜が食べたい、という人の希望には応えられないけれど、純粋な「アカシア」の蜜を取っている人は全国各地にいるし、私のはちみつじゃなくても手に入れることができるし、上手に単花蜜を集めておられる養蜂家さんから手に入れることをお勧めしたい。
純粋なアカシアのはちみつが美味しいと感じるのは間違いないと思うし、そういうはちみつを採るために、工夫と努力をされているのがよくわかる。
それでも私はあくまでも、山の花の蜜を採りたいと思っている。
「百花蜜」は、色々な花の蜜が混ざりあっているのが魅力だから。
機械で作るわけじゃなくて、山の気候が味になっているのがいいと思う。
野に咲く花と山に咲く花でも、味が違う。
山に咲く、山桜や藤やアカシアやカエデやトチや、他にもたくさんの木々の花の蜜が混ざって、複雑で味わい深い。
今年は、どんな味になるのか、楽しみで仕方ないし、去年よりもたくさん採れる見込みが出てきたので、去年お届けできなかった人たちにも、是非食べていただきたい。
確実ではないので予約を取らず、実際に絞って瓶詰できてから販売するので、6月くらいになりそうです。待っててくれたら嬉しいです。
はちみつの値段
近年の物価上昇も相まって、はちみつの値付けに頭を悩ませている。
はちみつで生計を立てていきたければ、養蜂としての技術向上とか、上質なはちみつを生産できるようになる事とは別に、商売として採算を採れるようにならなくてはならない。
指定野菜や米などと違って、はちみつは食べなくても生きていくことができるし、必要としていない人、何年も口にしていない人もいるだろう。
それでも、お金を払って買ってもらって食べたいと思ってもらえるものを作りたい。
世の中とか他の人の幸せにつながるような大きなことは、私にはできない。
まずは、自分が生活できるようになること。
難しいのが作っただけでは、生計が立たないこと。
瓶も箱も送料も。
もちろん、私自身が生活していくうえでかかる日常の全てのものも、値上げが続いている。
私のような極小規模の場合、養蜂だけで食べていくことは正直できない。
今年までは協力隊としての収入を頂けているからいいけれど、来年からはアルバイトしないといけないだろう。それが現実。
それでもこのまま養蜂を続けていきたいし、一人の人が生活をしていかれる産業にしたいと思っているし、そうでなければ養蜂をする人もいなくなってしまうだろうし。
世の中の物価と比較するわけではないけれど、例えば某ファーストフード店のハンバーガーセットも1000円を越えたりする。
オシャレコーヒーショップだって、1杯1000円近くする商品もザラ。
はちみつスプーン1杯分くらいのものしか入っていなくても。
むやみに値段を上げたいわけではないけれど、それでも手に取ってくれる人を増やしていきたい。
「安いから買う」のではなく「欲しいから、食べたいから、必要だから買う」商品を作りたい。
そんなわけで、はちみつの値段、まだ迷っている。
採ってきたり作ったり
花畑化を進めるついでに、自分が食べるものも作れるようになりたいし、養蜂と農業は密接に繋がっていると思っているので、農作業に勤しんでいる。
と同時に、野山に自然に生えてくるものにとても助けられている。
山が育ててくれた恵みを自分が食べる分採ってきて食べる。
楽しくて、ひもじくない。
近所に住む野草名人に教えてもらう。
「これは食えるよ」「これは毒だよ」
自分で育てるのも楽しいけれど、山に生えているものを学んで採ってくるのもまた楽しい。
大量にクレソンを頂いた。
クレソンの思い出は、Xの@83cochiで少し触れました。
食べ物の記憶って、その時の自分や思い出と直結したりするんだよな…。
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