【読書感想】今週読んだ4冊
『プリズンホテル 1 夏』浅田 次郎
・笑いあり、涙あり。だけど女性への暴力もあり。
・ヤクザが経営するホテルに泊まる話。
・作家、ホテル支配人、老夫婦、ホテルの料理人。複数の視点から描かれる群像劇モノ。
・作家が悪い意味でクズすぎて、こいつ視点になるたびにイヤな気持ちになる。息をするように女性を殴るタイプの暴力男。それも灰皿などで。人によってはフラバに注意するレベル。
・老夫婦の夫も役員をやってきて自尊心だけが立派に育った横柄なタイプ。ホテルのヤクザたちが相対的にマトモに見えてくるぞ…。むしろ礼儀がなっていて良い奴らじゃんって思える。
・外国人従業員たちがカタコトな日本語を話す様子がコメディチックに描かれているのは、いま読むとちょっとアレ。英語圏の小説で日本訛りの英語を話す日本人が面白おかしく描写されていたら、私は悲しいよ。でも作中で外国人への差別はアカンと触れてくれるのは嬉しい。
・テレメッセージ、ポケベルと、用語に時代を感じる。
・オカルトマニアの従業員がホテルの地縛霊を除霊しようと仏教のお経を上げて、さらにキリスト教の祈りの言葉を畳みかけるシーンがコメディタッチに描かれている。日本だからこそギャグとして成立しちゃうシーン。
・クズ男の作家が最後まで反省してねぇ~。ストーリー的には紆余曲折あったけど、暴力に関しては何一つ反省する描写がなく、それどころか「俺は暴力で女を愛しているんだ」みたいな肯定する地の文すらあった。全4巻のシリーズ物で次巻以降も出るみたいだけど、1巻を読む限りたぶん一生反省しないぞコイツ・・・。
・老夫婦の横柄な夫も、最終的には「なんだかんだで良い夫」みたいな終わり方。作家と老夫婦の夫はクズさの程度の差はあれど、「女性に対してぞんざいな態度を取る男が、最後まで反省せずに終わる」点は共通している。
・ダメ男が出る作品でやったらアカンことをやっている。すなわち、「ダメ男を許しちゃう」こと。
『ふあゆ』今慈 ムジナ
・同性にモテる「イケメン女子」が男主人公とくっつくのは個人的にちょっと許せねえな! 主人公の存在ごと許せなくなるな! ついでに言うとカッコいい女子を「イケメン」と呼ぶのもイヤだな!
・河口近くの温泉街が舞台。川と海の境目という境界に位置するので、現実と空想の間の怪異が出てくる物語の舞台には相応しい。
・一つの作品で二つの怪奇現象が起きる。人間が動物やモノに見える主人公に加えて、世界でも普通に怪異が発生する世界観。一つの作品で起きる怪奇現象は一つまでにしないと頭がこんがらがるよ!?
・中盤で見るからに色物っぽいキャラが出てきたと思ったら速攻で退場。読者は新キャラの名前と特徴を覚えるのに頑張って頭を使っているんだから、すぐにいなくなるのは損した気分になる。覚え損。
・起承転結の「転」が早すぎる。1/4しか進んでないのに「転」が来るのは配分がおかしい。
・エピローグが説明過多。もう少しアッサリ終われ。
・主人公がキモい。ヒロインへの愛を長々とひたすらに吐露するシーンがキモい。作者はコメディ要素と思って書いたのだろうけれど、私はまったく笑えない。
・要素を詰め込みすぎた末に「自分の信じたいものを信じて生きていこう」という、どこにでもありそうなメッセージで結末としたのは陳腐な印象を受ける。
・相貌誤認症の設定は「信頼できない語り手」として使えそうだと思ったのだが、作品がキャッチーな絵柄になる以上の役割があったとは思えない。
・ヒトが動物やモノに見える病気、人々の噂を媒介して広まる怪異、怪異に対処する警視庁の対策係。設定が渋滞している。山盛りの設定は物語を面白くするというより、説明ばかりでややこしくしている印象を受ける。
・まとめると、主人公がキモい、設定ややこしすぎ、オチが弱い。
・相貌性誤認症、怪異、八百万対策課、観測者。設定を盛りすぎて読者の頭が追いつかない。設定の足し算ばかりで掛け算と引き算ができていない。設定同士の相乗効果で面白さが倍増することもなければ、余分な設定をそぎ落としてもいない。
☆おすすめ!『裏世界ピクニック 2 果ての浜辺のリゾートナイト』
・Audibleで再読。一度文字の本で読んだ作品でも、オーディオブックだとまた違った発見があって良い。
・相変わらず女同士の関係性に真摯に向き合った名作。ちょっとネタバレするけど、続巻で恋人同士になるんですよ主人公とヒロイン。いいでしょ。
・瀬戸茜理の演じ方はアニメより女の子っぽい。いや、女の子なんだけども。もう少しボーイッシュな感じでも良かったかな? と思う。
・朗読で声として実況されてるぶん、リゾートナイト終盤の絶望感が際立つ。八尺様の帽子が無かったらどうなってたんだろ・・・
・「圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圜圖圖圖圖圖圖圖圖圃圃圃圖圖圖圖圖圖圖圖圜 圜圖囿國國國國囹國國圃國國囹國國國國囿圖圜圜圖國囿圈圈圈圈囹圈圈圈囹圈圈圈圈囿國圖圜」をどうやって音声で再現するのかと思ったら、そうきたか!
・コトリバコ解体シーンの空魚と鳥子の会話がめちゃくちゃ良い。もともと良かったけど、しっとりとした朗読のおかげでエモさが際立つ。だんだんと生気がなくなっていく演技が迫真。
・なんでアニメは中途半端なところで終わったかな。コトリバコ回をラストにしたほうが盛り上がったでしょ。
『七つの魔剣が支配する 10』宇野 朴人
・惰性で読み続けているラノベ。まあまあ面白いです。1巻ラストが衝撃だったので読んでるけど、あの衝撃を超える展開は今のところ無し。「ツカミ」を超える展開ができない現象に陥っている。
・1巻で倒すべき7人の相手が示されるので、主人公の目的が行方不明になることはない。ここは私の作品作りでも意識していきたいところ。
・1巻で「人権派VS保守派」の対立構図が示されたけど、その後はほとんど触れられずにいる。トロールなど亜人種の権利を守る人権派と、そんなもんクソくらえな保守派。テーマとして面白いと思ったのだけれど、扱いきれなかったか。今のところ「人権派=イカレ野郎ども」「保守派=クソ野郎ども」という「どっちもどっち」な感じに落ち着いている。う~ん、いかにも日本らしい。
・いちおう同性愛も存在しているけど、大抵は報われない。くっつくのは異性同士ばかり。ヘテロの当て馬にするくらいなら最初から同性愛を描写しなくて結構です、と思ってしまう。
・オーディオブックなので表紙も挿絵もまともに見たことなかったんだけど、こうして見ると主人公がめっちゃ典型的なラノベ主人公顔である。いちおうヨーロッパ系という設定なんだけど、どう見ても日本人です。
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