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【読書感想】今週読んだ2冊



『最後の証人』柚月 裕子


・元検事の弁護士が「面白くなりそう」という理由で依頼を引き受ける話。
・法律事務所の事務員にハミガキやシャンプーの買い足しまでさせる男性弁護士が主人公。その事務員が女性なのがなんだかな~と。もし事務員が男性だったら同じことをさせるだろうか、ということを考えちゃう。
・序盤である程度のオチが読める。だけど、「こんな簡単に読めるオチなはずがないな」というメタ読みも同時にできる。ラストまで気が抜けない系の作品。
・起承転結ならぬ、起転承転転転結ぐらいのエキセントリックな構成。
・終盤まで主人公の影が薄すぎる。最初でちょっと顔見せするけど、その後は別視点のキャラやライバルとなる検事の視点をメインに話が進み、「主人公って誰だっけ?」となる。特に別視点の、倒叙パートの主人公の印象が強すぎて主人公であるはずの弁護士の影が薄くなってしまっている。その代わり終盤からようやく主人公しだすけれど。
・「人間関係でいちばん強い絆は”同志”」という台詞が印象的。同じ目的を持った者の繋がりは強い。
・裁判という場を利用したちょっとしたトリックがある。言ったら未読の人が台無し系なので言えないけれど。
・終盤は倒叙パートで描写したことの答え合わせがずっと続く。ビックリする展開もあるけど、大半は以前読んだエピソードをもう一度読まされることになる。ここはもう少し端折ってよかったと思う。
・終盤まで主人公が空気。その終盤は読者が知ってる情報の答え合わせ。一言でいうと、退屈な時間が長い作品という印象を受ける。
・小説のテクニックとして「おっ」と思った点をひとつ。終盤で主人公がとある証人を召喚して、事件解決のカギとなる証言してもらうんだけど、その証人が真実を語ってくれるかの確証を主人公が持っているはずがなかった。だけどストーリーの都合上、主人公はその証人を召喚しなければならなかった。結果として真実を語ってくれて事件は解決したんだけど、そのことについて別のキャラから「確証も無しに召喚なんて、裁判で”賭け”をしたのか」とツッコミが入る。これは作者のセルフツッコミも兼ねていると思う。これに対して主人公はなんかそれっぽいカッコいい台詞を返して、その場が丸く収まっていました。誤魔化したな。
 物語の「ご都合主義」の処理のやり方の一例として参考にしようと思う。うまいことやりましたね。


『花束は毒』織守 きょうや


・結婚を控えた先輩のもとに脅迫状が届く話。
・物語が面白くなってくるまで時間が掛かるタイプ。半分以上読んでも、まだ謎の一つも解けない。推理も披露されず、探偵が事件を聞き込みしたり調査する様子が延々と続く。
・起承承承承承承承承承承転結ぐらいの構成。どんでん返しが起こるまでが長い。長編小説はたくさんの小さなエピソードの集合体と言われるけど、本作は長い長い一つのエピソードが続く感じ。
・小説として必要なことしか書いてないのに、進行がもったりしている印象が強い。なんだろう、何が原因なんだろう。証人に聞き込みをするとき、いちいちその人に会いに行くシーンを丁寧に描写しているからだろうか。証人の職場を訪ねていくシーンから始めなくても、喫茶店のテーブルに向かい合って「さて、話とはなんでしょうか」と証人が訝しむシーンからいきなり始めてもいいと思う。
・ほとんど出番のなかったキャラが真犯人なので、意外性というか「あいつだったのか!?」感に乏しい。ミステリーの真犯人が明かされる時って、それまでその人物と接してきた印象や感情がまるごと引っくり返される衝撃が醍醐味だと思っているので、少なからず肩すかし感がある。
・ラストは、良く言えば読者に委ねる。悪く言えば尻切れトンボ。
・本作では本編の前に、探偵役の女性と主人公が出会うきっかけとなるプロローグがある。主人公が中学生時代に起こったいじめ事件を、探偵役の女性がいささかやりすぎな手段で解決する、という内容。プロローグで探偵役の女性キャラがヤバい人だと示されたので本編でも何かしらやらかしてくれると思ったのに、特にエキセントリックなことはやってくれなかった。真犯人以上にヤバい振る舞いをしてくれるかと思ったんだけどな。
・プロローグで探偵の有能さを見せつけた割には、本編ではあまり有能ではなかった。関係者に本当のことを教えられるまで真相に気づかなかった。探偵って関係者の話をまとめて推理するものなのでは? 探偵なのに推理をしていない。
・面白かったけど、もう少しコンパクトにまとめられたのでは? と思う一冊。


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