コーナーセンサー
この一週間、先週投稿した記事の続きを書きながら、今後noteに何を書いていけばいいのだろう、と漠然と考えていた。これまで人並みの人生を歩んできて、たいして面白い経験をしてきたわけでもない。でも、ふと思ったことや代わり映えのない日常の中で起こる些細な出来事を拾い集め、これからもnoteの投稿を続けていきたい。そう思った。『考えの整頓 ベンチの足』という本を読んだ影響も大きい。この本の著者のように「面白い話」にうまく昇華させられるかわからないが、少しでも心が動いたことを深掘りし、膨らませ、記事にしていけたらと思う。
先週投稿した記事の続きを書いていて、思い出した出来事がある。「1」を公開したからには続けて「2」を投稿するべきなのだろうが、“余談”を許さない状況でなければ、どうかお付き合いいただきたい。
◇
私の車には、コーナーセンサーなるものが付いている。コーナーセンサーは、車の四隅に取り付けて、障害物の接近を検知する安全装備のひとつだ。人を含め、障害物の接近を音で知らせてくれる。車のバンパーに「ホクロ」のような小さく丸い物体がついていれば、それはほぼ間違いなくコーナーセンサーである。
「付いている」と書いたが「付けられた」と言った方が正しいかもしれない。車を買うとき、もう10年以上も前のことだが、父親と一悶着あった。父親が、どうしてもコーナーセンサーをつけろと言う。実家は狭い路地、教習所のクランクよりも狭いであろう直角の曲がり角を越えた先にあるのだ。擦る心配をしていたのだろう。
だが、絶対に擦らない変な自信があったし、なにより「ホクロ」みたいな見た目が嫌でどうしてもつけたくなかった。車のオプションを決めなければいけないギリギリの日まで「付けたくない」と言い張ったが、父親の頑固さに根負けし、結局付けることとなった。
10年以上前の車なので、今の車とは性能が違うかもしれないが、たとえば、左後ろのセンサーが反応すると「ピッピッピッ、左後ろです」という音と声で知らせてくれる。障害物が近づけば近づくほど「ピピピ」と音の間隔が狭まっていく。限界まで近づくと「ピー」と心電図が止まったような音が鳴る。さらに、右後ろと左後ろ、二つのセンサーが同時に反応すると「後方です」と言い、右前と右後ろが同時に反応すると「右側です」と言う。
あるとき私の車で友人と二人、買い物に出かけたときのことだ。信号で停車中、車のすぐ前を歩行者が横切り、センサーが反応した。センサーの音を聞いて友人がふと「この音声、左後ろと右前のセンサーが反応したらなんて言うんだろう?」と言い出した。そんなことそれまで考えたこともなかったし、あべこべの二つが反応する状況になったことも、試したこともなかった。
「『左後ろと右前です』じゃない?」
「いや、何も言わなくなってピピピッて音だけが鳴るんじゃない?」
目的地に着くまでのあいだ、二人であれこれ案を出しながら車を走らせる。お互い気になり出したら確かめずにはいられない性分なので、目的地についたらあべこべの二つを反応させてみみよう、ということになった。
目的地の駐車場につき、わざと後ろにポールの立っているスペースに車を停める。車はもう十分「枠」に収まっているのだが、センサーを反応させるため、さらに少しだけ車を後退させた。「ピピ、左後ろです。ピピ…」と障害物を知らせる音が車内に鳴り響く。準備は整った。友人に降りてもらい、車の右前に立ってもらう。友人がセンサーの前に立った途端、
「ピピ、周辺です」
と、全く予想していなかった音声が流れた。
なるほど!周辺か!目から鱗だった。
なぜか笑いが止まらなかった。その様子を見て友人も「なんて言ってる?!」と興奮した様子で捲し立てる。周辺だってさ、と伝えるとその友人も「ぶはは!」と吹き出した。
予想していなかったことが起こると、なぜ笑いが起こるのだろう。そして、文字にすると全く面白くない。笑いってなんだろう。
今度、四隅のセンサーを全部同時に反応させてみたい。
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