持つべきものは医者の友達である
夫の健康診断のたびに、血液検査の結果にそわそわしてしまう。
家庭内で料理を請け負う自分の、「健康的な食事テスト」結果だからである。
夫は体質的に元々コレステロール値が高い。長く「要精密検査」を持ち帰ってきていたが、同棲するようになって最低ランクのE評価がD評価になり、改善を見せているから、僅かに期待したいところ。
判定が出る点においては大学受験の模試と大差ないが、たまたまのない血液検査はより実直な努力が必要に思える。
今回は…E判定だった。
結婚式後に不摂生を解き放ったせいかもしれない。今更ながら、
「あの時サボらなければ…」という謎の反省が生まれる。
それと同時に
「この人の身体、本当に大丈夫か?」
という心配も湧くように出てくる。
夫の家系は、遺伝的に血液検査でコレステロール値に引っかかることが多い。
年齢とともに心筋梗塞で倒れた親類もおり、夫も将来的にそうなるのではないかと心配が絶えない。
ただ、過去にも精密検査や投薬をした方がいいのではと進めたものの、
「これは体質で、俺は毎日薬飲むくらいなら来るべき時がきたら死んだ方がマシ」
という頑なで譲らなかった夫である。
今回も、
「精密検査だけでも…」
と控えめに進めてみたものの、これは体質なんだと一蹴された限りだった。
事態が好転したのは、彼が出かけて行った忘年会である。
高校時代の仲間と集まり、どんちゃん騒ぎをして二日酔いになった翌朝、彼がコレステロール値の件で、と切り出してきた。
仲間の中に医者の友達がいるのだが、雑談レベルでコレステロール値の話を持ち出したところ、
「それはマジで薬飲んだ方がいい」
と真顔で進言されたらしい。50で死ぬぞ、とも言われ、真剣に捉えざる得なかったようだ。
健康診断結果は響かないのに、友達の医者の言葉は響くから、持つべきものは医者の友達である。
私が未亡人になったら可哀想だしね、と付け加える夫に、
『それは早く気がついてくれよ』。
そう思いつつ、新年に精密検査をするというので黙っておく。
「健康的な食事テスト」結果を改善することに私も努める。
結果はDでもEでもいいけれど、結果そのものが届かなくなってしまうのは避けねばならない。