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るひま年末シリーズ「革命燃え・る剣」感想 -濁流の中で生きること-


る・ひまわりの年末シリーズ!今年は大阪公演があったので行ってきました。
私の最高の推しである谷戸亮太さんに出会った23年1月のる祭。円盤で過去作は見ていたけど、実際に生でるひま制作の舞台を見るのはそれぶりなのですっごく楽しみでした。

私が見たのは18日の夜公演。仕事の都合もあり一回しか見れないのでしっかり目に焼き付けてきました。とはいえ、一回きりの観劇なので覚え違いもあるかもしれません。その時は優しく教えてください。笑
それでは以下、今回の感想をダラダラと書いていきます。

今回は推しがいないのでフラットに観劇。あまり前情報をいれずに臨む。その結果、まず衝撃を受けたのが、水夏希さんが徳川慶喜だったこと。流石の元宝塚ということもあり、とっても様になっていたがかなり驚いた。女性として生を受けるも、徳川家の運命により男性として、将軍として生きることになった徳川慶喜。攻めた設定だとは思うが、面白かった。
作中での、女性であるがゆえの自らの非力さを嘆くシーンや、自分が女性だから軽んじられているのではないかと憤るシーンが印象に残る。
spiさん演じる松平容保との関係性が辛い。かつては恋慕だった感情を押し殺し、将軍と藩主として接する。先述した、女性だから軽んじられているのでは?と憤るシーンはかつての恋慕がベースにあると思ってみるとすごく良い。気持ちを押し殺して将軍として強く振る舞っているからこそ、容保が自分を女性として見るのを許さない。そこには生き方を決めた一人の人間の美しさがある。それに対する容保の、「将軍」だから仕えるのだという返答も完璧。互いに自分が立っている場所を理解して、それに誇りを持っているからこそのやりとりだと思う。
容保と慶喜のロマンスは決して報われない。しかし、それは幕末に誇り高く生き抜いたことの証でもある。

反対に誇りを蔑ろにされ散った存在もある。近藤勇だ。
彼の死は正直しんどい。農民として生まれるものの、新撰組で武士として生きようとした男の最期として辛すぎる。切腹させてあげて欲しかった。切腹は狂った文化だと思うが、今作の近藤勇に関してはあの描かれた生き様を貫いて武士として死んで欲しかったと切に思う。しかし、あの死に様こそ幕末の、武士の時代の終焉を残酷なほどしっかりと表していた。
中盤の山南敬助の切腹で新撰組に、あの時代の武士のあり方にドン引きさせておいてのこの展開。脚本が恐ろしい。切腹しないことが辛いと思うなんて、山南のシーンでは思いもしなかった。
他にも、夢を持っていたのに道半ばで亡くなった坂本龍馬など、幕末という激動の時代は様々な人の思いや誇りを薙ぎ倒して進んでいく。
物語のラストに再登場する土方歳三。彼は残された者であり、だからこそ継承する者にならなくてはならなかった。(これが、彼が語り部に手渡した手記を残した理由だと思っている)
時代の流れに押し流されて、立場を失った。しかし土方歳三は生きている。武士であらんとした新撰組の副長が、武士ではなくなった後も生きる。それは辛く苦しいことだったであろう。
その苦しさをもってしても、彼が残したかったもの、それが仲間たちの思いなのだと思う。
そして、死ぬことで思いを守るのではなく、生きて継承することを選んだことが、また一際美しく武家社会の終わりを示しているように私は思う。土方歳三という男が、武士ではなく一人の人間になったのだ。剣は降ろされた。そして、剣を降ろしても人は生きていけるのだ。
松平や慶喜もそれは同じだ。武家社会を降りた彼らは、革命のその後も生きていたことが語られている。
夥しい数の人が死んだ。しかし、孝明天皇や山南、龍馬などの死は社会を動かすきっかけにこそなるものの、原因そのものではない。その死によって思いを固めた者こそいたものの、死、そのものが何かを変えることはない。
容保は、慶喜は、土方は生きた。(特に土方は、史実では死んでいるもののこの物語では生きているとされている)革命の中で死にゆく英雄は物語として美しい。しかし、この舞台ではラストにこれでもかというほど生きのびた人の存在を示す。
社会が変わっても、自分の在り方が変わっても、人は生きていくことができる。いや、むしろ生きているから変わり、変えることができる。
この物語は、人間賛歌だと私は思う。生きることこそに意味がある、そんな強いメッセージを感じた。


最後に、文章にするほどはまとまっていない思ったことや好きポイントを箇条書き。
・spiさん歌うまっ…!?
・痒いところに手が届く音楽〜〜!!!来て欲しい音が来て欲しいところに来る。最高。私はチェンステでオレノグラフティさんを知ったので俳優としての印象が強いんだけど、音楽家としても素晴らしいのだな、と感動。
・山南敬助かっこいい大好き。今回ずっと目で追っちゃった。元々、白痴やまうしずむで小早川さんのことは注目してたんだけど完全に落ちた感じある。
・加藤啓さん〜〜〜!!緩急の付け方が大好き。ふわっとした雰囲気から打って変わって溢れ出る恐ろしいほどの圧。近藤勇本当にかっこよかったね…。二部の暴走っぷりはちょっと見なかったことにします。まぁ、あれでこそ啓さんと言われればそれはそう。
・A'z!!私本家が好きなのでちょっと見るの怖かったけど面白かったです。ソースと戯れあってる山本がcuteだった
・推しがいないことを除けば、今までの年末シリーズで一番好きかも!!!

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