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苦い経験

 949文字

  年配の御夫婦がソフトクリーム🍦を食べながら

「此処で食べて行ってもいいですか?」

「どうぞ、ゆっくり休んで下さい」

  あれは3年程前、以前の勤務先の売店にソフトを注文してくれた、優しく穏やかな雰囲気を漂わせたご夫婦のお話し。
 何かを怪訝に思っている様な印象を受けて、暫くお話をする事にした。
 工場では仕込みの最中、15分位ならとお天気の事等を話して、和やかな雰囲気になった。

 「今、コゴミを採って来たんですよ、こ〜んなに」

  両手を広げて嬉しそうに笑っている奥さん。
 その隣で優しく微笑む御主人、色で例えるなら暖かい黄色のオーラに包まれている様なご夫婦。
 コゴミの食べ方や何処でコゴミを採って来たのや、御主人が転んでしまったと笑っている。

「もう疲れて足が上がらなくなりましたけど、山菜を採るのは楽しくて辞められないですね」

「・・・・・」

「コゴミって苦いですよね、どうすると苦みが取れるのかしら ? いくら水出ししても苦みが取れないんですよねぇ」

 突然、今迄不思議に思っていたのだろう事を訪ねて来た。
 そして、とても驚いた、今迄何年も苦いと思いながら春の喜びと山の散策もかねてのコゴミ採りは、いつも苦い苦いと味わっていた事になる。

「そのコゴミは色が濃くて物凄く太いですか?」

「そうそう、とても美味しそうでい太いです」

「コゴミにも雄と雌があるんですよ、雄は苦くてその横に焦げ茶色の枯れた立派なコゴミが倒れずにあったのではないですか ❓ 」

「ありました、全部そこから採って来ました、え~っ こ~んなに10キロ位、こ~んなにですよ、二時間位歩いて・・・えーっ・・・」

 両手を広げて採って来た量と今迄の記憶と、先程採って来たコゴミを捨てなければならないのかしら ? と言う落胆とが一気に押し寄せて来た眼差し、ご主人も目を丸くしながら

「もう一度採ってくるしかないな ハハハハ・・」

「明日にしましょ、今日は疲れたわ」

 笑い話しと驚いた話しと15分を大幅に超過してしまった。

 写メは雄のコゴミ、元気で色艶もまんべんなく、どう見ても美味しそうであるが、苦くて食べれない事はないが不味い、甘味もな~んもない、目印は元気な去年のコゴミの殻が立ち尽くしている、少し遅いが春の山菜採りの参考になるかしら~ 。


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