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【読書メモ】今週読んだ5冊

『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘III」』香月 美夜


・「小説家になろう」発の転生モノ、第3巻。平民は本なんて高価なものは到底読めない世界に無類の本好きの女子大生が転生して、なんとかして本を読もうと奮闘する話。
・主人公の行動原理が「本が好きだから本を求める」とハッキリしているのが分かりやすくて読みやすい。行動原理がハッキリしていないと「こいつは結局なにをしたいの?」ってなることがよくあるので。
・主人公は虚弱体質のうえに「身食い」と呼ばれる難病を患っており、余命はなんとあと1年。そのなかでどう生きるか? ということが今回のテーマとなっている。貴族に拾われれば高価な治療器具を使うことができて延命ができるが、間違いなく自由のない生活を強いられて飼い殺しにされる。今のまま家族と生活すれば平和な日々を送れるが、あと1年でこの世から去ることになる。さて、どうする主人公。
・転生モノ名物の前世知識で植物由来の紙を作ったら、現地の羊皮紙業界の既得権益を侵害する展開がある。「また何かやっちゃいました?」の新しいパターン。
・作品の設定は山ほど考えてあるんだろうけど、説明っぽくならずに順を追って一つずつ教えてくれる感じが好感度高い。作者の頭の中にある設定って、ドドンと一気に説明したくなるものなのよ。


『アンデッドガール・マーダーファルス』2巻 青崎 有吾


・ルパンvsホームズvs生首探偵。ダークライもびっくりである。
・古典作品のキャラを自作品に登場させる時は活躍のさせかたの塩梅が難しいな、と思った。主人公ageのためにホームズたちをsageるのも印象悪いし、かといってageすぎたら主人公が霞む。ほどほどに活躍させるのが良いのかも。
・ルパンがオペラ座の怪人を引き連れてホームズと対決! 古典作品オールスターのただなかに本作の主人公が介入していく。主人公の推理力にルパンたちもビックリ! なんか、書き手のオリキャラを版権キャラに絡ませる二次創作SSみたいな趣が無くもない。
・1巻でこの展開をやっていたらホームズやルパンのキャラの強さが目立って主人公たちが霞むところだったので、2巻でやるのは正解ですね(謎の上から目線)
・ミステリとしては前置きが長い。1巻はすぐに事件が起こったので余計にそう思う。怪盗ものなので予告時刻をみんなで待つ時のワクワク感が醍醐味なのは分かるけど。
・キャラ数が多いけど、みんな非常識なほどにキャラが立ってるので覚えやすい。
・このミステリにはバトルシーンがある! 前半が事件編、後半がバトル編という構成。言うなれば解決編(物理)というべきか。
・「ミステリもバトルも楽しみたい」という欲張りな読者にオススメ。需要はある、おそらく。
・「サービスシーン」と思しき百合シーンがあるんだけど、非百合作品のこういうシーンをどういう気持ちで読んだらいいのか分からない百合ファンです。
・殺人が起きて「推理してる場合じゃない!」と正義感を目覚めさせるホームズは解釈違いですね。ホームズは正義感では動かない人間だと思ってるので。
・1巻は吸血鬼やフランケンシュタインの怪物の特性を活かした特殊設定ミステリだったが、今回は普通のミステリ。超常能力の存在を計算に入れた推理はしなくて大丈夫。


『変身』フランツ・カフカ


VR作品になるなど、現在でもなお愛される有名作。書き出しの文があまりにも有名だけど、内容はけっこうつらい。毒虫となって家の中の異物と化した主人公に対して、家族は長い現実逃避の末に拒絶の道を選ぶ。そりゃ、いくら家族でもいきなり巨大な毒虫になっちゃあ受け入れろというのは酷な話で。
・オチはわりとよくあるやつ。というよりも、この場合は最近の「よくあるやつ」の元祖が『変身』と言うべきか。


『城』フランツ・カフカ


・城に行けない話。
・測量技師の主人公が、とある城に住む男から依頼を受ける。仕事をするために城のふもとにある町まで来たはいいけれど、そこで奇人変人が寄ってたかって寄ってきてさあ大変。城への行き方を尋ねるも、たらい回しの連続。その度に変なヤツが出てきて変な展開になって変な話を延々と聞かされる。いつまで経っても城の門の前にすら辿り着けない。変なことに巻き込まれていくうちに嫁ができて一緒に暮らし始める始末。果たして主人公は城に辿りつけるのか!?
・ネタバレすると、辿りつけません。なぜなら未完作品だから。めっちゃ唐突に終わる。
・昔の作品だからかストーリー展開を追いきれずに置いていかれることが多々あった。めちゃくちゃ長いセリフが地の文いっさい無しに延々と続くこともしょっちゅう。現代の文学がいかに5W1Hを逐一提示して「いま、なんのシーンをしているか」を丁寧に説明してくれているかが分かる。
・「目的地にいつまで経っても辿りつけない」という不条理系のストーリー。『ゴドーを待ちながら』みたいな理不尽でちょっと不思議な物語を楽しみたい人にオススメ。


『サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと』依空 まつり



・詠唱をせずに魔法を発動できる魔女が主人公。この世界で無詠唱魔法はスゴいことなので民から崇められている。だけど本当は、魔女が極度の人見知りなので話さなくても済む無詠唱を極めただけ。人見知りで恥ずかしがり屋の魔女の学園潜入が始まる。
・貴族の子息が通う学園で王国の第二王子を護衛するミッションが物語の主軸となる。そのミッションの前のブリーフィングが長く感じた。主人公の同期の魔法使いが家に尋ねてきて「これからとある学園に潜入してもらう。護衛対象は第二王子。護衛されていることを悟られてはいけない。女王陛下が直々に下された任務だから失敗だから処刑なのでそのつもりで」と、長々と説明される。あとがきによるとコレでも短くなったらしいけれど、それでも読んでいてダレた。とりあえず学園に潜入するシーンを前倒しで始めておいて、回想シーンとしてブリーフィングのシーンを挟む構成のほうがテンポが良い気がする。
・このワードはあまり好きじゃないけど、いわゆる「コミュ障」で自己肯定感の低い少女が主人公。人によってはイライラするかも。逆に、そういう子だから感情移入できる読者も多そう。
・1巻の時点では薄めだけど、異性愛要素があるっぽい。


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