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【もじのイチ/文フリ京都】新刊「流れ星の逢着」の紹介

 こんにちは、ななゆきです。
 あらためて、1月5日の「もじのイチ」、1月19日の「文学フリマ京都9」にて販売する新刊「流れ星の逢着」をご紹介します。

表紙

 主に2024年の後半に、WEBや各種ペーパー企画にて執筆・公開してきた掌編・短編をまとめなおした本です。

 メインテーマは「出会い」。
 誰かと誰かが出会い、紡がれるお話を載せています。

「逢着」の意味

ほう‐ちゃく【逢着】
[名](スル)出あうこと。出くわすこと。行きあたること。
「難問に—する」

デジタル大辞泉より

 「逢着」は、厳密には何か問題や厄介ごと、災難に出くわしたときに使うことが多いそうです。「遭遇」に近いニュアンスがあると感じます。

 実際、人との出会いは、ある意味で厄介ごとであると私は思います。
 アドラーによれば、すべての悩みの根源は人間関係にあるといいます。もしも完全に孤独な世界で、ひとりきりで生きていくのであれば、極論、悩みというものが起こりえないからです。

 そして、誰かとの出会いは、その人の人生を決定的に変えます
 些細なこと、例えば通勤電車を待つ列に割り込まれたとか、落とし物をすぐに誰かが拾ってくれたとか、そういう小さなことであっても、私たちの感情は揺らされ、その後の気分、場合によっては何かの選択にまで影響をおよぼします。

 「あの人と出会えてよかった」と思うこともあれば、「あんな人出会わなければよかった」と思うこともあるはずです。そうやって、良くも悪くも誰かとの出会いがあるからこそ、多様な人生が形成されていくものだと考えています。

 私は前向きなお話を書きたいので、最後には「出会えてよかった」「また会えたら嬉しい」と思えることがあれば、きっと前を向いて生きていける、と、そんな気持ちを詰め込んだのが、今回の新刊になっています。

誰も主人公ではない、しかしどこにもない物語

 一年ほど前に出した短編集「夜明けの行き先」のテーマは、「どこにもない日常を切り取る」でした。

 この世界に主人公はいない。どこにでもいるような人たちが、どこにでもあるような人生を歩く。けれども、そこにはその人なりの苦難があり、夢があり、物語がある。
 私は、そんな人たちの物語を描きたいとずっと思っています。

 だから、私のお話にはめちゃくちゃパワフルなヒーローもいなければ、すべての悪意を凝り固めた地獄のような悪役ヒールもいない。ポジティブにも、ネガティブにも注目されない。ともすれば、そこに無かったとしても世界は何の変化も無く進んでいくような、取るに足らないような存在。

 こうやって文章だけで書くと、きっと、エンタメとしてはすごく面白くない、退屈なお話になってしまうと思います。
 だからこそ、誰も主人公ではない世界から、主人公と、そのまわりの人たちと、そこに生まれる小さなドラマを、丁寧に切り取って物語にしていく。それが、私が描きたいものであり、私の作品であると、そう思いながらお話を書いています。

 ただ、今回から現代の日常だけでなく、少し不思議な世界でのお話や、非日常的な要素を妄想して加えたりしています。
 これは、ある文学賞に作品を提出したときに、その舞台設定が独創的だとコメントをいただいたことに背中を押されています。私の考える妄想、独創的だったのか……という気付きです(自意識過剰かもしれませんが)。

 これもある意味、私の「描きたいもの」に近いので、来年からはそんな不思議な(?)要素も含めることで、より魅力的な作品をお届けできれば、と考えています。

収録しているお話

 今回、収録しているのは以下のお話です。
 「四つめの大水槽」が短編、それ以外のお話が掌編となっています。

咲き残る足あと

 美術館の特別展を訪れる、ある高校生のお話。
 ペーパーウェル13にて作成したペーパーのお話を加筆修正したもの。
 展示の色と音が織り成す光景を描いた、お気に入りの作品のひとつです。

伝えたいのは

 恋人との待ち合わせに向かう途中、何でもない日に花束を買うお話。
 カクヨムに投稿したGL掌編のひとつ。

たとえ飛べなくても

 図書館で空飛ぶ司書と出会うお話。
 そこの路地入ったとこ文庫12にて販売した折本のお話がベースです。

夜に心灯る

 幼い頃から仲良しの従妹と秘密の口づけを交わすお話。
 ぺらふぇす2024に作成したペーパー作品に加筆修正したもの。
 かなり前から思い描いていた情景を文章にした、好きな作品のうちのひとつです。私の書きたいことをマシマシで詰め込んでいます。

四つめの大水槽

 無限に続く水族館の出口を探す主人公が、妹と同じ名前の少女と出会うお話。
 第二回あたらよ文学賞に応募し、「惜しかった作品」として講評をいただけた、思い入れの深い作品です。こちらの記事で個別に作品の解説をしています。

おはよう

 書き下ろしで、「生まれる前から私たちは」のりんとユキの短いお話を書きました。
 エンディングテーマのような掌編です。

 すべて合わせて92ページと、はじめましての方でも手に取っていただきやすい本に仕上がっているかと思います。

出店情報

 「流れ星の逢着」は、直近で二つのイベントにて販売を予定しています。

 ひとつめは、もじのイチ
 久しぶりに東京で参加するイベントです。普段、関東でなかなかお会いできない方、ご挨拶だけでも来ていただけると嬉しいです。

  • 日時:2025年1月5日 (日) 11:00~16:00

  • 場所:都立産業貿易センター浜松町館 2階南

  • スペース:イ04(七雪珈琲)

  • 詳細:https://mojino1.com/

 ふたつめは、文学フリマ京都9
 はじめてオリジナル本を作った文学フリマ8から、あっという間に一年。私にとっては始まりの場所に、ふたたび出店します。
 関西の方はこちらで遊びに来てもらえると嬉しいです。

 お品書きは↑のもじのイチと同じものを予定しています。

 また、通販はいつも通り架空ストア様にお願いする予定です。

 どちらのイベントも都合がつかない、遠方で来場が難しい方はぜひご利用ください。

 お品書きの通り、これまでの本も持って行きます。
 とくに「夜明けの行き先」は、おかげさまで残部数が少なくなってきましたので、二刷目を検討しております。
(イベント販売のため、一時的に架空ストア様の在庫を引き上げております)

 一人でも多くの方に作品を見ていただけると嬉しいです。
 来年からも、ななゆきの作品と本をよろしくお願いいたします。

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