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【読書メモ】今週読んだ3冊



『アンデッドガール・マーダーファルス』青崎有吾


・凸凹男女バディ探偵もの。
・主人公は凄腕の「鬼殺し」、ヒロインは生首の探偵。主人公はダウナー系の人を食ったような人格。主人公たちに常識人がいないため、物語はもっぱら主人公に近しい人物や事件の関係者の視点で綴られる。あえて主人公視点ではなく周囲の視点で描写することで、主人公たちの異常性を際立たせている。主人公を強キャラに設定する際に役立つテクニック。
・うさんくさくてヒョロ長いダウナー系の主人公が、生首の入った鳥籠を下げている。文字だけでその異様な情景が脳裏に浮かんでくる。こうした象徴的なイメージを作り出せたら、それが作品のイメージにもなって読者の印象に強く残る。これもテクニック。
・内容は怪異×ミステリ。吸血鬼、フランケンシュタインの怪物が絡んだ殺人事件に「怪物専門の探偵」の主人公コンビが挑む。特殊設定ミステリと言えるかしら。
・推理パートに決着が付いたら犯人とのバトルパートが始まるのが要素よりどりみどりって感じでいいすね。バトルシーンがあるミステリ、ミステリ界的にはアリかな、ナシかな。


『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン (著) 市田 泉 (翻訳)

・ふたりの「魔女」が舞い降りるまでのお話。
・「社会性が無い主人公が恋人を得るなりして”普通”になって人並みの幸せを得る」みたいなよくあるやつに全力で中指を立てる作品。
・主人公は18歳にして「月に行けたら」「ペガサスにのって飛んでいけたら」という空想を日常的に繰り広げる女性。社会性が無い女、最高。
・姉妹ふたりで濃い関係を築いているところに従兄の男性キャラがやってきて介入を始めて「あ、これアカンやつ?」と思ったけど、その従兄が最終的にはクズ男っぷりを露呈して敗走する女女大勝利ENDでした。
・最初は妹の妄想癖を全肯定してくれていたお姉ちゃんが、住んでいる城にやってきた従兄に世間一般の常識を諭されたことにより「普通」を一旦は植えつけられる。そうしてお姉ちゃんは妹に対して「ボーイフレンドを作ってはどうか」と言うなど、うぇ~となる展開が中盤は続く。だけど終盤で起こったとある事件がきっかけで妹とお城で二人で暮らす道を選ぶ。前述の通り従兄は敗走。
・地元ムラ社会の連中がクソ野郎ばっかりで中盤まで胸糞展開が続くけど、ちゃんと報われるので耐えてほしい。

『一等星の恋』中澤日菜子

・「恋と天体」をテーマにした異性愛恋愛短編集。とは言っても、「新月か満月の日に出産が多い」という嘘かホントか分からない話が出てくる妊婦の話や、舞台照明の星球が唯一の天体要素である劇団の話など、天体要素が薄くてこじつけ感が強い話もある。
・一口に恋愛と言ってもバリエーションは豊富。年上の女性に恋する男性、結婚して出産を控えた女性が産婦人科の主治医となった初恋の男性と再会する話、妻に先立たれた60絡みの定年退職おじさんが婚活パーティーに挑むも撃沈する話。
・バラエティ豊かな話を「天体」という一本の串で通して短編集としてまとめる発想が良い。登場人物もそれぞれ独立していて繋がりが無いので、こういう共通した要素があると短編集でも読者の印象に残りそう。
・『星球』という話ではコテコテのマジカルオネエ(主人公のお助けキャラとして便利に使われるゲイまたはトランス女性のキャラクター)が出てくる。マジカルオネエ、久しぶりに見たぞ。


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