暗黒労働おとぎ話 『3びきの こぶたの食品工場』
むかしむかし あるところに3匹のこぶたがおりました。
3匹のこぶたは、それぞれ食品工場を作ることにしました。
長男のこぶたは漬物工場『こぶたピクルス株式会社』
次男のこぶたはお菓子工場『こぶたスイーツ株式会社』
末っ子のこぶたは、こじんまりとしたパン屋さんを設立しました。
長男と、次男のこぶたの食品工場は、大手スーパーと取引していたので、けっこうな大きさに成長していきました。
長男のこぶたは”企業のイメージを良くしたり”、”顧客の信頼度をアップさせる”ためにHACCP(ハサップ)認証という衛生管理システムを導入しました。
これで工場は安泰です。
そんなある日、おおかみが工場にアルバイトをしにきました。
すると、漬物樽の底に黒カビがビッシリ生えていて、
さらにそのうえに食品のカスが溜まって固くなり、
さらにそのうえに黒カビが生えて・・・と、
黒カビが山盛りになっているのを見てしまいました。
次の日も、次の日も、その次の日も・・・
ずっとずっと長いあいだ、漬物樽の底の山盛りの黒カビはなくなりませんでした。
おおかみは驚いて、SNSやTwitterに、
この『こぶたピクルス』の汚い漬物樽のことや
HACCP(ハサップ)認証は意味がない
などと、隠し撮りした写真をつけて
投稿してしまいました。
おおかみから発せられた風評は、たちまち『こぶたピクルス』を吹き飛ばすほど強くなりました。
一番上のこぶたは大あわてで、ネット炎上対策会社にかけこみましたが、もう、あとのまつりでした。
------------------------------------------------------
漬物工場で気持ち悪いものを見てしまったおおかみは、すっかり辛いものがトラウマになってしまいました。
そこで、次男のこぶたの『こぶたスイーツ』で働きはじめました。
次男のこぶたは、”製品品質の向上”や”品質管理をしっかりやっているアピール"と"取引先の信頼度をアップ”させるためにISO 9001という品質マネジメントシステムを取得していました。
これで工場は安泰です。
おおかみが働きはじめて間もなくですが、
工場のあちこちで目をうたがうような光景を見てしまいました。
それは、プリンが流れるラインのうえに鉄の橋がかかっていて、その上に外国からきたヒツジたちが体を二つ折りにして絶対に腰がやられる拷問のような非人道的な姿勢で、長時間、プリンの液体を流し込む作業をさせられている地獄のような光景でした。
プリンのうえでヒツジが作業しているので、ホコリがプリンに入らないのかも気になりました。
また別の日には、目標製造数達成のために、6時間トイレに行くことを禁止されたヤギたちが、おもらしをしたままケーキを作らされている姿を見かけました。
そして最も許しがたかったのは、同じ作業の連続で手が腱鞘炎になりそうなクマが涙ぐんだ目で作業を変えてほしいとお願いしましたが、リーダーの社員はとても性格のひねくれたやつで、大勢の従業員の前でクマを罵倒し、腱鞘炎が更に悪化するポジションにつかせた挙げ句、「このラインが終わるまで、そうやってろ!」と吐き捨てていった出来事でした。
こんな地獄絵図の数々を、見て見ぬフリできぬおおかみは、
まず地域の労働基準監督署に電話をしました。
『こぶたスイーツ』に風が吹きましたが、
弱くて何も起きません。
おおかみはもっと強い風を吹かせるために、
『こぶたスイーツ』の親会社にメールをしました。
それでも『こぶたスイーツ』はビクともしませんでした。
どうしても『こぶたスイーツ』の
地獄を終わりにしたいおおかみは
『こぶたスイーツ』の大のお得意様が設置している第三者機関「お取引先専用ヘルプライン」に「社会から信頼を失うような行為」をしている『こぶたスイーツ』の現状を
・労働安全衛生法⚪︎条
・労働基準法⚪︎条
に違反している可能性があることを明確に指摘しながら、
見たものすべてを洗いざらい、内部告発しました。
いっきに風当たりが強くなった『こぶたスイーツ』は、おおあわて!
緊急会議を開いて、今までの非人道的な行為
・外国人労働者のひどい働かせ方
・トイレにいってはいけないルールの完全撤廃
・日常的に行われていたパワハラ
を大急ぎで改めましたが、結局、取引先から取引を縮小されて、スイーツ工場は半分の大きさになってしまいました。
------------------------------------------------------
2匹のこぶたの食品工場で悪夢のような光景を見つづけたおおかみは、すっかり大きな会社と、HACCPやISOといった認証制度が信じられなくなってしまいました。
疲れ果てたおおかみは、末っ子のこぶたの、こじんまりとしたパン屋さんで働くことにしました。
いつもニコニコ笑顔の末っ子のこぶたのお店は、HACCPやISOの認定をとっていませんでした。
でも、皆がニコニコしながら働いていました。
誰かがケガをすると、皆が心配をしてくれる優しい職場でした。
工場はすみずみまでキレイに掃除がされていました。
心のきれいな こぶた店長のパンは、とてもとてもおいしかったので、いつしか行列のできるパン屋になりました。
ようやくステキな職場にめぐりあえたおおかみは、
もうネット炎上も通報もすることはありませんでした。
すっかり末っ子のこぶたのパン屋が大好きになったおおかみは、定年した後も、友だちといっしょに、こぶたのパン屋のパンをたくさん買いにきたのでした。
めでたし、めでたし。
HACCP(ハサップ) |厚生労働省
ISOの基礎知識 | ISO認証 | 日本品質保証機構(JQA)
関連記事
※今回の話も、半分はフィクションです。